舞台

兄弟が感じる古田新太の魅力――劇団☆新感線『天號星』早乙女太一&早乙女友貴インタビュー


いよいよ9月14日から開幕となる劇団☆新感線の新作舞台、いのうえ歌舞伎「天號星」。現在発売中のニュータイプ10月号でも特集記事を掲載。本誌でも掲載している早乙女太一さんと早乙女友貴さんの兄弟対談。本誌掲載とは違う話題をお届けします!


写真左より早乙女友貴さん、早乙女太一さん


――お二人は、すっかり新感線の常連俳優ですね。初出演の時のことなど覚えていますか?

太一 『蛮幽鬼』の時ですね。17歳でしたけど、なにも覚えてないです(笑)。そう喋る役でもなかったんですが、声をもっと大きくしろといわれたことを覚えています。声が小さかったんで。むしろ2回目(2011年の『髑髏城の七人』。通称『ワカドクロ』)の時のことをよく覚えています。いのうえさんの演出って、かなり細かくいろんな動きを指示されるんです。でもそれをそのままなぞっただけでは、自然なお芝居に見えないので、動きをちゃんと自然に見えるように取り入れなきゃいけないということをすごく意識しましたね。やっぱり、そこまで動きを決められることというのは、普通はあまりないですから。

友貴 そうですね。僕も1回目(『蒼の乱)』)よりも、2回目の『偽義経冥界歌』のほうをよく覚えてます。その時は冒頭から登場して、15分ぐらいしゃべりっぱなしうごきっぱなしだったんですが、その時は、ものすごく演出がつきました。真面目なところ、コミカルなところ、さらに殺陣もあるというふうにいろんな要素が盛りだくさんだったんですが、ついた演出を全て取り入れないといけないし、でもなぞるだけの段取りになっちゃいけないし。『蒼の乱』のときよりも、ずっと演出をつけられたという記憶があります。

――出演してきた作品の中で「転機」と呼べる作品はありますか?

太一 転機ですか? うーん、それはやっぱり2回目の『ワカドクロ』じゃないですか。それだけ苦労もしましたし。その後、『蒼の乱』になってようやくちょっとはできるようになったかなという感じで。

友貴 僕は『偽義経冥界歌』ですかね。『偽義経』は2019年に公演が始まったんですが、その後、ちょっと間をあけて最後の公演は2020年という足掛け2年の上演でした。この年をまたいだ2020年の公演になった時に、すごく楽しめたんです。だからそこに転機があったのかなぁと思いますね。

――友貴さんは、兄弟で古田さんと共演したいと考えていたそうですね。
友貴 そうなんです。そうしたら新感線のほうでも、そういうふうに考えていたそうで、今回の共演が決まりました。

――どんなところに古田さんの役者としての魅力を感じていますか?

太一 いい意味での“手の抜き方”ですね。その抜き方が、絶妙で、それが色気にもなっているのはすごいです。古田さんはオールマイティですからね。今はもうだいぶおじさんではありますが、やっぱりカッコよさがにじみ出てきているんですよ。めちゃくちゃ頭もよくて、殺陣もできるし、ギャグもできる。共演してわかったのは、ものすごく真面目な人だということです。最初は、皆さんと同じ様にテレビなどでその存在を知っていたので、お酒の場やほかのところで見せる、豪快で破天荒でめちゃくちゃみたいなイメージを持ってました。もちろんそういう面もあるけど同時に、とても繊細だったり、努力家の面だったりも持っていて。そういうのは実際に稽古場で一緒にやってみて初めてわかったことでした。

友貴 本当にその通りだと思います。誰よりも真面目だし、誰よりもみんなのことをちゃんと見てくれて、いろいろ考えている方で現場入りも一番早いし、スタンバイするのも早いんです。

――新感線のお芝居は殺陣もギャグもある、その幅の広さが魅力ですよね。

太一 DVDで新感線の『髑髏城の七人~アオドクロ』を見た時に、市川染五郎(現・松本幸四郎)さんの殺陣が本当にかっこよくて憧れました。ただ実際に参加してみると、劇団朱雀の殺陣とは立ち位置のとりかたから全然違って、新鮮なショックがありました。とてもおもしろい体験でした。

友貴 僕らはそれまで、竹光というものを使ってこなかったんです。ジュラルミンでできたジュラ刀という本当に硬い刀を使っていて、効果音もつけていなかった。だから僕も新感線に初めて出演した時は、慣れませんでした。

太一 ギャグというか、コミカルなシーンのほうは、最初は野放しにやっていて、ある時、いのうえさんが思いつくと「こうして立ってみたら」みたいに膨らんでいくことが多い印象です。いのうえさんだけじゃなくて、(池田)成志さん、古田さんなんかもいろいろアドバイスをくださったりします。今回の『天號星』は、古田さん演じる藤壺屋半兵衛と中身が入れ替わった時、どういうふうに戸惑って、どういうふうに行動するのかが、たぶんおもしろくなっていくところだろうなと思います。

友貴 僕のほうは、本番期間中にギャグの台詞が増えることが多いんです(笑)。いのうえさんも毎日公演を見ていると、飽きてくるんでしょうね。当日の朝とかに「ここにこういう台詞を足して」といわれるんです。これが、絶対滑るだろうなぁという台詞なんです(笑)。

太一 (笑)。

友貴 「わかりました」って、言われた通りちゃんとやって、だいたい滑る。でもいのうえさんの笑い声だけ聞こえてくる。そこまでがワンセットですね(笑)。

――『天號星』は、THEATER MILANO-Zaという比較的小さめのステージでの上演となります。

太一 コロナ禍ということもあり、長らく客席を使った演出というのができなかったんですが、今回は客席を巻き込んでの演出もあるかもしれないということで楽しみにしています。新感線も昔は、客席をいろいろ使っていましたから、自分が過去に見ていた新感線の演出を体現できるのはすごくうれしいです。

友貴 中島さんの脚本は「少年ジャンプ」のような、ヒーローがヒーローらしい脚本なんですよね。それがいのうえさんの演出とマッチしていて、本当にこの2人のタッグは魅力的なので、年齢問わず楽しんでいただける新感線の時代劇になっていると思います。


【取材・文】藤津亮太
【写真】大川晋児

〝殺陣〟への思いをたっぷりと語ってもらった、ニュータイプ10月号の記事も併せてお読みください!



2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演 いのうえ歌舞伎『天號(てんごう)星(せい)』
作    中島かずき
演出    いのうえひでのり

出演    古田新太 早乙女太一 早乙女友貴
   久保史緒里 高田聖子 粟根まこと 山本千尋 / 池田成志

   右近健一 河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋
   山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ
   村木 仁 川原正嗣 武田浩二

   藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平 紀國谷亮輔 寺田遥平 伊藤天馬
   米花剛史 武市悠資 山崎朱菜 本田桜子 古見時夢

企画・製作 ヴィレッヂ 劇団☆新感線

【東京公演】 THEATER MILANO-Zaオープニングシリーズ
公演日程    2023年9月14日(木)~10月21日(土)
会場     THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)

【大阪公演】
公演日程    2023年11月1日(水)~20日(月)
会場    COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

あらすじ
時は元禄、江戸に口入れ屋の藤壺屋主人・半兵衛(古田新太)がいた。彼は裏で悪党を始末する〝引導屋〟の元締めとして知られていたが、実のところは顔の怖さを買われただけの、気弱で温厚、虫も殺せぬ人物だった。あるとき、金さえ積めば誰彼かまわず斬り殺すはぐれ殺し屋の宵闇銀次(早乙女太一)が彼の前に現われる。藤壺屋に相対する黒刃組に依頼され、半兵衛を待ち伏せして斬ろうとする銀次。だがその瞬間、天號星の災いか、二人を激しい落雷が襲い……。

リンク:『天號星』公式サイト

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