舞台

今年は「運命のやりなおし」がテーマ! 「AD-LIVE 2023」東京公演レポート

鈴村健一さんが総合プロデューサーを務める即興舞台「AD-LIVE(アドリブ)」が、今年も開幕! 8月26日(土)、27日(日)に行われた東京公演を皮切りに、9月23日(土)、24(日)に大阪公演が開催。そして11月11日(土)、12(日)には東京特別公演がそれぞれ開催されます。15周年を迎える今年のテーマは「運命のやりなおし」。昨年に引き続き、2.5次元舞台を中心にさまざまなメディアで活躍する俳優陣も参戦し、バラエティーに富んだエンターテイナーたちによる笑いあり涙ありのドラマが繰り広げられます。本稿では、ジェットコースターのような展開となった下野紘さん・鳥海浩輔さんペア、“神引き”を連発した津田健次郎さん・森久保祥太郎さんペアによる東京公演の模様をレポートします。



「AD-LIVE(アドリブ)」は文字通り、その日、その場で生み出されていく即興舞台。テーマと、舞台上で起こるいくつかの出来事があらかじめ決められているだけで、メインキャスト同士でさえも本番ではじめてお互いのキャラクター像を知ることになります。

今年は「運命のやりなおし」をテーマに、トラブルに巻き込まれ不慮の死を迎えたキャラクターA、そしてキャラクターAと生前に縁があったキャラクターBがメインキャスト。キャラクターBは神に召喚され、キャラクターAが本来たどり着くはずだった真実の結末へと導くよう頼まれます。しかしキャラクターB自身も命を落としており、記憶も曖昧になっていました。それでもキャラクターBは、「生前に叶えたかった夢を転生先で実現させる」という神からの提案を受け、記憶も姿も別人になってしまったキャラクターAの運命をやりなおすことを決意しますが——。

東京公演・1日目

東京公演1日目(8月26日)の昼公演では、キャラクターAの立ち位置であるミュージシャン・井沢永一(いざわ えいいち)を鳥海さんが担当。井沢に助けられ、恩返しがしたい鶴・鶴岡師恩(つるおか しおん)という設定を与えられたキャラクターBを下野さんが演じます。鶴岡がイルカの被り物をしていたため、見た目と設定のチグハグぶりに会場からもドッと笑いが起こります。




序盤から鶴岡が「アドリブワード(一般公募により集められた言葉で、セリフや名付け、時に効果音などにも使用される)」にて、【ミュージックスタート】を引き当てるというミラクルが! しかし、井沢によって「AD-LIVE」でもおなじみである下野さんの即興ソングが封じられるという波乱の展開を見せることに……。

夜公演では下野さんがキャラクターAとなり、人間になりたいと願うアンドロイド・カケルを演じます。キャラクターBを担当する鳥海さんには、カケルの家によく来ていた訪問販売の男・勝手暮男(かつて くれお)という設定が神から与えられました。ところが鳥海さん演じる勝手暮男は、プラチナブロンドの長髪、ロリータファッションという出立ち。たまらず客席がざわつきますが、ご本人はまったく動じることなく、紳士らしい低音ボイスで勝手を演じていきます。




劇中で「やりなおしの部屋」に一時的に滞在するふたりは、過去につながる3つの扉を開け、カケルの人生におけるターニングポイントへ。途中で勝手の「本当の記憶」につながる扉も開き、お互いの記憶を紐解きつつ、即興でお芝居を展開させていきます。また、決まった回数しかカケルの過去に干渉できないという設定ながら、勝手は「自分が引いたアドリブカードをカケルに渡す」という小技を仕掛けます。対するカケルもあざやかにそれを昇華してみせ、物語のライブ感に拍車がかかっていきます。

バッドエンドが好きな下野さん、泣ける展開をつくるのが巧みな鳥海さんによる公演は、昼公演、夜公演いずれも予想だにしない展開を繰り広げながら感動の結末が……。「AD-LIVE 2023」の幕開けにふさわしい公演となりました。



東京公演・2日目

東京公演2日目(8月27日)に登場するのは、津田健次郎さんと森久保祥太郎さんのペア。昼公演ではキャラクターAを森久保さん、キャラクターBを津田さんが演じます。緻密な設定を構築する森久保さんらしく、小道具や鈴村さん演じる岡田康弘(おかだ やすひろ)との会話から、自身が演じる越智甚八(おち じんぱち)が中学校の教師だという情報が浮かび上がっていきます。




津田さんは、越智の家の最寄り駅で毎日歌っていた路上ミュージシャン・柚木優里(ゆずき ゆうり)という設定を神から与えられます。酒瓶を手にご機嫌な柚木は、神にも気さくに話しかけてコミュニケーションを図るなど、物語序盤から津田さん節が炸裂します。

終盤に差し掛かると、柚木がアドリブワードのみならず、神から与えられた「未来をも変える運命の玉」でとんでもない“神引き”が…! それを受けて越智をはじめとする面々がアドリブで物語を大きく動かし、鳥肌が立つような展開に……。



感動的な結末を迎えた昼公演とは打って変わり、夜公演では津田さんが「あえての出オチ」に挑みました。津田さんは謎の生物に捕縛されている人物・ンケダツとして、鈴村さん演じるムラリンと王位を巡って対峙するのですが、おふたりのビジュアルがあまりに笑撃的……! 攻めの姿勢を崩さないおふたりがアドリブワードで続々と設定を追加するなか、舞台上にアラート音が鳴り響き、やがて暗転とともにンケダツが命を落としたことが示されます。



キャラクターBを担当する森久保さんには、ンケダツの小学生時代の友人・友田千尋(ともだ ちひろ)という設定が与えられました。「SFは苦手なんだよ……」と、演技なのか素なのかわからないつぶやきをこぼしつつ、さすがの手さばきでンケダツの情報を整理していきます。

やがて初代の王が鍛冶屋につくらせた伝説の武器【ペンギン】が登場し、物語は予想だにしなかった展開へと駆け上っていきます。のちにカーテンコールで、津田さんの設定案を聞いた鈴村さんが「(伝説の武器の使いどころは)これしかない!」と〈叩いて、被ってジャンケンポン!〉を組み込んだと明かしていましたが、まさに完璧すぎる流れ、シーンでした。





ラストではさらにギアを上げた森久保さんが、「本当の記憶」を取り戻した友田を怪演。津田さんが生み出す奇想天外なストーリーラインと相まって、素晴らしいグルーヴ感に包まれながら終着点へとこぎつけました。

「AD-LIVE 2023」は11月に東京特別公演が開催されるほか、来場特典冊子つきの映画館でのライブ・ビューイング、メインキャストと鈴村さんによる公演後の振り返りトークが特典につく配信(期間限定でアーカイブ有)も行われます。またBlu-ray/DVDの発売も決定しており、通常版に加え、特典DVD付きのアニメイト限定セットも用意されています。15周年を迎え、さらなる感動と衝撃のドラマを届けてくれる「AD-LIVE」を、ぜひ見届けてください!



【取材・文/藤谷燈子】

舞台劇「AD-LIVE(アドリブ) 2023」

【東京特別公演・片柳アリーナ】
11月11日(土):浅沼晋太郎・岡本信彦・小野賢章・梶裕貴
11月12日(日):内田雄馬・木村良平・陳内将・福山潤

全日出演:鈴村健一

リンク:AD-LIVE Project
    AD-LIVE Project公式X(Twitter)・@AD_LIVE_Project

この記事をシェアする!

MAGAZINES

雑誌
ニュータイプ 2024年5月号
月刊ニュータイプ
2024年5月号
2024年04月10日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype
  • HOME /
  • レポート /
  • 舞台 /
  • 今年は「運命のやりなおし」がテーマ! 「AD-LIVE 2023」東京公演レポート /