7月2日より放送中のTVアニメ『転生宗主の覇道譚 ~すべてを呑み込むサカナと這い上がる~』。黙による中国の人気漫画「鲲吞天下」が原作の本作は、中国の動画共有サービス「bilibili」にて配信開始から約2週間で再生数1,000万回以上を記録した本格中華ファンタジーです。自らの霊獣にのみ込まれ、非業の死を遂げたひとりの青年が転生して新たな命を授かり、再び天下一を目指していく──すべてを失った男が這い上がっていく覇道譚を美麗に描く圧倒的な映像はもちろんのこと、個性あふれる霊獣たちがたくさん登場するのも本作の魅力のひとつ。「中国発のペットアニメといえば真っ先に挙がる作品になること」を目標として挑んだ危天行監督。その思いはアニメとの出会いにまで遡ります。
――危監督はなにがきっかけでアニメ好きになったのでしょうか?
危天行 子どものころからテレビで放送されているいろいろなアニメを見るのが好きでしたが、そのなかで「ポケットモンスター」や「デジタルモンスター」で主人公たちが大好きなパートナーといっしょに戦い冒険する姿を見た瞬間にアニメが好きになりました。「カレイドスター」も特に好きな作品ですね。ヒロインが困難な場面に前向きに立ち向かう姿勢は、私に深く影響を与えました。「困難や問題に直面することは怖くない」、「勇気をもって立ち向かえば、必ずなにかを変えられる」ということを教えてくれた作品です。
――そういった作品に出会ったことが、「アニメをつくろう」と思ったきっかけになったのですね。
危天行 小さいころからずっとアニメを見ていたからこそ、かつて私たちに影響を与えてくれた先達のように、私も他の人を楽しませる作品をつくりたいと願うようになりました。その思いはいまも変わらず、誰かの心に届くものを作り、届けるために頑張っています。
――監督を務めていらっしゃるTVアニメ『転生宗主の覇道譚 ~すべてを呑み込むサカナと這い上がる~』の原作漫画「鲲吞天下」を読んだ際に感じた魅力とは?
危天行 最大の魅力は、あの王道作品ならではの雰囲気ですね。熱血、友情、成長はもちろんですが、主人公の霊獣が様々なものを喰らい続けることで進化する設定が最高です。加えて、主人公の物語や門派のメンバーの設定、それぞれのストーリーも素晴らしいと思いました。
――主人公・樊凌霄(転生後は流鋒芒)はどのように感じましたか?
危天行 樊凌霄の最も魅力的な点は、彼の生き様にあります。類まれな才能と人格的な魅力で多くの仲間を自分の門派に引き寄せながらも、彼らを守るために孤軍奮闘する。しかし、その過保護ともいえる庇護が逆に孤立を生み、敗北へと繋がってしまう。それでも転生して流鋒芒となり、すべてを失った後も自暴自棄にならず、誰かを責めたりもせず、ただ前を向いて未来を見据える……そんな彼の在り方と覚悟こそが、私が最も胸を打たれる部分です。
――「鲲吞天下」を読んでいるなかで、「アニメに向いている」と思った部分や映像として頭に浮かんだ部分はありましたか?
危天行 漫画の冒頭と世界観の設定を知った瞬間、まぶたの裏に開幕大戦の光景が広がりました。原作ではそこまで細かく描かれていない展開であっても、視聴者には最初から最高のものを届けたい。その思いで、あらゆる画法技術を駆使して開戦シーンを肉付けしていったのです。画面構成から筆圧調整まで、ビジュアルインパクトを最大化するための選択に徹底的に挑みました。
――個性的な霊獣が出てくるのも本作の見どころのひとつですね。
危天行 霊獣は現実には存在しなくとも、ペットは確かに存在します。私たちのチームには犬猫のようなペットを愛する者が多く、自分のペットを作品のキャラクターに重ね合わせています。そこから生まれる共感が霊獣の魅力を創造し、表現する過程を驚くほど自然なものにしてくれるのです。なかでも、チーム全員の琴線に触れたのが黒影猫のクロでした。子猫期の無垢な姿から“とある姿”にいたるまで、魂を吹き込む覚悟でつくっています。
――第1と第2話を見ましたが(※取材時)とてもテンポの良い作品だと感じました。
危天行 先ほどもお話ししたように、私は視聴者に「最初から最高のものを届けたい」と考えているので、第1~2話は劇場版なみのクオリティで制作しました。特に冒頭5分間は、圧倒的な映像で視聴者を作品の世界へ没入させることにこだわっています。その後の初めての戦闘シーンや転生前の記憶の走馬灯にいたるまで、映像のリズムと情感の波の表現を練り込みました。最終的に皆さまに評価いただけたことは、何よりの感激であり誇りです。ただやはり、時間とは創作において永遠に足りないものですね……。新たなアイデアが湧けば湧くほど「もっと良くしたい」という欲求が生まれ、必然的に時間を欲し続けてしまう。しかしながら、時間こそが唯一誰にも平等で、増やすことも減らすこともできない絶対的なものだということをいつも痛感させられます。
――日本語キャストの吹き替えを聞いてどう感じましたか?
危天行 非常に感動的な体験でした。なにしろ私は彼らの声で育ったようなものですから。特に龍逆天役の竹内順子さんは私にとって憧れの存在だったので、そういった声優さんが自分の手がける作品に出演してくださる……その奇跡のような瞬間に、つくり手としてこのうえない喜びを覚えました。
――原作がある作品をアニメ化する際に心がけていることは?
危天行 原作の魅力と本質を守りつつ、より多くの方に作品の世界に没入していただくため、アニメならではの「音」と「動き」の利点を最大限に活かす、これが私たちの挑戦です。ただし、原作の持つ独特の哲学やキャラクター性を損なわないように。表現のコントロールには細心の注意を払っています。
――『転生宗主の覇道譚 ~すべてを呑み込むサカナと這い上がる~』のこの先の放送も楽しみにしています。
危天行 ペットへの愛着を原動力にしている私には、ひとつの目標があります。それは『転生宗主の覇道譚 ~すべてを呑み込むサカナと這い上がる~』が「中国発のペットアニメといえば真っ先に挙がる作品」になることであって……この作品が世界のアニメファンの心に刻まれる金字塔となるよう、魂を込めて挑み続けています。
――ちなみに、日本の尊敬するクリエイターや好きなクリエイターはいますか?
危天行 多すぎてお答えするのが難しいのですが……例えば、宮﨑駿監督や尾田栄一郎先生でしょうか。そして、常にコミュニケーションをとりながら協力してくださっている日本のクリエイターの方々。彼らのプロ意識と職人魂には心から尊敬の念を抱いています。今後も協力関係をさらに深め、ともに新たな作品を結実させていくことが私たちの切なる願いです。
【取材・文:とみたまい】
■TVアニメ 『転生宗主の覇道譚 ~すべてを呑み込むサカナと這い上がる~』
●毎週水曜 25時15分~25時45分
※放送時間は変更の可能性がございます。
◆キャスト
樊凌霄(ファン・リンシャオ)・流鋒芒(リウ・フォンマン)=増田俊樹 谷霊(グー・リン)=石見舞菜香 白漣素(バイ・リエンスー)=日高里菜 白檀殊(バイ・タンシュー)=子安武人 段燁(ドワン・イエ)=逢坂良太 月彤(ユエ・トン)=渡辺明乃
程曦(チョン・シー)=小林大紀 蘇暮川(スー・ムーチュワン)=阿座上洋平 姜柔児(ジャン・ルオアル)=村上奈津実 龍逆天(リュウ・ギャクテン)=竹内順子
◆スタッフ
原作=默「鲲吞天下」 総監督=危天行 アニメーション制作=大火鳥文化
日本語吹き替え版:演出=日向泰祐 翻訳=鳥居怜子 音響制作=東北新社
日本版製作=フジテレビジョン、bilibili
主題歌:OP=CROWN HEAD「鬼灯」 ED=阿薩Aza feat. 林魂&陳鵬傑※ 「登頂 Remix」※阿薩Azaの「薩」は「草冠」+「こざとへん」+「産の生ナシ」が正しい表記です。
リンク:TVアニメ「転生宗主の覇道譚 ~すべてを呑み込むサカナと這い上がる~」公式サイト
B8station公式X(Twitter)・@b8station