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TVアニメ「ヒナまつり」の魅力に迫るインタビュー連載、第12回。原作者の大武政夫さんとアニメ監督の及川啓さんの話はヒートアップ! 原作やアニメのシリーズ構成の秘話も明かされた注目のインタビューをどうぞ!
――原作も14巻まで出ている人気作品ですし、アニメ化にあたってのエピソードの取捨選択も苦労されたのではないかと思うのですが。
大武:原作の分量があるから、何を入れて何を削るかは相当話し合いましたね。
及川:まず(大武)先生にどうしても入れたいエピソードを言ってもらい、次に僕の入れたいエピソードを言って、その上でシリーズ構成の大知(慶一郎)さんにシナリオを書いていただきました。ちなみに私はマオの無人島のエピソードを入れたいと言いましたね。
大武:大知さんは、最初「いやー無理じゃないですか」って言ってましたね(笑)。
及川:そうですね(苦笑)。ですがあのエピソードはマオの一人芝居がシュールで好きでしたので入れさせていただきました。映像にするとあのシュールさが、より引き立つと思いましたので。
――監督がマオファンだとお聞きしていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。
及川:マオは行動が読めなくて、次は何をやってくれるんだろうとワクワクするので、好きですね。ただマオのエピソードを選んだ理由はとてもアニメ向きなお話と判断したからなんですけどね…(苦笑)。
――アニメ冒頭をあのシーンから始めた理由は?
及川:冒頭でマオを出した理由は、「ヒナまつり」というタイトルを知らない方に、「続きを見たい」と思ってもらうインパクトを残したかったからです。アニメが始まって1分でそう思ってもらえるために、あえてカンフーのアクションとシュールなギャグがあるあのシーンを入れました。アバンにあそこを持ってきて喜んでくれた人は、きっと続きも喜んでくれるんだろうな~って。
大武:漫画を読んでいない人が「スマートフォンがー!」で笑ったみたいな意見を見ると、監督の嗅覚すげーなーって思いましたね。
及川:でも正直、緊張しました。原作通りでいくと、当然冒頭は違いますから。原作を調整するからには、見てくれる人が喜んでくれないといけないので。
大武:放送が始まる前は、ちょっと弱気になっていましたもんね。「もしもアバンのマオで叩かれたら全部僕のせいなんで」って。
及川:言ってました(笑)。まず第1弾PVを作らせてもらった時、視聴者さんから「マオが出るところまで話が進むのが不安」などの意見をいただきまして……自分が原作を本当に面白いと思っているからこそ、その意見を聞くと不安を感じました。原作ファンの方はアニメーションを作る上でとても大切ですからね。
大武:でも僕は監督の熱意がめちゃくちゃ伝わったんですよ。マオのエピソードを入れるか入れないかで、全員がどうしようと思っている時に、監督が「入れたい!」って思いをぶつけてくれた。その時に「こんなに気持ちが入ってくれるんだったら任せられる」というか、ただ受けた仕事じゃない、本当に好きで携わってくれているんだなって思いました。
――大武さんはこのエピソードを入れたいという希望は?
大武:僕がぜひ入れてほしいと言ったのは、第9話のコンクリドラム缶の回と、「おいおい瞬殺だよ」が聞ける第11話の『血と暴力と金に飢えた男』と、第7話のヒナが生徒会選挙に立候補する回。この3つはマストでと。
及川:あとマミちゃんの「ママ」エピソードを入れようって。
大武:そうだ。第8話のマミちゃんのエピソードも入れてほしいって言いましたね。あれは「ヒナまつり」史上、一番早くネームが通ったんで縁起のいい回なんです。
一同:(笑)。
――アニメの二期があるとしたら、どんなエピソードをやりたいですか?
大武:壺を作るやつとか、瞳ちゃんがフロリダに行く話。あとアンズが学校に行く話も見たいですね。
及川:壺とフロリダがやりたいですね(笑)。あとはJKオプションの回がやりたいです(笑)。
大武:でもアニメで見るんだったら、やっぱりヤクザの抗争で空を飛びまくるところですかね。あれはアニメのほうが絶対映えると思います。
及川:あのエピソードはアニメにすると見ごたえがあると思います(笑)。ちなみにキーアニメーターの方に「消しゴムの回(原作第42話)いつやるんですか?」って聞かれて、やらないって言ったら「アレやらないとか意味わからない」って怒られました(笑)。
――大武先生的に描きやすかったり、好きなキャラクターはいますか?
大武:巻き込まれるタイプの人たちの話は描きやすいですけど、好きなキャラクターだと、最近はヒナが1位になってきます。新田さんみたいな気持ちになってるんですね僕。最初はヒナが描きづらくて……。喋んない、動かない、何もしないから話が進まない。何を考えてんのかもわかんなくて苦労したんすけど、徐々に口数が増えていって。
一同:(笑)。
大武:そしたら読者の方からも「ヒナが成長している」みたいに言われて。「……オッ。確かに」って思いました(笑)。何も知らなかった子が、少しずつ現世に溶け込んでいる感が出てる。そしたら徐々に愛着も湧いてきて。
――最後にファンの方にメッセージをお願いします。
大武:見てくれた人、ありがとうございます(照)。こうやって漫画を世に出しているってことは、色んな人になるべく読んでほしいって気持ちがあるので、アニメで「ヒナまつり」を知ってもらって、漫画も楽しんでもらえたら一番幸せです。
及川:この作品は本当に原作が大好きなスタッフの人たちに作っていただいているので、良い映像になっていると思います。先生と一緒ですけれど、アニメーションを見て興味を持ってくれたのなら、原作も読んで、より深めてくれると嬉しいなと思います。見ていただいてありがとうございます。
【取材・文:佐藤京一】