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「第十八回 声優アワード」新人声優賞・戸谷菊之介インタビュー 「演じる役と自分の感情を常に重ねられるように」

2024年3月9日、2023年度に最も活躍した声優を讃える「第十八回 声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、新人声優賞を受賞した戸谷菊之介さんのオフィシャルインタビューをお届けします。



──「声優アワード」新人声優賞受賞、おめでとうございます。受賞を知ったときのお気持ちは?
戸谷 まず「うれしい」という気持ちでいっぱいでした。現場で活躍されている先輩方も通ってきた道だと思いますし、そういった栄誉ある賞をいただけたことは僕にとってすごく意味のあることだと感じています。とはいえ、賞をいただいたことで僕がやることに何か変化があるわけではないので、これからも変わらず今までやってきた声優としての表現を精一杯やっていくだけですし、これまで以上に気を引き締めていきたいと思いました。

──賞の選考の対象期間となる2022年の10月から2023年の9月までを振り返って、声優としてどんな1年でしたか?
戸谷 アフレコの数が段違いに多くなった1年だったので、現場で周りの皆さんを見てお芝居の技術を学ぶ機会を多くいただけました。それに、「UniteUp!」に出演させていただいたことでライブや歌を歌う機会が増えたので、声優というお仕事においてマルチな活動に携わることが多くなった1年という印象もあります。ほかにも、CMに出させていただいたり、初めて吹き替えを担当したりと……ありがたいことに、さまざまなお仕事に携わることができた1年だったと思います。

──「チェンソーマン」で主人公のデンジを演じたことについて、改めて振り返っていただけますか。
戸谷 デンジを演じることが決まったときは、やはり超人気作ということもあって、かなりの気合いでアフレコに臨んだ記憶があります。現場で求められていたものが、僕がそれまで大事にしてきた“リアルなお芝居”だったので、僕にできるすべてを注げることができたと思いますし……僕としては自信があるお芝居になりました。

──戸谷さんが思う“リアルなお芝居”とは?
戸谷 自分が感じたことをそのまま出すといいますか……僕は「自分だったらこうするだろうな」と思うものをそのまま出すタイプなんです。それがいいか、悪いかというのももちろんありますが、まずはやってみて、それがどういうふうに聞こえるかを一度考えてから直していくので、ベースが自分にあるんです。ただ、最近はそれもやりつつ、声としての技術ももっと高めていきたいと思っています。

──「チェンソーマン」の現場で印象的だったことはありますか?
戸谷 パワー役のファイルーズ(あい)さんと早川アキ役の坂田(将吾)くんが、第1話では出演がないのにアフレコに来てくださったんです。それでマキマ役の楠木(ともり)さんと4人で最初からコミュニケーションをとれたのが大きかったです。ファイルーズさんが積極的にコミュニケーションをとってくださって場も和んだし、緊張も解けてすごくいい効果があったので、僕もそういう振る舞いができるように真似していきたいなと思いました。僕は座長としてスタッフさんやキャストの方たちと関わるのが初めてだったのでうまくいかないことが多かったと思うのですが、周りの方たちに現場での立ち居振る舞いや宣伝まわりのことを聞きに行ったりと、失敗しながらもいろいろと学ぶことができました。

──「UniteUp!」についてはいかがでしょう?
戸谷 「UniteUp!」はソニーミュージックによる多次元アイドルプロジェクトなので、声優だけでなく舞台俳優やアーティストがキャラクターを演じているんです。だからでしょうか、普通のアフレコの感じとは全然違っていて、人によって表現方法がまったく異なるんですよね。そのひとりひとりと掛け合う際に、僕自身も「こういう表現でくるんだったらこう返そう」など、表現方法を臨機応変に変えていったのがすごく楽しかったです。

──例えばどんなふうに?
戸谷 平井亜門くん、山口諒太郎くん、僕の3人でPROTOSTARというグループのキャラクターを演じているんですが、平井くんは映像系の役者なので、アニメっぽいお芝居というよりはすごくリアルなお芝居をされるんです。一方、山口くんは声優なので僕たちが慣れ親しんでいるアニメ寄りのお芝居になるんですよね。2人のそれぞれの表現に合わせて、僕自身もリアルに寄ったりアニメらしさを意識したりと、バランスをうまくとっていけるように心がけました。



──声優のお仕事についてとても楽しそうにお話しされている戸谷さんですが、「これがあるから声優って楽しいな」と思う瞬間は?
戸谷 一番はやっぱり、「自分が役に完全になっていた」という実感があるときですね。「チェンソーマン」で敵と戦うシーンで感情を爆発させるデンジを僕も表現したいので、自分の感情も爆発させて「今すごい画と合ってたな」と感じる瞬間だったり……自分の感情が役とぴったり重なったなと演じた後に感じられたら最高ですね。

──その瞬間はなかなか訪れないものなのでしょうか?
戸谷 常に感じたいと思ってお芝居しているんですが、僕が未熟なために「今のはちょっと違ったな」と後悔する日ももちろんあります。でも、常にその瞬間が訪れるようなお芝居を目指しています。

──役と感情を重ねることを大事にするようになったきっかけなどはありましたか?
戸谷 緒方恵美さんの俳優私塾に通う前はお芝居というものがそもそもわかっていなくて、ただ音として声を出すような感じだったんです。でも、緒方さんから「心を使いながら声を発する」ことを教わってからは「今この人物は心がこういう状態にあるから、自分も同じ状態にして言葉を発しよう」という考え方に自然と変わっていったように思います。例えばデンジが吐くシーンとかも……実際には吐きませんが、口や喉、胃を全部デンジと同じような状態にして吐く勢いで演じるイメージです。

──それでは最後に、今後の目標をお聞かせください。
戸谷 「大きなタイトルを獲るぞ!」みたいな考えはなくて、自分がやりたいことをやっていけたら、それが僕にとって一番楽しいことだと思うんです。もっとビシッとした目標があったほうがいいのかもしれませんが、やりたいことをやり続けて、自分も、見てくださっている方たちも楽しい状態が続いていくように。それが今後の目標です。



【撮影:田上富実子/取材・文:とみたまい】

■第十八回 声優アワード 受賞者及び受賞作品
主演声優賞 市ノ瀬 加那
主演声優賞 浦 和希
助演声優賞 阿座上 洋平
助演声優賞 石見 舞菜香
助演声優賞 能登 麻美子
新人声優賞 伊駒 ゆりえ
新人声優賞 榊原 優希
新人声優賞 戸谷 菊之介
新人声優賞 原 菜乃華
新人声優賞 羊宮 妃那
歌唱賞 結束バンド
パーソナリティ賞 該当者なし
外国映画・ドラマ賞 高畑 充希
外国映画・ドラマ賞 村井 國夫
ゲーム賞 内田 夕夜
シナジー賞 「THE FIRST SLAM DUNK」
富山敬・高橋和枝賞 岡村 明美
富山敬・高橋和枝賞 佐々木 望
キッズファミリー賞 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」キャスト一同
インフルエンサー賞 上坂 すみれ
MVS 中村 悠一
功労賞 古川 登志夫
功労賞 山田 栄子
特別功労賞 今回は、特別功労賞に代えて本年度ご逝去された声優を顕彰しました

リンク:「声優アワード」公式サイト
    「声優アワード」公式X(Twitter)・@seiyuawards

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