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地龍アラバに遭遇し、絶望まっしぐらの「私」(蜘蛛子)。地竜を倒し、英雄扱いされるシュン。二人の物語が大きく動き出した「蜘蛛ですが、なにか?」。本作を盛り上げるリレー連載第5回は、カティア役の東山奈央さんが登場。不穏な空気が漂ってきた人間サイドで、カティアはどのような活躍を見せてくれるのでしょうか。
――作品の第一印象はいかがでしたか。
東山 蜘蛛子の目線で描かれる物語とシュンたちを描いた物語という、まったく交わらない二つの視点が共存しているので、なんだか二つの作品を平行して読んでいるような感覚でした。どちらもわかりやすいストーリーなのに、視点が二つあると急にミステリアスさが増して、「これは一体何?」「どんな理由があるんだろう?」と引き込まれていくんです。この謎がいつ解けるのかと、ドキドキしちゃいますよね
――確かに、二つのお話は雰囲気も全然違いますよね。
東山 そうなんです。原作の方でも、蜘蛛子のシーンとシュンたちのシーンとでは、文章の雰囲気やセリフ回しまで違っているんですよね。蜘蛛子のほうはゲーマーらしい口調や語彙でかなり現代っぽい。でもシュンたちのほうは正統派の小説っぽい。二つの物語がはっきり分かれているように見せる演出なのかな、なんて思いながら楽しませていただきました。
――東山さん演じるカティアについては、どんな印象をお持ちになりましたか。
東山 カティアは公爵家の令嬢ですが、前世では大島叶多という男子高校生でした。寸暇を惜しんでゲームに没頭するような男の子なのに、転生したら美少女になってしまった。男の子としては一体どんな気持ちなんだろうと気になりました。ある意味、これはこれで興奮を禁じ得ないシチュエーションなんじゃないかなぁと(笑)。でも、男の子である自分を気に入っていたらとしたら、一生女の子として生きるのはやっぱりショックなんだろうなと思います。しかも、二重に怖かったと思うんです。
――というと?
東山 スキルやステータスなんてものがある、今までと価値観や環境が全く違う世界に転生するだけでも相当混乱してしまうと思います。カティアはその上、今までと違った性別になってしまった。この状況はとても心細かったと思います。
ただ、令嬢として育てられてきて、半ば強制的ではありますが女の子としての人生も肌に馴染んできたとは思うんです。それもあって普段のカティアとシュンたちと話すときのカティアでは、演じ分けをナチュラルにしようと思いました。
――あまり気持ちの変化をつけすぎないようにされているんですね。
東山 はい。オーディションのときは、大島叶多としてどこまで低い声が出るか試させてほしいと言われ、「もっと低く、もっと低く」と何度かリクエストをいただきましたけど(笑)。実際のアフレコは、ちょっとは低くしつつも、声色が変わるというよりは上品さや口調の壁を取り払った叶多君が見えればいいなと思いながら演じています。
――カティアだから高く、叶多だから低くというわけではなく。
東山 そうです。カティア自身もわざわざ音程を変えてやろうと思ってしゃべっているわけではないでしょうし、男の子としてしゃべっているときにはナチュラルに気楽な雰囲気が出ればいいな、と。
――これまでのカティアとシュンの関係性についてはどうご覧になりましたか。
東山 異世界生活で初めて再会できたクラスメイトが、カティアにとってはシュンであり、シュンにとってはカティアなので、お互いに安堵感は大きかったと思います。知り合いがいたことで自分が何者であるかをちゃんと認識できたでしょうし、しかもそれが前世の親友。唯一無二の友人とまた一緒に学校生活を送れるのは絶対に嬉しかったと思います。
――いいパートナー感がありますよね。
東山 そうなんです。私は、カティアに “女房感”があるなと思いました。シュンはとても熱意のある少年なんですが、どこか抜けているところやお人好しすぎるところがあるので、カティアが大事なところで手助けしたり、アドバイスしたりと、何気なく支えているのがすごく“女房”っぽくて(笑)。二人のやりとりをいつも微笑ましく見ています。
――シュンはカティアのことをちょっと意識していそうですよね。
東山 今のところシュンがカティアをどう思っているか、どう見ているかは描かれていませんが、きっと前世では肩を組んで話すようなこともあったと思うんです。今は女の子だからそういうこともしづらくなったのかなとか、美人だしスタイルもいいし意識しちゃうんじゃないかなとか、私も裏側を想像することはあります(笑)。
――そして第3話では、カティアたちが初めて本格的な戦闘を繰り広げました。
東山 地竜が怖かったです! 先生が灰になって消滅したところは、死が間近にある世界なんだなって改めて気づかされ、特に驚きました。個人的に面白かったのが、小物感たっぷりだったユーゴーです。「こんな奴、造作もねぇ!」なんて我先に向かっていった瞬間、「あ、この子は死ぬな……」と(笑)。実際、簡単に返り討ちにされて、最初は死んだのかと思ったんですが、そのあと無事に立ち上がってくれて。ご息災で何よりでした。ユーゴーは(石川)界人君のお芝居もぴったりはまっていて、あの横柄な感じもすごく楽しそうに演じているなと思いながら見ています。
――以前のインタビューでおっしゃっていましたが、石川さんは“嫌な奴”のお芝居をかなり意識されているそうですね。
東山 確かに、“悪役感”を意図してお芝居に落とし込もうとしているのを感じます。界人くんはお芝居にグラデーションをつけたり、一瞬でバランスを取って演じたりするのがお上手な役者さんだと思うんですが、ユーゴーに関してはわかりやすく“嫌な奴”っぽさを出しているのが新鮮でした。一周回って笑っちゃうくらい嫌な感じを出されていて、今後、どんなふうに嫌なことを言ってくれるのかワクワクしています。
――人間サイドで特に気になっているキャラクターは誰ですか。
東山 ユーリが気になります。あんなにかわいくて人当たりもよさそうなのに、言葉に温度が感じられないんです。どんな気持ちで演じているのか、田中あいみちゃんに聞いてみたいです。
――確かに、親しみやすいのにどこか冷たい感じがありますよね。
東山 ユーリには悪気がないと思うんですが、目を輝かせて自分の信じるものを語る姿が……少し危ういと感じるんです。その考えを否定しないし、「あなたのすべて」だったら何も言わないけれど、それが「あなたのすべて」じゃなくて、「世界のすべて」になっていませんかと、そう問いたくなる雰囲気があるんです。その危うさ、怖さがセリフの節々から感じられて、“かわいい”と“怖い”を共存させられるお芝居がすてきですよね。
――ところで、蜘蛛子パートについてはいかがでしたか。
東山 思った以上に魔物たちが生々しい動きをしていたので、夜中に見ていたこともあって「ひーっ!」って声を上げちゃいました! 特に第2話の後半に出てきたエルローフェレクト。あの黒光りした感じと脚のわしゃわしゃした感じが怖かったです。でも、序盤から強い敵が出てきて、蜘蛛子がギリギリのところで敵を倒していく。その姿を見るのは痛快です。単純な強さではなく作戦勝ちしているところが特にいいなと思いました。
――悠木さんの一人芝居についてはいかがでしたか。
東山 素晴らしかったです! 同業者として大変そうだなと感じるところもありますが、お芝居に引き込まれ、その大変さを忘れてクスッと笑ってしまいました。あおちゃん自身もなかなかのゲーマーだと聞き及んでいるので、蜘蛛子とリンクしている部分もあってより輝いているんじゃないかなと思いながら見ています。たぶん、ゲーム用語とかSNSで流行っているような言い回しとか、本当だったら自分の口に馴染ませるために時間を必要とすることもあると思うんですけど、
あおちゃんのお芝居は蜘蛛子の節回しにフィットしていて、ご本人の努力もさることながらさすがだなと。
――では最後に、第4話以降の注目ポイントを教えていただけますか。
東山 最初にお話しさせていただいたとおり、とても謎が多い作品です。放送が2クールある中で次第に明かされていく部分と、より謎が深まる部分がどんどん出てくるので、気になったところや違和感を大事にとっておいて、最後まで見ていただけたら嬉しいです。そして、とにかく蜘蛛子がムードメーカーとして作品を盛り上げてくれるので、彼女の戦いや一人芝居に注目してください。よろしくお願いします!
【取材・文:岩倉大輔】