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「第十七回 声優アワード」新人声優賞・日向未南インタビュー 「アニメのなかでなら、あこがれの『少年』になれる」

2023年3月11日、2022年度に最も活躍した声優を讃える「第十七回声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、新人声優賞を受賞した日向未南さんのオフィシャルインタビューをお届けします。


「第十七回 声優アワード」新人声優賞・日向未南さん


——新人声優賞の受賞、おめでとうございます。今のお気持ちは?
日向 すごくうれしいです。とはいえ、私が受賞できたのは私自身の実力というより「王様ランキング」という作品に出演させていただいたことが大きいと思うので、改めてこの作品の偉大さを実感した気がします。
——日向さんは「王様ランキング」で主人公のボッジを演じられました。生まれつき耳が聞こえず、話すことも不自由ななか、圧巻の表現力でしたね。
日向 ありがとうございます! ボッジは私にとって初めての主人公ということもあり、とにかく必死でした。役が決まってからアフレコが始まるまでは半年程あったんですけど、その間のプレッシャーもすごくて……。「純粋にお芝居を楽しみたい」と思いつつも、やっぱり余計なことばかり考えちゃって。今振り返ってみると、この一年間は生きるのに必死だったなと(笑)。
——ボッジはベテラン声優さんでも戸惑うであろう、難しいキャラクターです。どのように自分のものにしていきましたか?
日向 アフレコが始まるまでは、とにかく原作と台本を読みまくりました。最初は自分がボッジだったら何を思うだろうとか、どんな感情になるんだろうと思いながら原作に接していたんですけど、途中でそれじゃダメだと気づいて。私とボッジをリンクさせるのではなく、まずはボッジの思考や感情を100%突き詰めたうえで、そこにいかに寄り添うことができるかが大切なんだと思ったので、もう一度原作を最初から読み込んで、徹底的にボッジの気持ちを分析していきました。ただ、それでも不安な気持ちは消えなくて、結局そわそわしたままアフレコ当日を迎えた思い出があります。
——ボッジを演じていくうちに、どこかで自信が芽生えてきた瞬間はありましたか?
日向 アフレコ終盤になってようやく少しだけ自信を持つことができるようになったんですけど、これはカゲ役の村瀬歩さんのおかげでした。村瀬さんとは直前に「賢者の弟子を名乗る賢者」でもごいっしょしていたこともあって、それこそ「演技とは何か?」っていうところから始まり、いろいろなことをアドバイスしていただいたんです。現場で村瀬さんに教えていただくうちにだんだんと不安が消えていって、代わりに「芝居って本当におもしろいな」と思うようになっていきました。アフレコが終わるくらいの時期になると、ようやく「役者として成長したかも」と実感することができました。もちろんまだまだ実力不足ではあるんですけど、初めて成長を実感できたのは村瀬さんが支えてくださったからですね。
——「王様ランキング」はその後大ヒット作品となりましたが、周囲からの反響はいかがでしたか?
日向 アニメに詳しい友達からは「日向がボッジ? マジで?」ってすごく驚かれました。ふだんはあまりアニメを観ない友達もみんな観てくれて、作品のファンになってくれたりと、反響は大きかったです。みんなが口を揃えて「本当に声優さんだったんだね」と言ってくれて(笑)。ようやく周りに認められた気がしてうれしかったですね。


「第十七回 声優アワード」新人声優賞・日向未南さん


——そもそも日向さんはどうして声優になろうと思ったんですか?
日向 幼いころからアニメや漫画が大好きだったんですけど、なかでも「少年」キャラがとにかく大好きで、気づけば私も少年になって冒険をしていたんです。なので、昔からなんとなくアニメや漫画に携わる仕事がしたいなとは思っていました。その後、高校生になって初めて声優さんの存在を知って、それで一気に興味が湧いたんです。私自身は「少年」になることはできないけれど、アニメのなかでならそれができると思ったんですね。
——「少年」への強いあこがれがきっかけだったんですね。とくに好きな「少年」の声はありますか?
日向 たくさんありますね。小原乃梨子さんや田中真弓さん、高山みなみさんなど、「少年と言えばこの声」っていう方々には強烈なあこがれがあります。お名前を知ったのは高校時代ですけど、声そのものは子供のころから浴びるように聴いていましたから。
——日向さんは地声も低いですし、まさに「少年」にピッタリですね。
日向 それが、もともとの私の声って普通か、むしろ高いほうだったんですよ。でも少年の声を出したいがあまり、専門学校でいろいろと試行錯誤しているうちに、気がついたらこういうトーンの声になっていたんです。
——自分の地声まで変えるとは、日向さんの「少年」への強い執着を感じます。
日向 最近、これは私のコンプレックスの表われなのかなとも思うんですよ。子供のころに野球をやっていたんですけど、ある日「女の子は甲子園にいけない」という事実を知って愕然としたんですよね。ジェンダーフリーが叫ばれる現代ですけど、私にとっては男性と女性ってわりと明確な違いがあって、やっぱりどうがんばっても私自身は「少年」にはなれないんです。だからこそ、役を通じて「少年」になれる声優というお仕事は私にとって天職というか、もう「これしかない!」と思ったんです。
——そうだったんですね。では最後に、声優として将来の夢をお聞かせください。
日向 夢のまた夢のような話ですが、先ほどお名前を挙げさせていただいた方々のように、いつか「少年役と言えば日向未南」と思われるような存在になりたいです。もちろん少年役しかやらないというわけではなく、男女を問わずにいろいろな役柄を演じてみたいなと思っていますが、最終的にめざすのはそこですね。あとは歌うことが大好きなので、今後はそういう作品にもチャレンジしていきたいなと思います。まだまだ未熟ではありますが、これからも応援していただけたらうれしいです。よろしくお願いします!


「第十七回 声優アワード」新人声優賞・日向未南さん


【撮影:田上富実子/取材・文:岡本大介】

■第十七回声優アワード 受賞者及び受賞作品
主演声優賞&MVS 江口拓也
主演声優賞&助演声優賞 種﨑敦美
主演声優賞 安済知佳
助演声優賞 池田秀一
助演声優賞 置鮎龍太郎
新人声優賞 梅田修一朗
新人声優賞 直田姫奈
新人声優賞 永瀬アンナ
新人声優賞 日向未南
新人声優賞 若山詩音
歌唱賞 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
外国映画・ドラマ賞 貫地谷しほり
外国映画・ドラマ賞 森川智之
シナジー賞 呪術廻戦
富山敬賞 諏訪部順一
高橋和枝賞 川村万梨阿
キッズ・ファミリー賞 大谷育江
キッズ・ファミリー賞 松本梨香
インフルエンサー賞 花江夏樹
功労賞 秋元千賀子
功労賞 屋良有作
特別賞 やくならマグカップも 

リンク:「声優アワード」公式サイト
     「声優アワード」公式Twitter・@seiyuawards

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