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TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」を盛り上げるリレー連載、第4回はシュン役の堀江瞬さんが登場! 真面目で正義感が強いけれど、まだまだ成長途中のシュンをどのように演じられているのか。そして、人間サイドではどのようなドラマが展開されるのか。今後の見どころと併せて、たっぷり伺いました。
――いよいよ物語がスタートしました。第2話までご覧になられての率直な感想はいかがですか。
堀江 最初にスタッフの方から「シュンは人間サイドの主人公です」というご説明をいただいていたんですが、現段階だとまだ主人公然とした感じはなく、どちらかというと浮ついていて、地に足がついていない印象のほうが強かったです。大好きな「兄様」である勇者ユリウスへの憧れが強くて、背中を追っているようでもあり、ただのミーハーな感じもあり。「大丈夫かなぁ」という不安と「これからこれから」という期待が半々でした。
――ユリウスの話になると、少し舞い上がってしまうところがかわいいですよね。
堀江 そうですね(笑)。ユリウス兄様について語るシーンは、音響監督さんからも「もうちょっと声を高く、テンション高くやってください」と言われました。
――そうだったんですね。全体としてはどのような役作りで臨まれたんですか。
堀江 オーディションのときから「勇者然とした感じにはしないでください」と言われていたので、シュンの頼りなさ、弱さは意識するようにしています。ただ、弱さを表現するのが意外と難しくて……。特に戦闘シーンが増えてくると、どうしても強さが出てしまうんです。例えば、剣を振るうシーン。息づかいを入れるときの加減が難しくて、「今はまだ弱さを残してください」とディレクションをいただくことがありました。
――シュンの成長は、グラデーションのように少しずつ表現していくということなのでしょうか。
堀江 そうですね。今後、シュンにはいろいろな試練が待ち構えているので、そのたびに強くなっていくようにしましょうとのことでした。長い目で見ていただけたら嬉しいです。
――第1、2話の人間サイドをご覧になって、何か気になったことはありましたか。
堀江 やっぱりユーゴーの存在ですね。向上心が強すぎるがゆえに自分が一番だと思い込んでいる人間なので、無意識に他人を見下すようなところもあって、軋轢やすれ違いを生みやすいんだろうなと少し心配になりました。先生(フィリメス)のことを「岡ちゃん」と呼んだり、クラスメイトにも気兼ねなく話しかけたりと、クラスに馴染んでいる人間ではあるんですが……ちょっと危ういなと感じます。
――第2話ではユーゴーが「人類最強の座はいつか俺がいただく」と言って、シュンがムッとするシーンもありました。
堀江 そうですね。人類最強はユリウス兄様だと思っているので(笑)。今後、シュンとユーゴーの関係は一筋縄ではいかなくなるんですが、僕個人としてはユーゴーは「憎めないヤツ」なので、変に対立しないでほしいなと願っています。
――そのユーゴーを演じるのは、同じ事務所の石川界人さんですね。
堀江 少人数でアフレコをしているのですが、石川さんとご一緒することが多くてすごく嬉しいです。実は、同じタイミングで別作品でもメインキャストとして絡んでいるので、とてもやりやすいといいますか、ご一緒する機会が多いからこそ生まれる生(なま)の掛け合いができているなと感じます。シュンとユーゴーにとって大きな節目になるとある話数では、アフレコが終わったあとに石川さんから「楽しかった」と声を掛けていただいて、「あ、嬉しい」って思いました(笑)。
――ほかに現段階で気になっているキャラクターはいますか。
堀江 ユーリとフェイですね。ユーリは見た目はかわいらしいんですが、キャラクター紹介にもあるようにまわりが見えなくなりやすいタイプなんです。不穏な言葉を残す場面も出てくるので、彼女がストーリーにどう絡んでくるのかが楽しみでもあり、不安でもあります。フェイは……シュンとしてどう向き合えばいいのか、実は一番悩んだキャラクターです。
――というと?
堀江 フェイは、シュンといつも一緒にいる相棒のようなキャラクターです。ただ、二人の仲のよさをどう噛み砕けばいいのかわからなくなってしまって……。もともとフェイはいじめっ子で、本人もバチが当たったから魔物に転生したと話しています。そのときに、ふと「シュンと仲睦まじいけど、いじめっ子なんだよな」と思ってしまったんです。シュンはきっと漆原美麗(フェイの前世)がいじめをしていたことを知っている。それでも仲間として受け入れているのはどうしてなんだろう、と。その気持ちが心にずっと残ってしまって……。
――堀江さんご自身としては、なかなか受け入れられなかったと。
堀江 そうですね。きっといじめは若葉さんという子に対してだけで、山田俊輔(シュンの前世)との関係は別にこじれていなかったと思うんです。でも、いじめていた子を相棒のように肩に乗せられるシュンって一体なんなのだろうと。それを受け入れるのに少し時間が掛かりました。キタエリ(喜多村英梨)さんのお芝居も素晴らしくて、より高飛車な印象が強いから、余計に(笑)。
――それは何がきっかけで受け入れられるようになったんですか。
堀江 この先、シュンがどういう人間かが深掘りされていき、クラスでの立ち位置もほのかにわかるようなシーンが出てくるんです。そういう場面を演じながら徐々に受け入れていきました。シュンとフェイの関係が気になる方は、今後の話数を楽しみにしていただきたいです。
――ところで、蜘蛛子パートについてはいかがでしたか。
堀江 人間パートと蜘蛛子パートでは、映像の雰囲気とか世界観が完全に差別化されているので、一度で二度おいしいなと思いました。同じ作品内で二つの作品を見ているような感覚です。最初に台本を読んだときは蜘蛛子が3DCGになるとか、人間パートがこんなにぬるぬる動くことがわからなかったので、すごく新鮮でした。それぞれ全然違う場所で頑張っているのが画面からも伝わってくるのが面白いです。あとは……やっぱり事務所の先輩である悠木(碧)さんのお芝居にただただ圧倒されるばかりでした。
――第1話からものすごいセリフ量でしたよね。
堀江 いやもう、ホントに(笑)。第1話の台本をいただいたときは、どこまでいっても蜘蛛子のセリフで悠木さんの心労を思ってちょっと心苦しくなりました。人間サイドは、特に前半はそこまでセリフ量も多くないので、その分、蜘蛛子が喋っていると考えるとすさまじい分量になるなと。悠木さんとはアフレコが別なので、アフレコ現場では人間サイドの声優さんと「今日も悠木さん、すごそうですね」なんて会話をしています(笑)。でも、本当に素晴らしいお芝居だと思いました。ひたすら喋り続けているのに聞いていて全然苦にならないどころか、こちらの気持ちをどんどん盛り上げくれるようなお芝居で、ずっと聞いていたくなるくらい楽しい気持ちになります。
――収録が完全に別というのは、作品世界と通じる部分がありますね。
堀江 まさにその通りだと思います。完成した映像をいただくまで、いっさい悠木さんのお芝居がわからなかったので、余計に違う場所に転生しちゃったんだなと感じました。アフレコでも石川さんやキタエリさんと「蜘蛛子、元気かなぁ」ってよく話しています。
――ありがとうございます。では最後に、第3話以降の見どころを教えていただけますか。
堀江 人間サイドはここから関係性が劇的に変わっていき、特にシュンとユーゴーの関係がどんどん掘り下げられていきます。その中で、シュンが王子としても人間としても少しずつ強くなっていくので、その成長を見逃さないでいただきたいです。人間サイドは話数を重ねるごとにシリアスになっていきますが、一方で蜘蛛子は大変な状況であってもたくさん笑いを届けてくれます。その温度差に風邪を引かないよう、気をつけてください(笑)。
【取材・文:岩倉大輔】