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あてもなく、気ままに諸国を旅する少女・イレイナ。行く先々でさまざまな文化や慣習に触れ、幾多の人と出会いを果たしますが、旅人である彼女は決して一か所に留まることはなく、再び旅の途へと戻っていきます。これはまだ若き魔女の、出会いと別れの物語――。
好評放送中の「魔女の旅々(魔女旅)」は、原作・白石定規さん、イラスト・あずーるさんによる同名の連作短編式ファンタジーノベルを原作としたTVアニメです。WebNewtypeではそんな本作の魅力を掘り下げるべく、スタッフやキャスト陣へのリレーインタビューをお届けしています。連載第12回は、サヤ役の黒沢ともよさんとシーラ役の日笠陽子さんにお話をうかがいました。
――アニメではなく、原作ノベルの特装版に付属したドラマCDのときのお話になるかと思いますが、演じるキャラクターに触れたときの第一印象はいかがでしたか?
黒沢 原作がある作品ですので、キャラクターごとの色がはっきりしているなと思いました。みんな、自分のパーソナルに近いポジションでお芝居をしながら、うまくバランスが取れていたように感じました。いい意味でみんながそれぞれ違う色を出していて、それがきれいなグラデーションになっていたなと。
日笠 読者のみなさんは原作を読んで、それを踏まえてのドラマCDということで、番外編的にコミカルなお話がすっと受け入れられると思いますが、私たちが演じるのはドラマCDの方が先でしたから、アニメ化のお話を初めて聞いたときは「ギャグアニメになるのかな?」と思ってしまいました(笑)。
黒沢 (笑)。
日笠 でも、アニメは原作準拠ということでコミカル推しだったドラマCDとは毛色が異なりますので、それに合わせてシーラのお芝居も大きく変えました。ドラマCDも聞いていただいている方には、そんなギャップも楽しんでもらえたらと思います。ドラマCDのシーラは、キセルを吸うし、ツッコミも多いしということでアニメよりも気だるげに演じました。
黒沢 サヤと絡むことが多いから、上の立場の人としてのセリフも多かったですしね。
日笠 そうそう。それに、ともよのサヤはテンションが高めだし、ドラマCDは脚本も全体的に短いワードをぽんぽんと小気味よく投げ合うような感じでしたので、シーラのお芝居はサヤの逆をいこうと。そういう意味では、サヤがシーラのお芝居を作ったという感覚ですね。
黒沢 ドラマCDのサヤは最初からイレイナと打ち解けていたので、アニメではイレイナとの出会いから演じられて新鮮で楽しかったです。ただ、サヤはいつもドラマCDのようなテンションのままで生きている子なので、私はアニメもあまり変わりなく演じられました。でも初登場の第2話のときだけは、ドラマCDよりも少しピュアだったかな?
――原作の白石定規さんや原作イラストのあずーるさんは、アフレコ現場で黒沢さんのお芝居を聞いて「サヤはこういう声だったんだ」と、とても腑に落ちたとおっしゃっておられました。
黒沢 先生方にそう言っていただけると、とても安心します。「ちょっと(お芝居を)遊びすぎたかな?」と思うこともありましたので……(笑)。
日笠 サヤは、本当にともよそのままだよね。ともよのエネルギッシュでパワフルなところがそのまま出ているので、すごく生き生きしたキャラクターになっていると思います。私がともよと共演するときは、姉妹だったり師弟だったりとキャラクター同士が近い関係性にあることが多いのですが、ともよはいつも私の想像を超えたお芝居をしてくるので、私はそれを必死にレシーブしたり、まとめたりするのみです。
黒沢 日笠さんがシーラを演じてくださって、本当によかったです。これは「魔女旅」のドラマCD収録のときのお話なのですが、入りの時間の少し前に日笠さんから「スタジオが開いたからもう入れるよ、近くにいたら来てもいいよ」と連絡がきたんですよ。
それで、「もしかしたら日笠さんは後の予定が詰まっているのかな? よし、急ごう!」と思って走って行ったら「ここ、駐車場代高いんだよね~」って言われて(笑)。
日笠 いや、本当に高かったんだよあそこは……(笑)。
黒沢 でも、そういう飾らないところが、とてもほっとした気持ちにさせてくださるんです。
――それはいいエピソード…に分類されるのでしょうか(笑)。黒沢さんから見たシーラも、日笠さんとイメージがかぶる部分はありますか?
黒沢 シーラさんは凛とした雰囲気の女性ですが、性格は結構お茶目だったりするじゃないですか。それって、私の日笠さんへの第一印象とすごく似ているんです。日笠さんのことは、私が声優のお仕事を本格的に始める前から写真などでお見かけしていましたが、その頃は大人っぽいテイストが多かったですよね?
日笠 言われてみれば、そうだったかもしれない。
黒沢 なので、初めてお会いするときは緊張していたのですが、お話させていただいたらすごくお茶目だし、ボケるし、ツッコミもするし(笑)。「いつか私もこうなれたらいいな」と思いながら、いつもその背中を見ています。
日笠 私はそういうタイプじゃないよ! 見習うなら、花澤(香菜さん)の方がいいよ(笑)。
黒沢 (笑)。そういえば日笠さんと同じで、香菜ちゃんもお笑いが好きでしたよね? フランとシーラでかけあい漫才をやってくれたら楽しそうですね!
日笠 花澤と共演するのはいつも本当に楽しいけれど、その一方で、話すときはちょっと緊張しちゃうんだよね。清楚なルックスなのに、お笑いが大好きであなどれない。これは早見(沙織さん)にも言えるけど(笑)。
――そのお話、花澤さんにインタビューさせていただく際にお伝えします(笑)。サヤには炭の魔女、シーラには夜闇の魔女という二つ名がありますが、もしお二人がお互いに「~の魔女」と二つ名を付けるならどんな言葉になりますか?
日笠 ともよは声優を始める前からずっと子役として活躍していたこともあって、確固たる自分を持っていますね。お芝居が既存の型にはまらず、唯一のものなんです。それを見るたび、ともよは声優界にはない風を吹き込んでくれるなと思っています。そこから考えると……始祖? 始祖の魔女?
黒沢 始祖!?(笑)思ってもみないワードが出てきましたが、おほめいただいて恐縮です。なんだか、私の方は思ったことをそのまま言いづらくなっちゃうな。
日笠 いや、そのまま言いなさい!(笑)
黒沢 それじゃあ……日笠さんは、なんだか鯖っぽいなって。
日笠 さばー!? タンパク質が豊富ってこと!?
黒沢 日笠さん、豊富なんですか? ……それはさておき(笑)、鯖は多くの国で食べられていて、さまざまな料理に合いますよね。かつ、自分自身が料理の主役にもなれるお魚だと思うんです。それが、どんなテイストの作品に出演しても、その作品の世界にすっとなじめる日笠さんと似ているなって。
日笠 そういう風に感じてもらえるのは、もしかしたら私が現場にいるのが好きで、みんなと作品を作っていくのが大好きだからかも。アフレコそのものができない時期は本当にさみしくて。
アフレコは今もまだ、一度にブースに入れるのは2~3人までというのが普通ですが、それでもできるようになったら、今度は「またみんなで一緒にやりたいな」と思っちゃう。これはもう、業のようなものだと思っています。
黒沢 特に「魔女旅」は背景美術もとてもきれいで、美術ボードを見ているだけでも楽しい気持ちになる作品ですしね。それだけで、なんだかファンタジーの世界を旅しているような気分になれます。
――もしイレイナのように旅をするなら、行きたいところはありますか?
日笠 どこか暖かいところがいいですね。プライベートで旅行するときは、いつも暖かいところばかりなんです。その方が、荷物が少なくて済むからなんですけど(笑)。以前、プライベートで行ったオーストラリアはすごくよかったですね。現地の人は優しいし、オージービーフもおいしいし。それと、その時はまだ禁止されていなかったのでエアーズロックにも登れました!
黒沢 私は電車の中で読書をするのが好きで、乗り換えずにずっと電車に乗って読書を堪能したあとそのまま気ままに旅行することがあります。旅先では、私が"黒沢ともよという役者"であることを知らない方とお話するのが好きで、ぶらりと訪れた神社の宮司さんとお話させてもらったこともありました。
日笠 そういうぶらり旅もいいよね! 私は事前に下調べをして、計画を立てるところから好きだからなぁ。
黒沢 これはこれで、トラブルだらけですよ(笑)。
――イレイナにとってのニケの冒険譚のように、幼い頃に深く印象に残った本などはありましたか?
黒沢 大きなうさぎと小さなうさぎが出てくる「どんなにきみがすきだかあててごらん」という絵本が好きでした。幼い頃に子役として1年間出演した舞台で、お兄ちゃん役の男の子が楽屋で私によくその絵本を読んでくれたんです。当時はその子のことが好きだったので、その情景ともども思い出に残っています。
日笠 かわいいお話だね。これは10代から20代くらいの頃のお話なのですが、私は部屋にずっと飾っていた短編集があったんです。何度も読んで、読むたびに涙を流して、はげまされて……。でも、今はなぜかタイトルすら思い出せないんです。きっと、今の自分には必要ないからなのかもしれませんね。
黒沢 誰かの支えになれるって、すごいことですよね。物語の持つ大きな力だと思います。
日笠 「魔女旅」も、誰かにとってそういう作品になれたらいいなと思います。
黒沢 背景美術や楽曲が織り成す世界は本当にきれいですが、そこで紡がれるお話はきれいなものばかりではなく、それが印象に残る作品ですよね。私は特に第8話が印象に残っているのですが、人形店の店主は、つかまった後どうなったんでしょうね? アフレコしたとき、次のお話で(サヤとして)詳しく話を聞かせてもらえるのかと思っていたのですが「第9話は別のお話です」と言われちゃいまして。
日笠 第8話はきちんとオチがついてたでしょ! なんで続くと思った!(笑)
――総括的なお話からキレのあるツッコミまで、きれいに流れを作っていただいたところでちょうどお時間となりました。本日はありがとうございました!
次回の「魔女の旅々」リレーインタビューは、イレイナ役の本渡楓さんとフラン役の花澤香菜さんのお二人にお話をうかがいます!