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毎年この作品のことを思い出してもらえるような、長く愛されるタイトルに――「ミギとダリ」監督・まんきゅう最終回後インタビュー

©佐野菜見・KADOKAWA/ビーバーズ


最終回を迎えたTVアニメ「ミギとダリ」。現在発売中のニュータイプ1月号では、監督のまんきゅうさんにお話をうかがい特集を組みました。その時に本編がすべて放送されないとお話できないことも聞けたので、放送を終えた今、追加でインタビューを掲載します。


©佐野菜見・KADOKAWA/ビーバーズ


――「ミギとダリ」は、復讐心をもつミギとダリだけではなく、キャラクター全員に不穏さがつきまといます。一方で、完全な悪人としても描かれていません。
まんきゅう それは佐野(菜見)先生のキャラクター造形の巧みさだと思います。どのキャラも(読者から)少し俯瞰で見えるように設計されていて、いろんな面がある。それをアニメでいかに忠実に再現できるかを考えました。

――主軸となっているのはミギとダリの成長物語ですが、中盤から最終話にかけては、一条家の玲子と、ミギとダリの母であるメトリーとの関係性がクローズアップされていきます。
まんきゅう ふたりの関係はすごく複雑で重いものです。メトリーはちょっとおマヌケで、かつひょうきんなところもある人間ですが、完璧な玲子に対して不完全な存在。だけど、そんなメトリーが瑛(あきら)に愛されてしまうという現実が起きてしまった。一方で、メトリーに対する玲子の言動の軸が何なのかは、かなりスタッフとも話し合いました。特に、玲子の笑みに潜む感情――メトリーが死んだとき、瑛二の出生の秘密を知る者がいなくなったことにスッキリして笑っているのか、もう後戻りできなくなってしまった自分の運命を卑下して笑っているのか――をどのように描写するのかは慎重に考えていきましたね。


©佐野菜見・KADOKAWA/ビーバーズ


――今回のアニメでは、結果的にどちらの感情を描いたのでしょうか?
まんきゅう 後者に寄り添って表現したところもありますね。例えば、玲子が隠し部屋にパパ(瑛)と華怜、丸太などを閉じ込めて「みなさんごきげよう」と家を去ろうとするシーンがあります。そのとき、玲子の目から黒い涙がスーッと落ちるカットを入れました。いつも完璧だった玲子のメイクにほころびが生じて、マスカラが落ちる。もう元の人生には戻れないという彼女の境遇を意図しています。

――そうした関係を表情やレイアウトで表現されているのが魅力でもありますね。
まんきゅう そこは総作画監督にも入ってくださったキャラクターデザインの西畑あゆみさんの力も大きいですし、副監督の榎本(守)さんも現場をまとめてくださっていて、私が「このクオリティラインを超えたらOKです」と提示した部分を超えてこだわってくださいました。そういった作画や効果も機能したと思います。


©佐野菜見・KADOKAWA/ビーバーズ


――最終話となる第13話は、原作にあるエピローグパートをじっくりと見せています。
まんきゅう 原作でもページ数を使ってしっかり描いてありましたし、ミギとダリの未来を大事にしたいという意思が伝わってきました。特に数年後のパートは、製作会社のTIME・加藤貴大プロデューサーから、「まるまるCパートを使うのはどうでしょう」と提案がありました。なので、Aパート、Bパート、エンディングのあとに15分くらいのCパートを付けました。これは原作に倣って、ふたりの将来に重きを置くという決断ですね。色味も、もう不穏なことが起きないので、最後のパートは2トーンくらい明るくしています。


©佐野菜見・KADOKAWA/ビーバーズ


――映像にする上で変更した演出などはありましたか?
まんきゅう 原作だと、ラストシーンでみっちゃんの霊が現れて、園山家の家具の下にたまったホコリに「Fin」という文字を書くんです。ホコリっぽいところで育った彼らを表すカットなのですが、アニメでは、ダリが乗った電車が過ぎ去ったあと、線路脇にみっちゃんの霊が現れて「Fin」と書いたことにしています。そのほうが、ふたりの未来が明るいものとして見えるかなと。

――今回、つくり終えてみての感想はいかがですか?
まんきゅう 実はまだ最終話を制作している最中ではありますが……一回目のラッシュ映像(チェック用に制作される仮の映像)を見たときに……もちろんエラーもミスも多いんですけど、家でチェックしていたらボロボロ泣いちゃって。それくらい感動したのはありましたね。

――監督としても最終の仕上がりが楽しみであると。
まんきゅう そうですね。最終回の放送がちょうどクリスマスに終わるので、毎年、この作品のことを思い出してもらえるような、長く愛されるタイトルになれば良いなと思っています。

――ちなみに、本作の主役である双子のミギとダリですが、分け目以外のところで、混同を避けるために行った工夫はありますか?
まんきゅう シンプルに画面の右側にいるのがミギで、左側にダリがいます。序盤から中盤までは大体8割くらいのカットでその設定にしていますね。これは本当に些細な部分ですけど、第1話でミギとダリがそれぞれひとりで画面の中央に映るとき、ミギがちょっとだけ右にずれていて、ダリはちょっとだけ左にずれています。

――そうなんですね!
まんきゅう そういった細かなこだわりはありつつ……それが第12話、瑛二が室内に残ったあとにダリが自我を発揮して、ミギとイマジナリーラインを超えて入れ替わります。そこからはダリが右側にいることも多いですね。そういう部分もまた最初から見直してもらえると、いろいろな発見があると思います。

【取材・文:森 樹】

「ミギとダリ」
●各サイトで全話配信中

リンク:「ミギとダリ」アニメ公式サイト

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