キャスト

「僕は僕で、120%で自分のアプローチをしていく」ひたすら今に集中することが未来を切り開く――坂泰斗インタビュー(後編)


デビュー8年目を迎え、今後の活躍も期待される坂泰斗さんに登場いただいたインタビュー。前編では演じられた役についてや役づくりに対する思いをたっぷり伺いました。後編では先輩や後輩に対する思いや、趣味のこと、この先のこと、未来についてお話しいただきました。

プロフィール
ばん・たいと●12月18日生まれ/福岡県出身/大沢事務所所属/主な出演作品は、「俺だけレベルアップな件」(水篠旬)、「アンダーニンジャ」(雲隠九郎)、「ギヴン」(八木玄純)ほか。

憧れる先輩であり、座長として手本にしている方

―――声優のお仕事のおもしろさとはどのようなところにあると感じていますか?
 声優というお仕事のおもしろさを感じるのは、特にお芝居をぶつけ合ったときですね。キャラクターとして演じていると、相手との掛け合いでバチッと噛み合う瞬間があるんです。そんなときには作品を一緒につくっているんだ!という感覚に包まれてたまらないんですよ。逆に難しいと感じるのは、思い描いたような表現ができないときです。前編でお話した通りセリフごとに想定する感情や真意を書き出しても、その引き出しが自分にないと気づくことがあるんです。ないものは出せない……と実感するときは悔しいし、難しい……。それでも本番まで声に出してセリフを練習することはほとんどないですね。現場でしゃべる感覚をやっぱり一番大切にしていて。言いづらそうなものは口馴染むように練習しますが、ひとりで〝言い方〟ばかりつくらないように気をつけています。相手との掛け合いに集中したいですから。



 やっぱり先輩のお芝居はすごいなと毎回思うし、横でしゃべっているのを聞いているだけでもビリビリと言葉が伝わってきますね。尊敬する先輩は本当にたくさんいますが、小林裕介さんは僕にとって大きな存在です。裕介さんは全身の感覚を研ぎ澄ましてこっちのぶつける言葉を受け止めてくださるし、「さっきはバシバシきてたよ」ってあとで伝えてくださるんですよ。すごくうれしいし、素敵だし、そういう先輩でありたいです。実は、手本にしている憧れの座長というのも裕介さんなんです。モブのときに参加した裕介さんが座長の現場がすごく居心地がよかったんです。それは裕介さんの気配りあってのことだったんだと思いますし、人としても役者としても、座長としても、立ち回り方も勉強させていただいています。



周りは自分にないものをもっている人ばかり、だからこそ120%で貫く

――尊敬する先輩として小林裕介さんのお名前が挙がりましたが、声優として活動するうえで刺激を受けている同世代、それから後輩でお名前を挙げるとしたらどなたでしょうか。
 声優として刺激を受けている同世代というと、鈴木崚汰くんがいますね。素敵なお芝居をされる方だなと思います。前編で〝エゴ〟の話をしましたが、彼は役者本人が「ここでこれをやったらおもしろいけどズレちゃうよな」というエゴを自覚しているので、すごくいい塩梅で芝居を通しながら自分の色ものせていく。すごく刺激を受けるし彼の人間性も見えて、いいなあ!と思います。後輩では中村源太くんに刺激を受けています。「俺だけレベルアップな件」でご一緒していて、彼がいると現場の空気が明るくなるんです。コミュニケーション能力が高くて、役者としてだけでなく人としても見習いたい。こう考えると、周りには素敵だなと思える方がたくさんいて、僕にはないものをもっている人たちばかり。その点でも声優という職業はとてもおもしろいですよね。




――今度は視線をご自身に向けていただいて、「理想とする自分」とはどのような人間だとお考えでしょうか?
 理想の自分というのは何でしょうね。例えば僕は、目標を立てて計画的に進んでいくことが苦手な、不器用な人間なんです。僕のスタンスは、常に今の自分を120%の状態にしていること。言い換えると常にいっぱいいっぱいなんですよね(笑)。いつも許容量を超えて、限界値を引き上げようとしている。だから〝理想の自分〟というのは常に〝今の自分〟のことなのかも知れません。目標を決めず、常に120%や130%で頑張り続ける、それが自分の一番いい形なのかな。自分に不足しているのは〝自信〟ですね。どちらかというとマイナス思考な人間だから、マイク前では自分ではなくキャラクターとして存在したいと考えるんだと思うんです。人を巻き込むような明るさとか自信から生まれるエネルギーをもった役者さんには絶対に勝てない。でもだからこそ、同じベクトルで争うのではなく、僕は僕で、120%で自分のアプローチをしていく、と思っています。




この仕事で、死ぬまで新しいことに挑戦していきたい

――プライベートのことも伺わせてください。趣味やプライベートの時間はどんなことをして過ごしていますか?
 最近、趣味でよく落語を聞いています。ひとりで何人も演じ分けたり音の高低やいろんな技術を使ってお客さんに伝える。声優に繋がることも多いし勉強になるし、何よりおもしろいんですよ。特に好きな演目は立川志らく師匠の「死神」です。有名な古典落語のひとつで、〝サゲ〟と呼ばれるお話のオチで演者の個性が出るんです。なかでも志らく師匠はすごくシニカルに現代的に落とすんですよ。それがおもしろくて! まだ寄席に行ったことがないので、ゆくゆくは生で味わいたいですね。体を動かす趣味では以前からクライミングをやっています。体づくりも兼ねているんですけど足りない気がして、最近はジムに通って本格的にトレーニングしようかなって。僕は趣味も全部、何をしてても声優の仕事につながってしまいますね。そのくらい声優は楽しくてやりがいがあります。



――この先、どんな役を演じてみたいですか? 未来への青写真などがあれば、ぜひ教えてください。
 この先もいろんな役に挑戦したいですね。今まで全然違うベクトルの役を演じさせていただいてきて、その都度新しい発見しかありませんでした。そういう刺激を常に感じていきたい。それこそ死ぬまで新しいことに挑戦し続けたいです。ゆくゆくは銀河万丈さんがやられるようなキャラクターもやりたいです。でも、例えばおじさんの役は人間の説得力がないと難しいだろうから、年齢を重ねて到達していきたいなと思っています。今は、今だからできる等身大のお芝居を続けていきたいですね。それこそTHE・悪役もやりたいですけど、最近はなかなかないですよね。高笑いとかしてみたいです(笑)。僕はこの業界に入る前から、どちらかというと華のある悪役、魅力的な悪役に憧れていたりもしますので。




――最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします!
 今回、リラックスしたプライベート感のある写真を撮っていただきました。作品を通して知っていただくことが多い役者という職業ですが、こんな人がどんなお芝居をしているのか、知っていただくきっかけのひとつになってもらえたらうれしいなというのはあります。そして、いろんな作品に触れてもらえたらうれしいですし、そうなるようにたくさんの作品にこれからも出演できるよう頑張ります。作品を見ているなかで、怒りが生まれたり、悲しくなったりうれしくなったり、そんな感情を呼び起こせるような役者になれるよう成長していきたいと思います。今後とも応援をしていただけたらうれしいです!



坂泰斗さんに一問一答
Q1 好きな色は?
 黒。

Q2 出身地の自慢は?
 メキシコのタコスは大きなサイズが約10円。できたてのサルサソースもテーブルに置いてあっておいしいです。メキシコの方はみんな陽気でフレンドリーでした。

Q3 カラオケの十八番は?
 BUMP OF CHICKENの「天体観測」。

Q4 自分の性格をひとことで表現すると?
 生真面目。まじめすぎるところがあります(笑)。

Q5 好きな物、苦手な物は?
 好きな食べ物はハンバーグです。飲み物は炭酸ジュース。苦手な食べ物は漬物です。食感が慣れなくて。

Q6 好きな季節は?
 冬。

Q7 よく使うLINEスタンプは?
 よく使うのは汗の絵文字です。LINEスタンプはなかやまきんに君さんのスタンプです。「頑張ろう」というのがすごく便利なんですよ(笑)。

Q8 自分にとってのアイドルは?
 今はYouTubeの猫の動画が癒やしです。

Q9 1日の中で好きな時間帯は?
 夜。

Q10 座右の銘は?
 好かれるより好きになる。

【撮影:武田真和/ヘアメイク:齊藤沙織/文:細川洋平】

この記事をシェアする!

MAGAZINES

雑誌
ニュータイプ 2025年3月号
月刊ニュータイプ
2025年3月号
2025年02月10日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype
  • HOME /
  • レポート /
  • キャスト /
  • 「僕は僕で、120%で自分のアプローチをしていく」ひたすら今に集中することが未来を切り開く――坂泰斗インタビュー(後編) /