キャスト

「澄んだまなざし」を意識して――「パリに咲くエトワール」ルスラン役・早乙女太一インタビュー

©「パリに咲くエトワール」製作委員会


谷口悟朗監督とキャラクター原案・近藤勝也による劇場アニメ『パリに咲くエトワール』がいよいよ明日・3月13日(金)より公開! 20世紀初頭のパリで画家を夢見る少女フジコとバレエに憧れる千鶴、二人はそれぞれの夢をつかめるのか。公開を前に、二人の少女の夢を応援する、作曲家志望の青年・ルスランを演じた早乙女太一さんに話を聞きました!


早乙女太一さん演じる作曲家志望の青年・ルスラン ©「パリに咲くエトワール」製作委員会


――本作でルスラン役のオファーがあったときは、どのように感じられましたか?
早乙女 『プロメア』(2019年)以来のアニメ出演になるので、6~7年ぶりですね。実は「また声優をやりたい」という気持ちがずっとありました。『プロメア』で、舞台や映像のお芝居とはまた違う楽しみ方があるということを知ったんです。今回の『パリに咲くエトワール』は、また作風もまったく異なりますし、新しいチャレンジができるのではないかと思い、とてもうれしかったです。

――作品についてはどんな印象を持ちましたか?
早乙女 時代によって価値観はまったく違いますよね。およそ100年前となると、バレエや海外の文化、エンターテインメントがまだ日本に十分に交わっていない時代です。そうした中で、フジコと千鶴はパリに渡って果敢に挑んでいくわけで、相当な勇気と覚悟がなければできないことだと思いました。そのチャレンジ精神は、今の時代にも通じるものがあります。若い方はもちろん、僕のような大人でも初心を思い出させてくれる。自分の世界から一歩踏み出す勇気を思い出させてくれる、大切なことを再確認させてくれる作品だと感じました。

――そんな二人と親しくなるのがルスランという青年ですが、どのような性格の持ち主でしょうか? 
早乙女 ルスランは、年齢も若く、環境的にも決して恵まれているとは言えない状況にいますよね。生まれ育ったロシアを離れて、パリに暮らすといういろんな困難がある中で、それでも自分の信念をしっかり持っているんです。揺るぎがなく、迷いがない。自分の憧れや夢を見つめる目に曇りがないという印象です。演じるにあたって、その澄んだ感覚をどう表現するかを意識していました。

――ルスランは最初、ちょっとキツめの印象ですが、やがてフジコたちと打ち解けていきます。
早乙女 核心を突く言葉をズバッと言うキャラクターですが、そこに嫌味がない。真っすぐに、自分が思ったことを真っすぐに言う。そこがへんなニュアンスで歪まないように気をつけていました。

――ルスランを演じる上で、谷口悟朗監督からどのようなディレクションがありましたか?
早乙女 最初に今お話したような、まっすぐな人間であるというような性格の説明はありました。あと印象的だったのは、結構声を張ってほしいというディレクションがあったことです。たとえ目の前に相手がいるシーンでも、何メートルか離れた人に話しかけるくらいの声量で、という指示がありました。おそらく絵と声のバランスを考えてのことだったのだと思います。僕自身は、言われた通りにやるという意識で臨みました。今回は映像がほぼ出来上がった状態で収録できたので、とてもやりやすかったです。キャラクターの動きと自分の声がずれないように意識することに集中できました。

――アフレコはスムーズに進みましたか?
早乙女 はい。収録は3日間ほどで、非常にスムーズに進んだ記憶があります。基本的にひとりで収録したんですが、母親のオルガ役を演じた門脇麦さんらと一緒に収録したシーンもありました。隣に相手がいるのにマイクに向かって演じるのはアニメのアフレコならではの独特な感覚ですが、その場で会話が生まれていく感覚はとてもやりやすかったです。門脇さんが演じるオルガは、とても強くてかっこいい存在です。親子の関係性がとても素敵で、印象に残っています。


画家を夢見る少女・フジコ ©「パリに咲くエトワール」製作委員会


――フジコと千鶴という二人についてはどんな印象を持ちましたか。
早乙女 そうですね……。フジコが迷いながら進んでいく姿には、自分の若いころを重ねられる部分がありました。フジコは絵画の道を選んだわけですが、やりたいものを見つけること自体が大きなことですが、見つけても迷いは続きますよね。そこはよくわかるなと思いました。一方で千鶴は、とても強い心を持っています。僕自身はどちらかというと、フジコのように迷いながら影響を受ける側だったと思います。千鶴のようにはなれないタイプでした。

――そうなんですね。ちょっと意外です。
早乙女 フジコは千鶴という強い存在が側にいることで頑張れたところがあると思います。自分もそういう人がいました。橘大五郎さんという役者さんで、橘大五郎さんは十代の自分にとって兄のような存在でした。その方の背中を見て学んできたことがいろいろあったなと、この作品を通して思い出しました。周囲の存在がどれほど大きいかということも、改めて感じました。


バレエに憧れる少女・千鶴 ©「パリに咲くエトワール」製作委員会


――印象に残っているシーンはありますか?
早乙女 千鶴がバレエで悩んでいるときに、ルスランが「リズムの取り方の違い」に気づくシーンですね。まだ西洋の音楽や踊りが知られていないからこその試行錯誤ですが、当時はまだ未知の世界がたくさんあったんですよね。そこにある可能性の広がりにうらやましさもちょっと感じるようなシーンでした。

――物語の舞台であるパリを訪れたことはありますか?
早乙女 仕事で一度だけ訪れたことがありますが、華やかさだけではない、街そのものが持つ“圧”や“重量感”のようなものを感じました。歴史とともに培われてきた、その国にしかないエネルギーを初めて体感した場所でした。オペラ座の外観にも圧倒されました。日本の歴史ある劇場とはまた違う空気感があり、強く印象に残っています。

――改めてアニメに出演されてみていかがでしたか。
早乙女 アニメの面白さは、自分では絶対になれない外見や存在になれることですよね。舞台や映像でも別の人物を演じますが、ここまで違う存在になれるのはアニメならではです。以前出演した作品は必殺技を叫ぶような作品でしたが、今回はまったく違うタイプの役で、それでも、やったことのないことに挑戦できるのは楽しいですし、常に飛び込んでみたいという気持ちはあります。

――これから映画を見る方に、メッセージをお願いいたします。
早乙女 年齢を問わず共感できる部分がたくさんある作品です。僕自身、とても勇気をもらいました。……大人になると、自分の世界がある程度できあがり、その枠から一歩出ることが少なくなりますよね。でもこの作品は、そこから挑戦するための一歩を後押ししてくれる作品です。待つのではなく、自分から歩いていくことの大切さ。フジコや千鶴のように、一歩踏み出せば、まったく知らない世界が広がっている。その喜びや楽しみ、もちろん大変さも含めて、きっとご覧になった方には伝わるのではないかと思います。ぜひ多くの方に観ていただきたいです。

【取材・文/藤津亮太】




現在発売中の「ニュータイプ4月号」では、「パリに咲くエトワール」特集記事あり!
フジコ役・當真あみさんと、千鶴役・嵐莉菜さんの対談を掲載しています。
キャラクターデザイン・総作画監督の山下祐さんが描き下ろした、フジコ&千鶴のピンナップも付いてきます!


©「パリに咲くエトワール」製作委員会


劇場アニメ『パリに咲くエトワール』
●2026年3月13日(金)全国公開

STAFF
原作:谷口悟朗・BNF・ARVO 監督:谷口悟朗 脚本:吉田玲子 キャラクター原案:近藤勝也 キャラクターデザイン・総作画監督:山下祐 リサーチャー:白土晴一 美術監督:金子雄司 色彩設計:柴田亜紀子 撮影監督:江間常高 キャラクター演出:千羽由利子 バレエ作画監督:やぐちひろこ 殺陣作画監督:中田栄治 エフェクト・メカ作画監督:橋本敬史 3DCG監督:神谷久泰 編集:廣瀬清志 プロップデザイン:尾崎智美 メカデザイン:片貝文洋 音響監督:若林和弘 音楽:服部隆之 アニメーション制作:アルボアニメーション

CAST
當真あみ、嵐莉菜
早乙女太一 門脇麦 尾上松也 角田晃広 津田健次郎
榊原良子 大塚明夫  
甲斐田裕子 藤真秀 興津和幸 小野賢章 名塚佳織 唐沢潤 村瀬歩 内山夕実 岩崎ひろし 永瀬アンナ
黒沢ともよ 矢野妃菜喜 生天目仁美 
※榊原良子さんの「榊(さかき)」の文字は「木」へんに「神」のつくりとなります。

STORY
20世紀初頭のパリ。
そこに日本からやってきたふたりの少女が暮らしていた。
一人は、夫を支えるよき妻となる将来を望まれながらも、画家を夢見るフジコ。
もう一人は、武家の家系に生まれ、ナギナタの名手ながらバレエに心惹かれる千鶴。
ある日、トラブルに巻き込まれたフジコを千鶴が偶然助けるが、それは幼い日に横浜で出会ったことがある二人の、運命的な再会だった。
千鶴の夢を知ったフジコは、同じアパルトマンに住む青年ルスランの母オルガが、ロシア出身の元バレリーナであることを知り、レッスンを依頼する。
東洋人であることで様々な壁にぶつかりながらも、二人は夢に向けて歩き出すが、ある日フジコの保護者である叔父さんが、失踪してしまう。
フジコと千鶴、二人はそれぞれの夢を掴むことができるのだろうか―― 。
20世紀初頭、パリ。異国の空の下、憧れを追いかけた少女たちの物語。

リンク:劇場アニメ『パリに咲くエトワール』公式サイト https://sh-anime.shochiku.co.jp/parieto-movie/
©「パリに咲くエトワール」製作委員会

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