12月13日(金)より全国劇場公開となるアニメーション映画「僕らの7日間戦争」。シリーズ発行部数2000万部超の大ヒットシリーズがアニメーションとして立ち上がります。
今回WebNewtypeでは、村野佑太監督と脚本の大河内一楼さんに取材を行いました。
どのようにして“今”の物語に整えられていったのか。まずは子供たちが戦う“敵”をどうするのか、というお話。
前編からお楽しみください。
――まずは企画がお2人それぞれのところに来た時の率直なお気持ちはどのようなものでしたか?
村野 子供の頃から知っている有名なタイトルですから、監督をやらせていただけるかも、と知った時は「ぜひやりたいです」と伝えました。こんなに名作で映画の監督ができるなんて、なかなかあるものではありませんから。でも同時に本当に今、これを映画化できるのか、大丈夫か、という不安も大きかったです。
大河内 僕は「広い作品になれるといいな」と思いました。原作は、長く読みつづけられているベストセラーで、実写映画もヒットしている。それはつまり、この作品には、広くて強い快楽が備わっているということですから。
――お2人にはどのようなものにしてほしいというオーダーがあったのでしょうか。
村野 「ぼくらの七日間戦争」なので、“大人と子供”というところは描いてほしいということ。また、宗田先生が小説で書かれていた“明るく終わる”ことは外さないでほしいということ。また、主人公を高校生にしようと。この3つですね。逆に言えばそれを押さえていれば、後は自由につくらせていただけるという環境でした。
――物語の軸はどのように考えられたのでしょう。
大河内 敵をどう設定するかが大きかったですね。かつては管理教育が敵だったけど、今はそういう時代じゃない。今の子供たちにとっての敵って……自分かな? そういう流れでした。
村野 悪い大人を退治するという時の“大人”って何なのか。それは存在としての大人と、もうひとつには、大人になっていく自分自身への反発心、原作にはその2つとも含まれていたと思うんですね。特に今回は高校生ということで、より大人に近い立場から、原作のもつ部分をつくり出せるんじゃないかということを、大河内さんと話し合わせていただきました。
――マレットというタイ人の子供の存在も気になります。どういった流れでこの子を登場させようと考えられたのでしょうか。
12月13日より公開される「ぼくらの7日間戦争」より(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
村野 原作では“ぼくら”以外に、帰還兵のおじいちゃんからいろいろとアドバイスをもらったりするんですよね。自分たちが知らないことを伝えてくれるというか。今回、主人公たちが高校生になったことで、別の要素を入れるとしたら何だろうと考えて、子供世代の視点も入れようとなりました。主人公たち自身もマレットから見れば大人に見えてしまうんじゃないか。そういう関係が描き出せたなと思います。
大河内 マレットがいると躍動感とか賑やかさが出るんですよね。大人側のキャラクターもそうですが、冷静だったり、騒がしかったりといろいろなタイプのキャラクターを置いています。たぶん、思い入れられるキャラクターをひとりは捜せるんじゃないでしょうか。本多は、監督の思い入れがすごく入ってるんですよね。
村野 そうですね(笑)。
大河内 脚本から絵コンテに上がってきた時に、本多は監督だなって伝わってきました(笑)。
村野 絵コンテでかなり膨らませました。
12月13日より公開される「ぼくらの7日間戦争」より(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
12月13日より公開される「ぼくらの7日間戦争」より (C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
――大河内さんはこれまでも「ルパン三世 PART5」や「DEVILMAN crybaby」など、名作のアップデート版に関わられてきました。今回もその系譜に入るかと思いますが、どういったところに気を遣われましたか?
大河内 これは精神的な話ですけど、原作をちゃんと愛するということ。作品を好きになって、「ここが好きだな」という気持ちをもっていないと作品を膨らませたときにうまく行かないんです。これはかつて、僕がノベライズの仕事をしていた時からの実感です。この「ぼくらの七日間戦争」でも同じで、まず作品を見て、好きになって、その好きをどう再現するか、どう膨らませるかを考えていきました。
――今回、脚本を読んでいて、大河内さんの「ぼくらの七日間戦争」や宗田先生への思いをうかがえた気がします。
大河内 宗田先生もそうだし、この作品を愛している人たちのためにも、原作を大事にしたいと思いました。宮沢りえさんに出演していただいたのも、そういうことだと思います。
――'88年公開の映画で主人公・中山ひとみを演じた宮沢りえさんが同じ役で出演、これはすごいなあと思いました。
大河内 脚本を書いている時、宮沢さんが演じてくれたらいいな、と願いながら書いていました。その脚本を受けて、いろいろな人が努力して、宮沢りえさんの出演が実現しているんだと思います。彼女のおかげで、30年前の映画と今回の映画が、実写とアニメと形を変えても、つながることができました。これはとても幸運で、すてきなことだと思います。
12月13日より公開される「ぼくらの7日間戦争」より(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
12月13日より公開される「ぼくらの7日間戦争」より(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
12月13日より公開される「ぼくらの7日間戦争」より(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
12月13日より公開される「ぼくらの7日間戦争」より(C)2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
【取材・文:細川洋平】
ぼくらの7日間戦争
●12月13日(金)より全国ロードショー
原作:宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川つばさ文庫・角川文庫/KADOKAWA刊)
スタッフ:監督…村野佑太/脚本…大河内一楼/キャラクター原案…けーしん/キャラクターデザイン・総作画監督…清水洋/アニメーション制作…亜細亜堂
キャスト:鈴原守…北村匠海/千代野綾…芳根京子/中山ひとみ…宮沢りえ(特別出演)/山咲香織…潘めぐみ/緒形壮馬…鈴木達央/本庄博人…大塚剛央/阿久津紗希…道井悠/マレット…小市眞琴/本多政彦…櫻井孝宏
リンク:
劇場アニメ「ぼくらの7日間戦争」公式サイト
公式Twitter・@7dayswar_movie