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メインキャラは全員悪玉!? ピカレスクストーリーいよいよ開幕! 戦争によって分裂し、カントウの属国となったカンサイで「アクダマ」と呼ばれる犯罪者たちが駆け巡る。
オリジナルTVアニメ作品「アクダマドライブ」が絶賛オンエア中です。この作品を生み出した小高和剛さん(ストーリー原案)と、studioぴえろの富永禎彦プロデューサーが、このオリジナル作品に込めた思いを語ってくださいました。
――「アクダマドライブ」で印象的なのは登場するキャラクターたちがコードネームというか、職業名で呼ばれていることですね。
小高 僕がプロットを書く時は、キャラクターをあだ名で書くんですね。今回もプロットに出てくる登場人物を「殺人鬼」とか、あだ名で書いていたんですけど、そのままシナリオ作業が進んでしまって。スタッフと「いまさら名前を付ける必要もないかもしれないね」と。映画「レザボア・ドッグス」も色で相手のことを呼んでましたし。悪いヤツラって自分の名前を明かさないでしょうしね。
――実際にアニメで、アクダマたちを動かしてみて、お2人がより魅力的になったなと感じたのはどなたでしたか。
富永 「チンピラ」と「喧嘩屋」ですね。シナリオ上でも、2人が絡むシーンはおもしろかったんですけど、実際にアフレコをしてみると、すごくいいバランスになって。とても印象的なシーンになりました。
――「チンピラ」は木村昴さん、「喧嘩屋」は武内駿輔さんが演じていますね。
富永 お2人とも年齢的には近いですし、若手なんですが、声だけを聞くとすごくベテラン感があって、味があるんです。
小高 オリジナル作品の難しいところは、どうしても活字だけでつくっていると、キャラクターがふわっとしてしまうところがあるんですよね。でも、声が付くことでバシッとキャラクター性がクリアになっていく。キャストさんの声の力が、本当に大きいなと思いますね。
――声が付いたことで、小高さんの印象に残ったキャラクターはどなたですか。
小高 特に印象的だったのは「一般人」です。「一般人」は「特徴がないことが特徴」というキャラクターなのですが、黒沢ともよさんがすごく上手くて、その特徴のなさを見事に表現されているんです。あと「殺人鬼」役の櫻井(孝宏)さんもすばらしいですね。正直、櫻井さんというと、こういう役柄を演じることも少なくないと思うんです。ところが今回は「こう来るか!?」という、僕らの先入観を覆すようなお芝居をしてくださって。とても新鮮な印象がありました。
富永 そういう意味では「医者」の緒方恵美さんもすごく新鮮なお芝居をしてくださっていますよね。「こうくるのか!」と毎回楽しませてもらっています。
――キャストの皆さんによって、さらにキャラクターの魅力が増しているんですね。あわせて、今回のスタッフの皆さんのお話も伺いたいです。今回の監督の田口智久さんを起用したのは何がきっかけでしたか。
富永 田口さんと僕は長い付き合いで、僕がプロデューサーを務めている作品でも、各話演出を担当してくださったんです(「THE UNLIMITED 兵部京介」第2、8、12話など)。そうしたら、すぐに監督として活動されるようになって。いつもアクションの描き方が上手だなと思っていました。あと、田口さんは「光と影」の表現が上手いんですよね。今回、サイバーパンク的な世界観をつくるにあたって、暗い画面づくりが上手い方にお願いしたいなと思っていて。アクションと画面づくりの上手い田口さんにお願いしたんです。
――美術もとても独特なインパクトがあります。美術設定も含め、オリジナルな「レトロサイバーパンク」の世界はどのようにおつくりになっていったんでしょうか。
富永 今回は最初に美術設定(青木薫が担当)から手をつけたんです。「レトロフューチャー」や「レトロサイバーパンク」ってことばで言うのは簡単なんですが、具体的なビジュアルに落とし込むのは難しい。オリジナルの世界観ができあがるまで、かなり試行錯誤しましたね。でも、美術ボード(美術監督・谷岡善王が描く美術の見本)をいくつか描いてもらううちに、ハンコセンターのような独特な建物が出てきて、一発でOKになりましたね。
――そして今回は音楽を會田茂一さんが担当されています。會田さんはアーティストとして活動するだけでなく、TVドラマ(実写)「池袋ウエストゲートパーク」を担当するなど、とてもインパクトのある音楽を書かれる方ですよね。
富永 今回は「尖った音楽(劇伴)にしたい」と思っていたんです。會田さんはNBCユニバーサルさんからご提案を受けて、監督とディスカッションしたうえで、お願いすることにしました。會田さんはもともとギタリストでもありますし、尖った音楽をおつくりいただいていますね。
小高 僕はもともと會田さんが参加していたEL-MALOというバンドのファンだったんです。今回、音楽を會田さんが担当されていると知らなくて、PVができあがった時に會田さんのクレジットを見て、すごく驚きました。この作品をやっていて一番うれしかった瞬間です。
――「アクダマドライブ」の今後の展開が楽しみです。さて、最後にお2人からこの作品の見どころをお聞かせください。
小高 すごく独特で、ほかにかえがきかない作品になっているなと思います。先の読めない展開は、オリジナル作品の最大の魅力だと思いますし、今後、皆さんがどんな反応をするのか楽しみですね。
富永 第1話から最終話まで予想がつかないところまでいくので、どこまでいくのか、どこまでやるのか楽しんでもらえたらと思います。オリジナル作品をつくることは非常に大変ですが、そのぶん楽しんで見ていただけるものになっているんじゃないかと思います。ぜひ、最終話までアクダマたちの暴走を追いかけてもらえるとうれしいです。
【取材・文:志田英邦】