国内外の視聴者を続々と〝沼落ち〟させているTVアニメ「多聞くん今どっち!?」(原作:師走ゆき)。発売中の月刊ニュータイプ4月号「多聞くん今どっち!?」特集で載せきれなかったお話をWebNewtypeでご紹介します。坂口桜利役・千葉翔也さんに、アイドルグループ・F/ACEの王子様担当こと桜利のオンとオフの演じ分けをはじめ、レコーディングの裏話、さらに気になる今後について語っていただきました。本誌4月号と合わせてお楽しみください!
——桜利は芸能一家の生まれで、自身も小学生の頃からCMやドラマで活躍してきたサラブレッドです。千葉さんご自身は、彼のバックボーンをどのようにご覧になりましたか?
千葉 それこそ桜利のプロ意識の高さは、第9話に登場した家訓「力こそパワー」に大きく影響を受けたんだろうなと思っていて。坂口家の家訓は、芸能人として成功している両親のマインドによるもので、周囲を蹴落とすのではなく力でもって自分自身が上に登っていくという力技なんですよね。僕自身は役づくりをするときに、例えばほめられてうれしかったタイミングであったり、本人が足りないと思っている部分などを掘り下げていくんです。桜利に関しては何かが不足している印象があまりなかったのですが、だからといってハングリー精神に欠けているわけでもなくて、そういった人物造形がおもしろいなと感じました。たぶん根っからの負けず嫌いで、さらに両親のシンプルイズベストを地でいくような教育方針によって、今の彼がつくられていったんだろうなと思います。
——たとえばどんなところに、桜利のプロ意識の高さを感じられていますか。
千葉 ギャップを感じたという意味で、第5話で描かれたF/ACEのオーディション時代の台詞が特に印象的でした。多聞くんに「子分にしてやる。わかんねえことは聞けよ」と声をかけるシーンなのですが、実際に自分で演じるまで、あの場面での桜利が表なのか裏なのかよくわかっていなかったんです。収録では最終的に「気のいいガキ大将」というか(笑)、素の桜利のいいやつな部分が顔をのぞかせた場面になりました。一方でデビュー前から王子様キャラを確立し、オーディションを戦うと決めていた辺りは、まさにプロ意識の表れだなと思います。デビューが決まった後にプロデューサーたちと自分の売り方を揉むのはわかるけれど、桜利はF/ACEのセンターに立つと決めた段階から、自分にとっての最適解を見つけだして迷わず実行に移しているんですよね。子役としての経験が生きている部分でもあるでしょうし、デビュー時にセンターになれなくても決して腐らずに、王子様キャラを貫き通しているところも純粋に尊敬しています。
——オンオフの切り替えについて、特に意識されていることは?
千葉 素の桜利も仕事中の桜利も〝フリ〟にしたくないなと思っていました。表の桜利の魅力は表の桜利に、仕事中の桜利の魅力は仕事中の桜利に任せたいなと。ただ、どちらも桜利自身であることに違いはなく、お互いに影響し合っているんですよね。例えば第3話でうたげちゃんが、桜利のことを「嫌いな人のことはどうでもいいです」と言いながらも演技力や歌について素直に評価しているのは、それだけ彼が努力している証だと思うから。リーダーの敬人くんがファンに対してやや偏った意見を述べたときに、「お前のそういうとこクソだなって思うわ」と毎回指摘しているのも、桜利の本心として台詞を言っています。
——多聞役の波多野翔さんから、「Eyes on you We are F/ACE!」など、メンバーで声を合わせるシーンにこだわられて収録されているとのエピソードをうかがいました。
千葉 F/ACEというグループのディティールを考えたときに、あの名乗りは絶対にこだわったほうがいいだろうなと思ったんです。デビュー直後ではなく、初のドームコンサートを控えている状態で、さらにパフォーマンスに対してものすごくストイックなグループじゃないですか。そうじゃなきゃ、ファンの皆さんもあんなに夢中になって推してくれないだろうなと。のちに「E/YES」がファンネームとして採用されたという経緯を考えても、あの名乗りは5人できちっと合わせたほうがいいんじゃないかと思って提案させてもらいました。
——今作ではOP・EDを筆頭に、F/ACEが歌う楽曲も話題です。
千葉 レコーディング自体はアニメ本編の収録前に行なわれたこともあって、どんな演出がつくのか当時は未知数で。OPの「Sweet Magic」は第1話からドームコンサートで披露する流れでEDにつながったり、第5話では「RAIN」が特殊EDになったりと、楽曲たちが物語のなかで重要な意味をもっていて驚きました。どれも好きな曲だなと思っていたのですが、物語のなかでまた新たな輝きを放つようになっていて、いい意味で予想を裏切られましたね。
——レコーディングには、どのように挑まれたのでしょうか。
千葉 キャラクターソングを歌わせていただく際は、彼らが表舞台に立って歌う〝お仕事ソング〟なのか、それとも〝イメージソング〟という立ち位置で視聴者の方が受け止めてくださるものなのかによって分けてとらえるようにしていて。F/ACEの楽曲は間違いなくお仕事ソングなので、桜利がめざすアイドル像、そしてファンから支持される透明感と繊細さを意識して表現しました。メインボーカルというポジションとして、曲ごと、歌割りごとに表現を変えたいという思いも欲として出しています。きっと桜利だったらそうするだろうな、と思ったので。
——桜利の透明感と繊細さを表現するうえで、特に意識されたことは?
千葉 技術的な話になるのですが、マイクの位置をかなり調整しました。F/ACEの楽曲は基本的にポジティブでポップな感情のもとに歌っています。歌として嘘をつかないためにその感情のままで歌うと、第一印象としてもってほしい爽やかさや透明感から乖離してしまう声質になりそうだなと思ったんです。なのでキャラソンは口元で録るものですが、マイクの位置を探りながら、最終的におでこより高い位置にマイクを置いて歌うことで、桜利の声がもつ透明感を拾ってレコーディングに挑みました。あとから調整できる部分でもあるのですが、せっかくゼロから立ち上げてつくるキャラクターソングですし、最大限の力を発揮した上で感じてもらえるよう、僕なりにあれこれ試しながら挑ませていただきました。
——最後に、気になる今後の見どころについてお聞かせください。
千葉 桜利からの矢印は、うたげちゃんに対してはもちろん、F/ACEのメンバーたちにも向けられています。恋愛感情を抱くうたげちゃんとはまた別のベクトルで彼らにも大きな感情をもっていて、要所要所でかける言葉ひとつとっても深みがありますし、どの台詞にも注目してほしいなと思います。そして何といっても、桜利とうたげちゃんの関係性ですよね。僕個人としては、桜利はうたげちゃんと多聞くんとの〝三角関係〟において、勝ち負けでとらえていないだろうと思っているんです。師走ゆき先生に直接うかがったわけではないので実際のところはわからないですが、桜利は「多聞に勝つ!」ではなく、「うたげに自分を見てほしい」というスタンスなんじゃないのかなと。それこそ第5話で、うたげちゃんが掲げた横断幕に書いてあった「多聞くんはわたしの心のセンター」の精神だと思っていて、見てくださる皆さんにも勝ち負けではない彼らが描く関係性そのものを楽しんでいただけたらうれしいです。今後とも応援のほど、よろしくお願いします!
【取材・文:藤谷燈子】
■TVアニメ「多聞くん今どっち!?」
●毎週土曜日25時00分~TOKYO MXほかにて放送中
スタッフ:原作=師走ゆき「多聞くん今どっち!?」(白泉社「花とゆめ」連載) 監督=永岡智佳 シリーズ構成・脚本=永井千晶 キャラクターデザイン・総作画監督=伊東葉子 アニメーション制作=J.C.STAFF 製作=松竹・キングレコード・白泉社
キャスト:木下うたげ=早見沙織 福原多聞=波多野翔 坂口桜利=千葉翔也 橘 敬人=畠中祐 石橋ナツキ=天﨑滉平 甲斐倫太郎=長岡龍歩
©師走ゆき・白泉社/多聞くん今どっち!?製作委員会
リンク:TVアニメ「多聞くん今どっち!?」公式サイト
TVアニメ「多聞くん今どっち!?」公式X(Twitter)・@Tamon_anime