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第9話で衝撃的な展開を迎えたTVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」。放送を盛り上げるリレー連載、第12回は再びシュン役の堀江瞬さんにお話を伺いました。ユーゴーとの戦闘とユリウスの悲劇を経たシュンは、何を思い、どう変わっていくのか。これまでの軌跡と今後の注目ポイントを語っていただきました。
――第9話でついにシュンが勇者の称号を得ることになりました。まずはここまでの歩みを振り返っていただければと思いますが、前半戦の感想はいかがですか。
堀江 やはり印象に残っているのは、第3話をきっかけにユーゴーとの対立が明確になっていったところです。地竜との戦いは、最初はユーゴーと共闘するイメージで演じていたので、ユーゴーが暴走し、その後、敵意を向けられるようになったのはとても歯がゆかったです。
この二人は、もう少し何かが違っていれば歯車が噛み合う関係性だったと思うんです。それこそ第8話で前世を回想する場面がありましたよね? そのシーンを見たときに、「友達だったのに! 一緒にサッカーした仲なのに!」と悔しくなりました。
――第3話以降、英雄扱いされるシュンにユーゴーは嫉妬心を募らせていきました。
堀江 演じているときは完全にシュンの目線なので、あまりユーゴーの気持ちに影響されないようにしているんですが、客観的に見るとわりとユーゴーに共感できるところがあって……。あの嫉妬心って、実は僕もよくわかるんです。特に、この仕事をしていると。
――そうなんですか。
堀江 例えば、オーディションに落ちたときって、僕は本当に悔しい気持ちになるんです。それこそ、嫉妬が高じてしまうこともあるので(笑)、ユーゴーがシュンに対して苛立つ気持ちもよくわかるんです。決してシュンは自分のことをひけらかすわけではないんですが、「持たざる人間」からすると、あの余裕そのものが見ていて苦しい。相手にされていないのも、なおさらつらいんです。
もちろん悪いのはユーゴーだと思うんです。でも、シュンももう少しうまい立ち振る舞いができたんじゃないかな、と。綺麗事かもしれませんが、シュンがユーゴーの気持ちを汲み取っていれば、ユーゴーももっと歩み寄ってくれたんじゃないか。そんなことを考えてしまいます。結果、最悪のルートを進んで行くことになりましたから。
――まさに第7話ではユーゴーがシュンの命を狙う展開となりました。
堀江 シュンがユーゴーに対して、「……お前は、異常だ」と言い切るシーンは、それを突きつけなくてはいけないシュンもつらかったと思います。結局、わかり合えないことがここで明確にわかってしまうわけです。戦闘でぶつかり合ったこと以上に、このとき交わした言葉が二人の完全な決別を象徴している気がしました。お前はもうそっちサイドなんだな、わかったとシュンもどこか納得しているようで。お互いにもう戻れないところまできたと突きつけられた感覚です。
――このときのアフレコはいかがでしたか。
堀江 アフレコ自体は楽しかったです。僕も石川(界人)さんも叫び続けて、まさに魂と魂のぶつかり合いのようでした。物語としては本当に苦しかったです。
――その後、ユーゴーはフィリメスにスキルを剥奪されます。
堀江 スキルを得るには努力が必要ですし、並大抵の努力ではあそこまで強くなれないはずなので、それをすべて奪われてしまうのは少しかわいそうでした。今までの努力が無になるわけですから。僕はユーゴーの気持ちもわかるのでそう思ってしまいますが、スキルを奪われた彼を見て視聴者の方がどんな感想をお持ちになったのか気になります。
――そして第9話のラスト、勇者の称号を得たことでシュンは兄ユリウスの死を知ることになります。
堀江 すごい構成だと思いました。ユリウス兄様の死が直接的に描写されているわけではいのに、こんなに切実に、喪失感をもってその死が突きつけられるのかと。馬場翁先生のセンスに驚かされました。ユリウス兄様を心から慕うシュンにとって、その喪失感は計り知れないものだったと思います。
――シュンの叫びからもその悲しみが伝わってきました。
堀江 ユリウスへの想いを込めて、心から叫んだ記憶があります。この「ウソだ、ウソだ……」という一連のセリフは、オーディションのセリフにもあったんです。ただ、本番では思い切り叫んだり、声を押し殺すように叫んだりと、いろいろなパターンを録らせていただいて。結果、思い切り叫んだものが採用されました。シュンの気持ちがそれぐらい真に迫っていたことが伝わっていたら嬉しいです。
――さて、ここからのシュンですが、どのような活躍を見せてくれるのでしょうか。
堀江 ユリウス兄様の死が大きなターニングポイントになって、この先、別人のように覚悟を決めていきます。すっかり戦う顔になっていきますし、浮ついた感じもなく地に足をつけるようになるので、僕自身も声の出し方が変わったような気がしますし、実際、別人のように演じています。今度は勇者として成長していくシュンを楽しみにしていただきたいです。
――前回のインタビューで、序盤は「頼りなさ、弱さ」を意識されたとおっしゃっていましたが、ここからは勇者然とした姿が見られるわけですね。
堀江 はい。最初のほうは優しさと強さのバランスが「8対2」ぐらいでしたが、ここからは逆転していきます。僕自身も今後、シュンがどうなっていくのか楽しみです。
――その辺りで、板垣伸監督や音響監督からディレクションはありましたか。
堀江 こちらが準備したものでOKをいただくことがほとんどで、大きな修正などはありませんでした。最初の頃にあった「もうちょっと弱い感じにしてください」というディレクションはすっかりなくなって、むしろ「もうちょっと圧を強めに」といったディレクションをたまにいただきます。監督たちの中でも、シュンは強くたくましくなっているんだなと感じました。
――ここまでで特に印象に残っているエピソードを教えていただけますか。
堀江 第8話の回想シーンは、シュンたちの立ち位置や関係性を考える上でとても重要な話数でした。夏目健吾(ユーゴー)は意外といいヤツそうに見えるなとか、漆原美麗(フェイ)はわかりやすくいじめっ子だったんだなとか。山田俊輔(シュン)も、根岸彰子のことを「リホ子」(リアルホラー子)と呼んで京也にたしなめられるシーンがあって、転生前は軽口を叩いたり、悪ふざけをするような本当に普通の男の子だったのだなとわかりましたし、みんなのことをより深く知ることができました。
――気になるキャラクターについても教えていただけますか。
堀江 カティアがどうなっていくのかが気になります。女性の体で生きることになれば、いろいろ葛藤もあるでしょうし、心の面ではどうバランスを取っているんだろうと。普段はお嬢様として生きているのに、シュンたちの前では以前と同じような喋り方をするというのはギャップがあってかわいいなと思います。今はシュンとは親友同士、よきパートナーという感じですが、この関係もどうなっていくのか楽しみです。
――では、第10話以降の見どころを教えていただけますか。
堀江 第10話からは、ユーゴーの問題だけではなく、人間サイド全体の関係性がより複雑になり、ストーリーがめまぐるしく動いていきます。新キャラクターが登場して大人たちの思惑も入り交じってきますし、ユーゴーと決別したときのようなハラハラする展開もありますので、覚悟を決めてご覧になってください。どんどん面白くなっていきます!
【取材・文:岩倉大輔】