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オリジナルスタッフからもお墨付きのデザイン!――「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」半田修平&石山正修 キャラクターデザイン対談

©️2023 Universal Content Productions LLC


2023年11月にNetflixにて全8話が全世界一挙配信となったアニメ「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」。本作は実写映画化もされたカナダのコミックを原作に、原作者のブライアン・リー・オマリーによるオリジナルストーリーが描かれています。制作を務めるのは、日本のアニメーション制作会社・サイエンスSARUです。果たして制作陣は、日本の制作会社と海外クリエイターの共同プロジェクトをどのように進めたのか? 今回はキャラクターデザインを務める半田修平さんと石山正修さんに、デフォルメキャラならではの作画と制作秘話を伺いました。



写真左より石山正修さん、半田修平さん


――まず、お二人が本作に参加された経緯からお聞きしたいと思います。
半田 依頼が来た流れは自分も知りたいくらいです(笑)。ある日、サイエンスSARUさんから依頼が来たことが始まりなんですが、僕は一度断っているんですよね。実写版を観ていて原作の絵柄を知っていたので、デフォルメ系の絵柄であれば、もっと適任者がいるでしょうと思って。ちょうど「スプリガン」を手がけていた(半田はキャラクターデザイン・総作画監督で参加)こともあって、リアル調の画を描き続けていましたしね。でも、断った後にデフォルメ調の画をやってもいいのではないかと考え直し、再び依頼の電話があったときにはすぐにお引き受けしました。ただ、次のお仕事も決まっていたので、ラフまでで問題ないのであれば……という形でしたが。
石山 僕は元々、キャラクターデザインではなく総作画監督でというお話だったんですよ。ただそういった半田さんの事情もあり、僕は西垣(庄子)さんと分担してキャラクターデザインの清書も行なうことになりました。


半田さんが描いたキャラクターデザイン案(スコット)
©️2023 Universal Content Productions LLC


半田さんが描いたキャラクターデザインラフ(ラモーナ)
©️2023 Universal Content Productions LLC


半田さんが描いたキャラクターデザインラフ(ラモーナ表情)
©️2023 Universal Content Productions LLC


――キャラクターデザインの方向性として、どのような形を意識されましたか?
半田 日本では原作コミックスが全3巻で刊行されているんですけど、その第2巻と第3巻の間ぐらいの絵柄を狙って描こうとしました。アベル・ゴンゴラ監督は第3巻の絵柄がいいなと仰っていたんですが、「スコット・ピルグリム」といえば第2巻ぐらいの等身が印象的なので、その中間のデザインを狙った形ですね。あとは、アクションシーンがあるとのことだったので、そのシーンが映えるように考えていました。


原作者のブライアン・リー・オマリーさんから届いた年上スコットのデザイン案
©️2023 Universal Content Productions LLC


――オリジナルキャラクターの年上スコットは?
半田 年上スコットが出ることが決まった時点で、原作者のブライアン(・リー・オマリー)さんにイメージがあれば文章でもいいので資料をくださいとお伝えしたんです。やはりアニメサイドで勝手に作ってしまうよりも、原作者の意見を取り入れたほうがよりよいものになりますからね。あと、意識したことでいえば、デフォルメデザインだからこそ、アニメーターが描きやすいように明確なルールを作ったんです。


さらに年上スコットのキャラクターデザイン
©️2023 Universal Content Productions LLC


――明確なルールとは?
半田 いつも、僕がキャラクターデザインを担当したときには、何か一つ明確なルールを決めているんですよ。「スプリガン」ならば口の線を切らずに描くこと。今回は女性のキャラクターは手指に向けて細く三角や丸になっていくように描くこと、逆に男性は四角ということでした。
石山 その方向性があったので、とても描きやすかったですね。半田さんがかなり清書しやすい形で上げてくださっていたので、作業する際にとても助かりました。

――石山さんと西垣さんがキャラクターデザインの清書を担当されたとのことですが、分担はどのようにしていましたか?
石山 メインキャラは僕、元カレ軍団は西垣さんが担当でした。ただ、キャラクターデザインの作業に着手してからすぐに作画が始まってしまったので、各話に登場するサブキャラクターを西垣さんにお任せして、僕は総作画監督修正に専念する形になってしまいましたね。
半田 となると、自分が描いていないスーパーラモーナは西垣さんの担当?
石山 あれはアベル監督とそのパートの原画さんです。半田さんのデザインがなかったもので言えば、さらに年上スコットは西垣さんのデザインがあり、そこに僕が筋肉を増したんです。結果的にどちらもアベル監督が気に入ってくださって、戦う前は西垣さんのデザイン、戦闘時は僕のものになっていますね。


スーパーラモーナの設定
©️2023 Universal Content Productions LLC


スーパーラモーナの登場シーン。詳しくは本編をチェック!
©️2023 Universal Content Productions LLC


――総作画監督として石山さんが意識された箇所はどこですか?
石山 基本的には半田さんのデザインに基づいて作業されているか否かです。第1話の作業時にアベル監督から、もうちょっと美しくしてほしいという細かいオーダーがあったんですよね。それが最終話まで続き、総作画監督として時間が許す限り、半田さんの設定画と監督の指示を目指して修正していました。でも、かなり原画さんのニュアンスを残すようにもしていましたね。各話ごとに作画監督さんの個性も出ていて、面白い作品になったように思います。
半田 そういえば、第1話で初めてスコットを見つけてラモーナが振り向くシーンって、僕があのカット専用のデザインを上げていて。とても気合を入れて描いたんだけど、使われていなかった(苦笑)。
石山 アベル監督が「ちょっとやりすぎ……」とリテイクされちゃいました、すみません!
半田 白箱(完成映像)を観て、「あれぇ~!?」って思ったけど、今のほうが上手くいっているんですよね。そこは現場のスタッフの判断が一番なので。

――本作は海外クリエイターとの共同制作になりますが、キャラクターデザイン作業では海をまたぐからこそレスポンスが遅い、といったことはあったのでしょうか。
半田 いや、まったくなかったです。アベル監督がロサンゼルスにいる制作チームに会いに行ったとき、キャラクターデザインも一緒に持っていってくださったんですよ。そうしたら、ブライアンさんからも反応が良かったそうで、胸を撫で下ろしました。もしかしたら自分の知らないところで何かあったのかもしれませんけど、特に大きなオーダーはなかったです。
石山 本編の作業でも、海外チームからデザインに関する意見はなかったです。でも、服のデザインや色についての修正指示はかなりありましたね。キムのスカートとタイツ、レギンスの色とか、僕が清書した色から変わっていました。

――ちなみにお二人が気に入っているエピソードは、第何話ですか?
石山 第3話ですね。絵コンテ・演出のモコちゃんさんのやりたいことがちゃんと画面に出ていて、素晴らしかったと思います。あと、横山(彰利)さんが絵コンテ・演出を担当された第4話はとても丁寧で、僕も作画監督として勉強させていただきました。
半田 第3話はとても目立ちましたね。デザインしているときからロキシーが好きだったこともあって、純粋にお気に入りのストーリーだったということもあります。ただ、ロキシーはデザイン段階だともっとマスクを着けていたんですよ。アベル監督から「もう少し忍者要素が欲しいです」と伝えられてマスクを加えたんですが、口が見えないと芝居がしにくかったんでしょうね(笑)。


世界で人気のロキシーとラモーナの戦闘シーン。アクションが冴えわたる
©️2023 Universal Content Productions LLC


――既に「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」は世界中で配信されていますが、お二人が特に注目して観てほしいと考えているポイントはどこですか?
石山 英語版と日本語版、どちらでも観ていただきたいです。英語は画の芝居とマッチしていますし、日本語版は声優さんの熱演が楽しめるので、一粒で二度美味しいというか、また異なる印象を受けると思います。同じ画でも雰囲気が変わるはずなので、再視聴するならば別の言語でも楽しんでください!
半田 僕はキャラクターデザインしかやっていないので、ほぼ第三者みたいな感覚ですが……。作画も素晴らしいですし、音楽もカッコいいんですよね。そしてアニメーターだけじゃなく撮影さんも頑張ってくださっているので、トロントの寒い雰囲気がとても伝わってくるんです。企画は海外のクリエイターだけど、制作しているのは日本の制作会社で、それぞれの得意分野や培ってきたものが、上手くミックスした作品になっていると思います。ストーリーが異なるので、実写版を観てからも楽しめますし、アニメ版から実写版を観始めても驚きがあるのではないでしょうか。個人的には、まだアニメ版を観ていない方は衝撃に備えて、実写版から観ることをオススメします!

【文・構成:太田祥暉(TARKUS)】

(作品情報)
「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」
●Netflixにて全8話世界独占配信中

【スタッフ&キャスト】
スタッフ:監督…アベル・ゴンゴラ/キャラクターデザイン…半田修平、石山正修、西垣庄子/総作画監督…石山正修/美術監督…小谷隆之/色彩設計…橋本賢、今野成美/撮影監督…伊藤ひかり、関谷能弘/編集…柳圭介/音響監督…木村絵理子/副監督…藤倉拓也/主題歌…Anamanaguchi /音楽…Anamanaguchi 、ジョセフ・トラパニーズ/オープニング・テーマ…ネクライトーキー「bloom」/エグゼクティブプロデューサー・脚本・共同ショーランナー…ブライアン・リー・オマリー&ベンデヴィッド・グラヴィンスキー/エグゼクティブプロデューサー…マーク・プラット、ジャレッド・ルボフ、アダム・シーゲル、マイケル・バコール、エドガー・ライト、ニラ・パーク、チェ・ウニョン/アニメーションプロデューサー…崎田康平/製作…UCP, a division of Universal Studio Group/アニメーション制作…サイエンスSARU

キャスト(英語版声優):マイケル・セラ/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/サティヤ・バーバー/キーラー・カルキン/クリス・エヴァンス/アナ・ケンドリック/ブリー・ラーソン/アリソン・ピル/オーブリー・プラザ/ブランドン・ラウス/ジェイソン・シュワルツマン/ジョニー・シモンズ/マーク・ウェバー/メイ・ホイットマン/エレン・ウォン

キャスト(日本語版声優):スコット・ピルグリム…下野紘/ラモーナ・フラワーズ…ファイル―ズあい/ギデオン・グレイヴズ…関智一/マシュー・パテル…斉藤慎二/エンヴィー・アダムズ…花澤香菜/ルーカス・リー…中村悠一/トッド・イングラム…羽多野渉/ロキシー・リヒター…大空直美/ケン・カタヤナギ…武内駿輔/カイル・カタヤナギ…武内駿輔/ナイブス・チャウ…古賀葵/ウォレス・ウェルズ…福西勝也/ヤング・ニール…川崎勇人/キム・パイン…村中知/スティーヴン・スティルス…勝杏里/ジュリー・パワーズ…小林ゆう/ステイシー・ピルグリム…松岡美里/アナウンサー…マーク・大喜多

リンク:「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」

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