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原作ファンとしての妄想映像が、自分の首をしめる結果に?——「陰の実力者になりたくて!」監督・中西和也インタビュー

自身は表舞台に出ず、世を忍ぶ〝シャドウ〟として暗躍する主人公・シドを描いた異世界バトルファンタジー「陰の実力者になりたくて!」(以下「陰実」)。'22年10月よりTVアニメ第1期全20話が放送されると、魅力的なヒロインたちや迫力のバトルシーンが大きな反響を呼んで注目作に。この10月からは満を持して第2期が放送中だ。今回は、第1期から引き続いて監督を務めている中西和也に、アニメ制作の裏側について語ってもらった。


©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン


――話は少しさかのぼりますが、第1期の監督オファーを受けた際のお気持ちをお聞かせください。
中西 当時、ちょうど別作品でキャリア初のキャラクターデザインの仕事が本格的に始まるという状況だったんです。「これから数ヶ月は人生でいちばん頑張らないといけないな」と気合いを入れたタイミングだっただけに、さらにその先に〝初監督〟が待ち構えていると思うと……とても胃が痛くなりました。でも同時にこれはもうやるしかないなと、覚悟が決まった気もします。


©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン


――もともと原作をお読みになっていたそうですね。
中西 そうなんです。いちファンとして読んでいて、この作品はいつかアニメ化するだろうなと思っていました。まさか自分が監督をすることになるとは夢にも思っていませんでしたが、頭のなかでは「アニメ化したらこんな感じの映像かな?」って妄想したりもしていて。その妄想の映像がわりとハイクオリティーだったので、いざ自分が監督になってみたら、そのイメージに近づけるのに苦労しました。結果的に自分の首を絞めることになりました。
――原作のどんなところに魅力を感じていましたか?
中西 うまく言えないんですけど、文章のリズムやテンポ感が好きなんですよね。もちろんキャラクターや世界観なども大切だとは思いますけど、何よりも読み終わったときに素直に「ああ、おもしろかった!」と思えるかが大切なんです。「陰実」は、その意味ですごくしっくりと来たんですよ。あともうひとつ、第2期で描かれるとあるエピソードが好きで、そこを読んでいるときにアニメ化を確信したくらいなんです。今回ついにそこを描けるので、個人的にもとてもワクワクしています。「これぞ『陰実』!」っていうシーンが出てきますので、楽しみにしていてください。


©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン


――中西さんは「陰実」が初監督ですが、第1期と比べると、第2期は余裕のようなものは生まれましたか?
中西 うーん……ないです。現場は第1期からノンストップで動き続けているので、個人的にはただただ必死に走り続けている感覚です。ただ、とは言えずっと同じスタッフでつくりつづけているので、話数を重ねるごとに少しづつこなれてきた感じはあると思います。部署によっては新しいことに挑戦するだけの余裕も出てきているので、全体として第1期と比べて少しでもリッチなフィルムにできればいいなと思いながら頑張っているところです。
――第2期では新キャラクターも登場しますし、第1期とはまた違う見どころもありそうですね。
中西 そうですね。「原作の読後感を大切にする」という基本的な制作姿勢は変わっていませんが、そのうえで魅力的な新キャラもたくさん登場しますし、さらには各ヒロインの当番回のようなエピソードもあるので、楽しんでいただけると思います。「陰実」の基本ルールとして、当番回のヒロインはだいたいひどい目に遭うんですけど、まあ先入観を持たずに本編をご覧いただければと思います。


©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン


――キャスト陣へのディレクションについては、第1期から振り返ってみていかがですか?
中西 みなさんキャラクターをしっかりと掴んでくださっているので、第1期から通じてディレクションは少ないほうだと思います。もちろん細かい部分で修正をお願いすることはありますけど、基本的にはご本人のプランを生かす形で、そこはキャストさんたちにすごく助けられているなと思います。
――「陰実」はキャスト陣の豪華さも目を見張るものがありますよね。
中西 そうですよね。そこは私が初監督で音響周りのことに疎いということもあり、なるべく実力の確かなキャストさんにお願いしたいという理由もあったんです。最初にキャストさんの候補リストを見せていただき、それに対して私の希望をお伝えしたんですけど、みなさん有名な方ばかりだったので、まさかその通りになるわけはないだろうと思っていたら、奇跡的に希望通りになったんですよ。慣れない監督業は大変でしたが、アフレコ面ではかなり楽をさせていただけたと思います。


©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン


――実際にここまで監督をやってみて、とくにどんなことが大変でしたか?
中西 スタッフさんとのコミュニケーションじゃないでしょうか。私の中でやりたいことは固まっていても、それを周囲にどう伝えればいいのかが分からなくて。もともと人と関わるのが苦手という理由でアニメーターをやっていた人間なので、やっぱりそこはいちばん大変ですね。
――そうだったんですね。では監督業はもうコリゴリだったり?
中西 いえ、それがそんなこともないんです。これまでは自分が担当する原画だけを見ていればいいという感覚だったんですけど、監督になると最終的なフィルムの完成度を基準に考えられるようになりますし、とにかく視野が広がったのは確実で、得るものも大きいなと感じています。
――では、今後も監督業はやっていきたいですか?
中西 おもしろい仕事だとは思いますが、まだ「陰実」の作業で精いっぱいで、今はこの先を考える余裕はないというのが正直なところですね。そもそも監督業はオファーが来ないとできないですから、「陰実」第2期の評価次第という気もしますし。とにかく今は「陰実」に全力を尽くすだけです。
――では最後に、ファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。
中西 私はもともと監督である以前に原作のファンでもあるので、アニメは原作を読んでもらうきっかけのツールとして制作しているところもあるんです。ですので、アニメを観て気になった方はぜひ原作も読んでみてください。そうすれば原作も長く続くことになり、結果としてまたアニメがつくられる可能性もあるのかなと思います。みんなで「陰実」、盛り上げていきましょう。よろしくお願いします!

【取材・文】岡本大介

■TVアニメ「陰の実力者になりたくて! 2nd season」
放送:TOKYO MX…毎週水曜  23:30~
配信:各動画配信サービスで配信中

キャスト:シド・カゲノー/シャドウ…山下誠一郎/ユキメ…伊藤静/ジョン・スミス…福山潤/月丹…浪川大輔/ガーター・キクチ…茶風林/アルファ…瀬戸麻沙美/ベータ…水瀬いのり/ガンマ…三森すずこ/デルタ…ファイルーズあい/イプシロン…金元寿子/ゼータ…朝井彩加/イータ…近藤玲奈/ラムダ…長谷川育美/ニュー…内田真礼/カイ…南真由/オメガ…前川涼子/559…伊藤美来/664…富田美憂/665…羊宮妃那/666…白石晴香

スタッフ:原作…逢沢大介(「陰の実力者になりたくて!/KADOKAWA刊」)/キャラクター原案…東西/監督…中西和也/シリーズ構成・脚本…加藤還一/キャラクターデザイン…飯野まこと/美術監督…李凡善/色彩設計…田中直人、岡崎順子/プロップデザイン…北原大地/撮影監督…廣岡岳/3DCG監督…濱村敏郎/編集…坪根健太郎/音楽…末廣健一郎/音楽製作…KADOKAWA/音響監督…明田川仁/音響制作…マジックカプセル/アニメーションプロデューサー…中村浩士/アニメーション制作…Nexus/製作…シャドウガーデン

リンク:TVアニメ「陰の実力者になりたくて!」公式サイト
    TVアニメ「陰の実力者になりたくて」公式X(旧Twitter)・@Shadowgarden_PR

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