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普通と普通じゃない境界線の世界に漂う空気感を感じて——。TVアニメ「アンダーニンジャ」雲隠九郎役・坂泰斗インタビュー

©花沢健吾・講談社/アンダーニンジャ製作委員会


現代日本で極秘裏に暗殺や破壊活動に従事する忍者組織「NIN(National Intelligence of NINJA)」と、敵対するもうひとつの忍者組織「UN(アンダーニンジャ)」との闘いを描いた花沢健吾さん原作の「アンダーニンジャ」が、ついにに放送開始を迎える。ニート同然の暮らしを送る末端忍者・雲隠九郎を演じる坂泰斗さんが、作品愛と役へのアプローチを語ります。


■雲隠九郎役・坂泰斗さん インタビュー


――役が決まったときの気持ちはいかがでしたか?
坂 僕は昔から、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」や「アイアムアヒーロー」など、花沢健吾先生の作品をいち読者として読んでいました。この作品がもつ独特の世界で生きる「忍者」という存在を、短いセリフのなかでどれだけ表現できるのかとても悩ましく、自分自身でも正解がわからないままオーディションで演じたのですが、九郎役に選んでいただき、いちファンとしても感無量でした。

――作品のどんなところに魅力を感じていますか?
坂 花沢先生の全作品に共通しているのが、その場の匂いまで伝わってくるような描写が醸し出す空気感です。「アンダーニンジャ」の空気感は雨が降っている湿った感じで。忍者というと、黒装束をまとって短刀と手裏剣で戦うイメージがありますが、この作品に登場する忍者は、みんな普通にいそうな人ばかり。現実世界で、自分の周囲にいてもおかしくないと思わされるような感覚に陥るところが、おもしろいです。


©花沢健吾・講談社/アンダーニンジャ製作委員会


――確かに、「アンダーニンジャ」を読んでいると、常識を足元から崩される感覚があります。
坂 そうなんです。描かれているのは、普通と、普通ではない世界の、境界線上の世界。普段は2つの世界は交わっていないのに、講談高校の女生徒・野口(CV. 徳井青空)のような、普通の世界の人が少しずつ足を踏み入れることによって世界の均衡が崩れていく、絶妙な感覚を味わえるのが、本当にすごいなと思いますね。


©花沢健吾・講談社/アンダーニンジャ製作委員会


――雲隠九郎というキャラクターをどんな人物ととらえ、どのように演じていこうと考えましたか?
坂 登場するすべてのキャラクターに共通していると思うのですが、言っていることはごく普通のことなのに、彼らが言うと別の意味合いが出てくるんです。一定の温度感と速度で話が進んでいると思ったら、急にアンダーグラウンドに入り込むような、メリハリのあるセリフ回しなので、、キャラクターをつくる、演技をつくるという感覚はゼロです。そこが難しくて、この作品では幸いにも大人数で収録しているのですが、自分が九郎としてそこにいて、その場で思ったことをしゃべる、という感覚です。

――まるで演劇のようですね。
坂 不思議な感覚ですが、共演者の皆さんがアフレコブースにそろうと、作品の舞台である練魔区の雰囲気、空気感があるんです。例えば、畠中祐さんが演じる日比奇跡(ミラクル)は複雑な関係性で、過去忍者学校時代に本気で殺し合った結果、奇跡は九郎に恨みをもっている。でも今は全然普通にしゃべるくらいの間柄で、手は出さないけど殺意はあって。「ちょっとトイレ行ってくるわ」と言う感覚で、「ちょっと殺してくるわ」と会話をする殺伐とした空気感に、毎回ゾクゾクします。九郎のお隣さんの大野はチョーさんが演じていますが、台本通りにしゃべっていなくても、チョーさんに引っ張られる形で僕がまた台本とは違う返しをしても、シーンとして成立するということが起きていて、それが本当に楽しいです。


©花沢健吾・講談社/アンダーニンジャ製作委員会


――見ている側もその空気感に引きずり込まれそうな、すごい現場ですね。
坂 九郎は主人公ですが、積極的に場の雰囲気をつくるようなタイプではなくて。彼自身がつかみどころのない人物で、ぬるっと相手の間合いに入って、いつの間にか主導権を握っているタイプなんです。だから僕のスタンスとしては、共演相手の方が出す演技に寄り添っていく、というスタイルが合っているのかもと感じています。共演者の皆さんのすごさを感じたのは、それこそ収録一発目のテストでした。もう、気持ち悪いくらい自然にぬるっと会話が始まって、あまりにも自然に殺し合いが始まる。その空気感を一発目から忍者役全員が出してきたのでゾクッとしました。逆に徳井青空さんが演じる野口や内田修一さん演じる瑛太は一般人なので、違う空気感をまとっている。それが自然とかみ合うようでかみ合わない感じが、すごくいいです。


©花沢健吾・講談社/アンダーニンジャ製作委員会


――収録ブースのなかは緊張感がありそうですが、収録していない時間はいかがですか?
坂 実は雰囲気は真逆で、和気あいあいとして会話が弾んでいます。さっきまで楽しくおしゃべりしていたのに、本番になると温度感が一変してピリッとした空気になるのがすごいです。普段カッコいいおじさまを演じている大先輩が、本当にしょうもないおじさんを演じるとこんなにおもしろくなるんだという発見があって、刺激的な現場ですね。

――九郎を演じることで、自分自身の演技の幅が広がったという実感はありますか?
坂 作品にもよりますが、「アンダーニンジャ」の現場では、肩の力を抜くというよりも入れない、はっきりしゃべろうという意識を捨てるということを学びました。世界の匂いと湿度まで感じる作品にはなかなか出会えないと思いますし、そのなかだからこそ自然に登場人物の言葉としてのアドリブが入る。例えばひとつのセリフに対して、本当に言葉がこぼれるようにボソッと「そうじゃないでしょ」と出てしまうような、特殊な掛け合いが生まれるんだなと感じました。


©花沢健吾・講談社/アンダーニンジャ製作委員会


――この作品を楽しみにしているファンの皆さんへ、メッセージをお願いします。
坂 花沢健吾作品初のアニメ化ということで、第1話だけでも、作品の世界観と湿度を感じていただけたのではと思います。この湿度がどう変化していくのか、本編を見ていくと明確に感じ取れると思います。また、要所要所に含まれるシュールなギャグや、「終わった……」と思った10秒後に笑ってしまうような空気感、締めるところは締めてカッコよくみせるシーンもありますので、その空気感を感じ取ってお楽しみいただければと思います。

【取材・文】ナカムラミナコ


■TVアニメ「アンダーニンジャ」
放送:TBS…毎週木曜25:43~
    ※10月12日の放送は25:28~となります。
   BS11…毎週金曜23:30~ ほか
配信:10月6日(金)3:00より順次、dアニメストア、Lemino、U-NEXT、アニメタイムズにて先行配信スタート

スタッフ:原作…花沢健吾「アンダーニンジャ」(講談社「ヤングマガジン」連載)/監督…桑原 智/シリーズ構成・脚本…大知慶一郎/キャラクターデザイン…結城信輝/サブキャラクターデザイン…上野ちひろ/メカプロップデザイン…反田誠二/プロップデザイン…山田菜都美/総作画監督…氏家章雄、岩崎令奈/美術監督…斉藤雅己/色彩設計…油谷ゆみ/3DCGI…酒井英之/撮影監督…志村 豪(T2スタジオ)/編集…内田 渉/音響監督…本山 哲/音響制作…ダックスプロダクション/音楽…小鷲翔太、瀬尾祐介、中野定博、MK、Ryu*/音楽制作…ポニーキャニオン/アニメーション制作…手塚プロダクション

キャスト:雲隠九郎…坂 泰斗/加藤…新垣樽助/日比奇跡…畠中 祐/鈴木…種﨑敦美/蜂谷紫音…山下大輝/川戸…安済知佳/大野…チョー/瑛太…内田修一/野口…徳井青空/小津…相馬康一

リンク:TVアニメ「アンダーニンジャ」公式サイト
    TVアニメ「アンダーニンジャ」公式X(旧Twitter)・@UNDERNINJAanime

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