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■■対談中にゲーム本編および、小説版のネタバレが入ります■■
万城目:ゲーム同様、小説でもクワイエットのエピソードがすばらしかったですね。女五右衛門のような、男前ぶりでした。満を持して英語しゃべる砂嵐のシーンが、今作いちばんのグッとくるところでした。小説では最後、死んでますよね。あそこを読んで、やっぱりそうなんだ……って思いました。ああするしかないんだろうけど……。
野島:あれは僕の完全な思いこみというか、シナリオを読んでこれはそういうことしかないだろうと。
万城目:そうか、野島さんはゲームが完成する前に原稿を書いているから、捉え方が違うのですね。
野島:監督からは「あれは死んでない」とあとから指摘されました。ゲームではそこは明確にしていない、と。ならもっと早く教えてよ、と思いましたが(笑)。
万城目:やっぱり、死んでないんだ。じゃあクワイエット、帰ってきてほしいですよ(笑)。
野島:でも、あそこでいなくなるからグッとくるわけでしょ。あの喪失感があってこそのクワイエットだから。でもゲーム上では、クワイエットは発病したかどうかも曖昧という設定なんだそうです。
伊藤計劃さんの「MGS4」の小説ではスネークは死んでますが、ゲームでは明示的には死んでないんです。監督がどこかで発言していましたが、当初はスネークとオタコンは、罪を償うために自首して死刑になる、という話でした。でも周囲の反対にあってそれはやらなかった。ゲームで映画の「死刑台のメロディ」のテーマが使われているのは、その暗示なんですね。スネークもオタコンも、客観的に見ればただの犯罪者ですからね。そのことにおいて、彼らは作中の悪役と同じはずなんです。だから「V」の小説では悪役のスカルフェイスに「死刑台のメロディ」の元になった現実の冤罪事件のサッコとバンゼッティのエピソードを語らせました。悪役のスカルフェイスがやったことは冤罪かもしれない、という意味ももたせたくて。
万城目:なるほど。今回のビッグボスたちも、世界秩序側の視点からみたら完全な犯罪集団ですよね。紛争に首をつっこんでそれで稼いでいるという、言いようによっては戦争マフィアでしょう。でも、ゲームをやっているだけだと、彼らのやっていることが犯罪だってことを認識しにくいんですよね。客観的に見れば、彼らのやってることはみんなアウト、とても支持できないことなんだけど、プレイしてるといい人たちに見えちゃうんですよ。だから今回、僕はヒューイ(エメリッヒ)がほんとに好きで。絶妙なタイミングでイラっとすることを言うでしょう(笑)。登場キャラの中で、いちばんの悪者みたいに見えるけど、じつはそうじゃないんですよね。もっともプレーヤーに近い感覚を持った一般人ですよね。そうは言っても、彼が口にするのは常に正論なんだけど、ムカつくんですよ(笑)。
野島:今までのシリーズでも、敵はともかく、あんなに仲間たちと違う意見を主張するキャラっていなかったですよね。
万城目:そうなんですよ。あれがごく一般的な人間の反応ですよ。スネークやオセロットやミラーは、きっと激しい拷問にあっても決して口は割らないでしょうけど、ヒューイのような一般人なら、拷問にも耐えられないでしょうしね。最後にはわりと簡単に基地の場所を吐いちゃいますもんね。【対談その5に続く】