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映画「文豪ストレイドッグス BEAST」 坂本浩一監督インタビュー 「長回しにより生の迫力が感じられるアクションシーンに」

2022年1月7日、シリーズ初の実写映画となる「文豪ストレイドッグス BEAST」が公開! メガフォンをとったのは「仮面ライダー」「ウルトラマン」シリーズを手がけ、アクションバトルやVFX演出を得意とする坂本浩―監督。描かれるのは「主人公の中島敦と、その宿敵である芥川龍之介。もし、2人の所属する組織が逆だったら……?」というifのストーリー。作品愛に満ちた現場の様子や映画への思いを、坂本監督にうかがいました。

――今作のオファーが届いたとき、どんな思いで受けとめたのでしょう?
坂本 初めはびっくりしました。「『文豪ストレイドッグス(以下、文スト)』を実写化したらおもしろいよね」って以前話していたこともあったので、まさかそれが自分のところにくるとは思っていませんでした。それから、 2.5次元舞台を実写化するというコンセプトが魅力的でした。メディアミックスというと、メディアごとに演者が変わったりもする場合もありますが、今までそのキャラクターたちを演じてきた舞台版のキャストたちと一緒に作品を作れるのは、強力な武器になります。

――「文豪ストレイドッグス」シリーズのどんな部分に魅力を感じていますか?
坂本 世界観や設定、もちろんアクションもおもしろいのですが、何よりキャラクターそれぞれが抱えている背景に惹かれました。シリアスとコメディ、アクションとドラマが絶妙なバランスで成り立っている作品だと思います。

――制作の序盤、本作の方向性はどのように定まっていったのでしょう?
坂本 原作のどの部分を実写化しましょうか、というところからスタートしました。さまざまな選択肢があったなかで、一本が独立した物語になっていて、これまでにアニメ化も舞台化もされていないストーリーということで「BEAST」に決まりました。そこに原作、アニメ版、舞台版のそれぞれのファンの方々にも喜んでいただけるような、さまざまなリンクを仕込んでいきました。同じ世界観、同じ魂で繋がっている作品群のひとつとして描きながら、実写ならではの表現をめざしました。

――実写化するうえで軸になると考えたのは?
坂本 1本の映画としての軸はやはり、芥川と敦のドラマをどう追っていくか、ですね。原作やアニメではじっくり話数をかけて積み上げられている部分なので、かなりハードルが高かったのですが、今回の物語における2人の背景や出会いをしっかり描いていきました。生身の人間が表現する、細やかな表情を逃さずにとらえる。その点においては、主演の橋本祥平くん、鳥越裕貴くんの2人をはじめ、キャストの皆さんの表現力、作品理解力に助けられました。自分のほうで演出を固めるのではなく、キャラクターとずっと向き合ってきた皆さんに自由に演じていただきながら、膨らましていきました。

――アクションシーンの鮮烈さにも心動かされます。
坂本 今回のアクションシーンの特徴のひとつは、長回しのカットが多くあることです。通常は細かくカット割りをして、カメラアングルを変えながらアクションを成立させていきます。長回しのアクションは、アクションスキルが高くないと成立しないからです。でも、舞台出演の多いキャストさんたちはアクションの経験が豊富で、身体能力も優れた人が多く、空間認識力も高い。そのおかげで、今作のアクションシーンは長回しにより生の迫力が感じられるものになりました。アクションの最中にも、キャラクターの心情を肌で感じることが出来ると思います。

――坂本監督が多く手がけられている特撮作品にも通じることですが、2.5次元的な世界を描くときには、リアリティの置き方が課題になってくると思います。本作ではどんなところにこだわられましたか?
坂本 リアリティのバランスは、プロデューサーの倉兼さんも一番気にされていたところだと思います。キャラクター感を損なわずに、でも、現実の町に馴染むトーンに落とし込んでいく。撮影もその後の仕上げ作業も、その境界を見つけていく作業になりました。また、撮影に舞台版の衣装やメイクの方々が参加してくださったのが、とても効いていると思います。舞台と実写では求められるディテールが違ってくるのですが、その差異を丁寧に埋めてくれました。舞台だと次々と場面転換があるので、演出で血糊を使用することは難しいと思いますが、映像ならそれが可能です。普段出来ないことなので、いかに血糊を美しく見せるか、楽しみながらノリノリでチャレンジしてくれましたね(笑)。

――異能力の発動をどう描くか、というのも大きなポイントでした。
坂本 舞台版を見て、ステージ上に展開される異能力エフェクトに驚かされたのですが、映像ではどう表現するのかが大きなチャレンジでした。今回、ビジュアルエフェクトをお願いしたのは、インドネシアの会社です。リモートでやりとりをしながら進めたのですが、お声がけした時点で、合成チームの皆さんは既にアニメの「文豪ストレイドッグス」を知っていましたね。最初のリモート会議のときには、すでに色々な資料を集めていて、異能力の種類や効果についても詳細なブレイクダウンを用意してくれていました。日本のアニメや特撮のファンが多く、皆さんものすごい熱意なんです。

――この作品に携わって、監督自身が受けた刺激とは?
坂本 やはり舞台で活躍している方々とがっつり一緒にお仕事ができたことが刺激的でした。新しい出会いもたくさんあり、純粋に楽しかったですね。作品がもつ引力により、各セクションそれぞれの「文スト」への愛情、情熱が結実して、作品をとてもいい方向に導いてくれたと思います。岩崎琢さんのすばらしい音楽もその一つです。編集を終えた映像にピッタリ合わせて作曲してくださりました。シークエンスに完全にマッチしているので、本当にかっこいいんです。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いいたします。
坂本 すでに大人気シリーズである「文スト」に、この映画がどんなニュアンスで加わっていくのかというのは、自分のなかでは楽しみでもあり不安でもあります。ミディアミックスで広がる「文スト」世界を楽しむにあたって、この作品が必要なひとつのピースとして受け止めていただけたなら光栄です! どうぞよろしくお願いします!

ツイート共鳴上映会開催決定!!!

ヨコハマの地で、運命に対峙しながら足掻くキャラクター達の姿に、心を揺さぶられるファンが続出した映画「文豪ストレイドッグス BEAST」。そんな皆さまの声にならない想いを共感し、銀幕上を必死に生きる彼らの心情に共鳴する──「ツイート共鳴上映会」の開催が決定しました。
本上映回では、ツイートしながら映画「文豪ストレイドッグス BEAST」を鑑賞することができます。誰かの感想をリアルタイムで受け止めて、あなたの想いも指先に乗せて届けてください。
姿は見えなくても其処には誰かが居ると感じられる、繋がることができる特別な上映回です。どうぞ全国のファンの皆さまとあなたとツイッター上で共鳴してください。
※上映中の発声や、立ち上がるなどの行為はお断りしております

【取材・文:ワダヒトミ】

■映画「文豪ストレイドッグス BEAST」
公開中

★1月25日(火)全国劇場にて「ツイート共鳴上映会」開催決定!!!
日時:1月25日(火) 18:30 の回
販売スケジュール:1月21日(金)24:00~順次販売開始
販売方法:劇場販売システムにて
販売料金:通常料金
※ムビチケ、前売券の使用可。各種割引、招待券等、通常上映に準じる。
購入枚数制限:なし

スタッフ:原作…角川ビーンズ文庫「文豪ストレイドッグス BEAST」/監督…坂本浩一/脚本…朝霧カフカ/音楽…岩崎琢/主題歌…GRANRODEO「時計回りのトルク」/配給…KADOKAWA
キャスト:芥川龍之介…橋本祥平/中島敦…鳥越裕貴/織田作之助…谷口賢志/太宰治…田淵累生/銀…紺野彩夏/泉鏡花…桑江咲菜/中原中也…植田圭輔/国木田独歩…輝馬/江戸川乱歩…長江崚行/谷崎潤一郎…桑野晃輔/宮沢賢治…堀之内仁/与謝野晶子…広川碧/谷崎ナオミ…齋藤明里/澁澤龍彦…村田充/フョードル・D…岸本勇太/院長…南圭介/坂口安吾…荒木宏文

リンク:映画「文豪ストレイドッグス BEAST」公式サイト
    映画「文豪ストレイドッグス BEAST」ツイート共鳴上映会実施劇場
    公式Twitter・@bungo_movie

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