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彼らから、人間はこんなふうに見えている!? 「では人類、ごきげんよう」斧田小夜インタビュー

ニュータイプ2026年3月号(2025年2月10日発売)のBOOKページにて掲載した「では人類、ごきげんよう」著者・斧田小夜インタビューを、WebNewtypeにて公開いたします。皆さまお楽しみください。


「では人類、ごきげんよう」カバー


「ずっと技術職なので、ついついAI側から見た人間の姿を書いてしまっている……いつも、そんな感覚です」
 執筆への思いを語る著者がこのほど上梓したのは、伝説の怪異にまつわる存在を題材にした6つの物語。
「自分が理系の人間として機能と心のどちらを優先するか?のボーダーラインにいるからだと思うんですが、人間にはいろんな考え方や感じ方、反応があるんだな、とものすごく興味深くて。だから仕組みと人間の感情がぶつかって起こる摩擦みたいなものを小説という形で出力しているんです」
 その視点はどう生まれたのだろう?
「私の父が飛行機の整備士なので、図面や工具が身近にある家で、幼いころから好奇心のままに、小さい家電を分解しては組み立てたりしていました。ただ、機械の仕組みは調べたらわかるけれど、人間の感情はわからないことが多くて。そこが不思議でもあり、心ひかれることでもありました」
 そんな折、仕事の記録を兼ねて日常をつづったブログを書きはじめる。
「文章を読むのも書くのも好きだったので。ただ、小説は読むばかりで、ライトノベルから入って中国文学の存在を知り、仕事で北京にいたこともあって幅広く読みました」
 そんなある日、ふと思いつき、自分でも小説を書いてみた。
「それがとても楽しくて! 本格的に書きはじめて、賞の投稿を始めました」
 ジャンルは自身の知識を生かし、もちろんSF。やがて、'16年には投稿作が第4回ハヤカワSFコンテストにて最終候補となる。
「技術者は意見交換することが常なので、小説も受賞の選評だけでなく、もっといろいろな感想が欲しくて講座に参加しました」
 それが現在もSF作家を輩出している「ゲンロン 大森望 SF創作講座」。
「私は第3期生で、課題作のひとつが今回、収録した『麒麟の一生』です」
 そこで短編集のモチーフが決まったとか。各話の成り立ちをうかがった。
「これは講義の課題が元号だったので、元号の文字の意味や成り立ちを調べて、麒麟を出そう、だとしたらビールがあるな、そうだ、お酒の話にしよう!と組み立てました。三題噺的に関連するものを見つけてお話を組み立てることが多いですね」
 続いて第10回創元SF短編賞優秀賞受賞作「飲鴆止渇」には自身の静かな問いかけが秘められている。
「参考文献にもあるとおり、ある事件を題材にしています。これは海外勤務時代に実際に感じた違和感を織り込んでいて、その不条理さみたいなものをたたきつけたお話でもあります。衝突が生む差別や悲劇への思いは常に自分の根底にあって、時々外に出てしまうことがあるんです」
 耳なし芳一を題材とした「ほいち」は無断駐車対策のニュースを見て、妄想したという。
「車体が見えなくなるほど注意書きがベタベタと貼られていて、これがお札だったらおもしろいなと思って。放置された自動車に搭載されたAIの立場から見えている世界を書きました」
 そして「デュ先生なら右心房にいる」はさまざまな星の人間が交差する、とある宇宙基地で起こる珍事。
「街がどうできていったのかを調べるのが好きなので、まず先生がいる基地の図面を起こして、そこにいる理由を考えました。ある動物が登場しますが、これは私の趣味です! 削蹄動画が好きで小気味よいリズムでヒヅメがさくさく削られる映像はずっと見ていられます。いろいろな視点で書きたくて、いろんな登場人物を出しました」
 エンジニアとしての経験を生かしたのは「海闊天空」。
「すでにあるテクノロジーを組み合わせて、物流の自動化アーキテクチャをシミュレーションしてみたんです」
 表題作で書き下ろしの「では人類、ごきげんよう」も実験に満ちた一作。
「AIが人類に向け報告を続けますが、その発言テイストをChatGPTに指示してみることも試しました」
 装画はひと目ぼれした切り絵作家のriya氏に作品世界を伝えて依頼。撮影は自身が手がけた(!)とか。かくして心躍る試みが詰まった一冊が誕生。
「技術の話が多いですが、そこで生きる者たちの物語です。頭を空っぽにして楽しんでください」

著者プロフィール

斧田小夜●おのだ・さよ/'83年生まれ。千葉県出身、東京大学大学院情報理工学系研究科修了。現役エンジニアとしての知識を生かし独特な視点で創作を続けている。'19年「飲鴆止渇」で第10回創元SF短編賞優秀賞、「バックファイア」で第3回ゲンロンSF新人賞優秀賞を受賞。著書に短編集「ギークに銃はいらない」(破滅派)など

【取材・文:おーちようこ】

■「では人類、ごきげんよう」
著者:斧田小夜
定価:税込2530円
発売中
判型:四六判
ページ数:356ページ
ISBN:9784488021092
東京創元社 https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488021092

舞台となるのは過去の神話の時代から、どこか未来の宇宙まで。登場するのは酒におぼれた麒麟をはじめ放置された自動運転車、人類向けの報告書を日々工夫するAIなど。第10回創元SF短編賞優秀賞受賞作となった「飲鴆止渇」を収録したSF幻想小説集、ここに登場!

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