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瀬戸麻沙美・早見沙織ら出演の“少しリッチな紙芝居”『ノクターンブギ』森田と純平監督インタビュー【前編】

7月からGYAO!・YouTubeで配信されている完全リモートショートアニメ『ノクターンブギ』。2018年の衝撃作『LOST SONG』を手掛けた森田と純平監督の新作であるこの作品は、前作から一転、モンスターばかり集まるシェアハウスを舞台にしたシチュエーションコメディです。キャストには瀬戸麻沙美さんや山下誠一郎さん、早見沙織さんなどが名を連ね、少し不思議な若者たちの愉快な会話劇を展開中。今回はそんな『ノクターンブギ』を“ひとり”で制作する森田と純平監督に、本作の制作方法に倣ってリモートでインタビュー。前編では本作の成り立ちを中心に語っていただきました。

――まず2019年2月にあったイベント「LOST SONG~星歌祭~」からこの『ノクターンブギ』まで、森田と純平監督は何をされていたか教えてください。

森田と純平(以下、「森田と」) 『LOST SONG』の頃、僕は株式会社MAGES.に所属してそこの色々な作品に企画として入っていたんですけど、今は独立してStory Effectという株式会社を設立して代表取締役をやっています。

――そんな中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行って、この『ノクターンブギ』を作ることになったと。

森田と そうです。ただ『ノクターンブギ』の構想自体は、1年くらい前からあってほかの仕事もしながらいろいろと考えていました。それで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でエンタメがストップしていくさまを見たり、周囲の人々にストレスが溜まっているのを感じたりして「これは何か作らないと」と思い『ノクターンブギ』をスタートさせました。すごくミニマムな規模で作れそうな作品だったので、ちょうどいいなと。

――『ノクターンブギ』はどういった部分を面白さの中心として考えて作られ始めたのでしょうか?

森田と 会話劇ですね。今回は過去作のようなアニメーションという位置付けではなく、ちょっとリッチな紙芝居くらいの映像なので、変なキャラクター達の会話を、ながら見や極端な話を言うと聴いているだけでいいくらい、気軽に楽しんでほしいと思っています。

――1話あたりの時間が短いのも特徴ですよね。しかも7分くらいあるかと思えば、3分のものもあったりしてフレキシブル。

森田と 尺はあえて決めず、その話数にとって一番いい尺でやっています。とは言え基本的には短いものにしようと最初から決めていました。本当に隙間時間にスマホで観られるくらいのものを目指したかったんです。

――登場キャラクターをモンスターばかりにした理由は?

森田と もちろん人間だけでもコメディはできるんですけど、どうせ実写でないものを作るなら、滅茶苦茶できるほうがいいなと思ってそうしました。それに「モンスターが互いに正体を隠しながら共同生活する」というシチュエーションだけで何かドラマが起きそうじゃないですか。

――モンスターという設定のおかげで、物語も作りやすいと。

森田と そうです。例えば大噛美瑠衣ちゃんという狼女は丸い物を見るとすぐ変身しちゃう。普通の狼男なら満月を見て変身しますけど、彼女はもう5円玉見るだけで「危ない危ない」なんて言っちゃうレベルで狼女なんです。だからもう、設定だけで、いくらでもギャグもドラマも作れるんです。

――コメディ作品というのも、森田と純平監督のこれまでの作風を考えると意外でした。『LOST SONG』やその前にシリーズ構成として参加された「Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-」はシリアス路線だったので。

森田と 練り込まれたストーリーやシリアスなものも好きなのでやっていますけど、シチュエーションコメディもやりたかったんですよ。『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』(2007年から2019年まで放送された海外ドラマ)とかもおバカで大好きなので。同じ場所で、同じキャラクター達が日常を紡いでいって、それを観るだけで楽しいやつ。そこに僕らしい仕掛けを入れれば、オリジナリティのあるものができるかなと。

――なるほど。コメディ方面でほかに影響を受けているものはありますか?

森田と マンガだと、うすた京介先生の作品とかでしょうか。高校時代は『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』のセリフだけで会話していたくらい好きで、ワードセンスに影響を受けているかもしれません。あとコメディと言えば、本作にも参加していただいている小山のアニキ(小山剛志)が「監督、コメディ作品をやったらいいと思うよ」みたいなことよく言ってくれてたんですよ。声優のみなさんとご飯行った時に、よく僕が笑わせていたからでしょうけど(笑)。それをきっかけに本作を作ったというわけではないですが、結果的にその声に応えられましたね。

――小山さんの話が出たので、キャスト陣について教えてください。癖の強いキャラクターと見事にマッチした声優さんが揃っていますが、元々キャストありきでキャラクターを作られたのでしょうか?

森田と いえ、先にキャラクターがいて、そこからキャストを選びました。そもそもキャラクターは1年前の構想段階で考えていたので。

――そうなんですね。ちなみに参加されているキャストだと、夢仲魔理役の瀬戸麻沙美さんや久結霧矢役の山下誠一郎さんなど、多くはこれまでの作品で関わられた方ばかりで納得感がありました。語り部の田代哲哉さんも『LOST SONG』に毎回出られていた方ですし。

森田と そうですね。彼は器用で色んな役ができて、しかも単純に声質も好きでナレーションの技術がすごくあるので、『LOST SONG』ではPVのナレーションを全部お願いしていたんです。だから今回は語り部として参加してもらいました。

――ただ、井戸柳たま子役の早見沙織さんだけが森田と純平監督とのつながりがわからなくて。

森田と 早見さんは、少し前に僕が監督した朗読劇に出ていただいたんですけど、彼女のお芝居に感銘を受けて「またこの人と仕事したいな」と思ったんです。その朗読劇はすごく真面目というか泣ける内容だったので、そんな彼女に少し抜けたキャラクターをやってほしいと思いお声がけしました。

――なるほど。本作はすべてリモートの抜き録り(各キャラクターのセリフを抜き出し、声優ごとに収録する手法)で収録しているそうですが、どういった流れで作られているのでしょうか?

森田と まずZoomで僕と役者さんが集まって脚本を読み合わせる本読みを毎回します。そこで芝居の確認やキャラクター性の調整をしたうえで、1回通して掛け合いをする。というのも掛け合いが多い作品なので、完全に抜き録りだけにしちゃうと微妙に合わないんですよ。だから事前に掛け合いをしてもらうことで、「相手はああいう芝居で来るんだな」と掴んでもらう必要があるんです。その後はそれぞれ収録した音声データを送ってもらって、僕がそれらを編集しています。

――抜き録りだけにしては随分自然な会話だと感じていまいたが、本読みをしていたんですね。

森田と キャストと本読みってアニメではあまりやりませんが、実写では必ずやっていて、僕はやったほうが絶対にいいなと思っています。チームワークも生まれますし、キャストのみなさんもゲラゲラ笑ったりして楽しんでくれているようです。

――変な質問ですが、役者さんによって収録する環境が違うじゃないですか。それを同じような音質で録るコツとかあるのでしょうか?

森田と 仰る通り全員まったく環境が違うので、調整は超大変です(笑)。自分のことだからいいますけど、音声に関しては正直まだ改善の余地があると思っていて、でもひとりでやるには今の状態が限界で。役者さんも「マイクでこうやるほうがいいんじゃない?」「吸音材買ったほうがいい」なんてディスカッションしながらやっていただいているんですけど。

――仮に全員に同じ機材を与えたとしても、何か違いは生まれるんでしょうね。

森田と 機材だけじゃなくて、部屋の造りや反響、時間帯、空調だったりでも変わりますから。

――話を聞いていて、アフレコなどが行われる収録スタジオってすごいと改めて感じました。

森田と すごいです。山下君も「普段、僕らはなんて贅沢な環境で生きていたんだ」と言っていましたけど、本当にそう思います。

【取材・文:はるのおと】

■「ノクターンブギ」
GYAO!・YouTubeにて配信中

スタッフ:原作・脚本・監督…森田と純平/音楽:白戸佑輔
キャスト;夢仲魔理…瀬戸麻沙美/久結霧矢…山下誠一郎/大噛美瑠衣…吉田仁美/桜来 清…鈴木裕斗/井戸柳たま子…早見沙織/影山狩宇…小山剛志/語り部…田代哲哉

クラウドファンディングにより制作決定したノクターンブギのオリジナルソング
作詞:山下誠一郎 作曲:白戸佑輔
「今宵はブギ―・ラップ」
10月後半配信予定!

リンク:「ノクターンブギ」公式サイト
    「ノクターンブギ」公式YouTubeチャンネル
    「ノクターンブギ」作品応援&クラウドファンディング
    公式Twitter・@MORITAtoJUMPEI
    「ノクターンブギ」公式Instagram  

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