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そぎ落していくことで本質に近づいていく――「淡島百景」完結記念・浅香守生監督インタビュー

©志村貴子・太田出版/淡島百景製作委員会


静かに、けれども深く心に染みわたってゆく最終回を迎えたTVシリーズ「淡島百景」。志村貴子先生原作の歌劇学校青春グラフィティを、どこまでも真摯に描ききった浅香守生監督。月刊ニュータイプ7月号で行われたロングインタビュー時に監督から明かしていただいたキャストさんにまつわるお話、特に物語終盤に関わるエピソードをここで紹介します。


©志村貴子・太田出版/淡島百景製作委員会


——どれもだと思うのですが、特に印象深い話数をあげるとすると、何話になりますか?
浅香 そうですね、もちろんどの話数にも強い思い入れがありますが、インパクトという意味では3話は印象深いです。夏子さん、強いですよね。めっちゃ強い。伊吹桂子の祖母にあたる人物ですけれど、一人でいろんな絵を見せてくれたキャラクターでした。可憐な姿、悪の親玉みたいに見える姿、死に際のしわくちゃな姿……。小若和郁那さんの芝居が本当すごくて、若くて麗しい声も、年老いたよれよれの声も同じ夏子さんとして演じてくださって、キャラクターメイキングが素晴らしかったです。「画が負けている負けた」と思いました。年輪まで含めて演じてくださったキャストのみなさんの表現のおかげで、大変面白い作品になっていると思います。


©志村貴子・太田出版/淡島百景製作委員会


——シリーズの終盤では、伊吹桂子さんの最後までも描かれました。
浅香 実は、桂子さんの死に際のモノローグは2パターン録ったんです。ひとつは実際の年齢のおばあさんとしての死にそうな状態の桂子さんの声で発せられるモノローグと謝罪。もうひとつは、生徒として淡島にいたころの桂子の声。そのどちらも深いものがあって、音響監督の明田川仁さんとも「どっちがいいだろうか」と話して、ずっと悩みました。 結局、放送された状態に落ち着いたんですけど、観て受け止めていただけたら嬉しいです。


©志村貴子・太田出版/淡島百景製作委員会


——淡島歌劇学校にまつわるオムニバスストーリー仕立てになっているので、キャストの方々も入れ替わるじゃないですか。けれども、大きな流れとしてのドラマのうねりもしっかり連なっているのが素晴らしいです。
浅香 そうなんですよね。入れ代わり立ち代わり、いろんな方が初回で来られたりしますしね。そのたびに仁さんにセリフ回しとしては声を張った芝居をしなくていいアニメだということを伝えてもらっていて。モノローグはその時の思ってる感情、ナレーションはちょっと先の未来から自分を見つめて思っていること、というニュアンスにもこだわって。キャラクターによっては、出来事の年代だけじゃなく、さらにそれをどこの年代から振り返っているかっていう設定もあるんですよ。その辺を徹底していただいているので、統一感が出ているんじゃないかと思います。


©志村貴子・太田出版/淡島百景製作委員会


——そういう意味では、第1話で群像劇の幕開けを担った新入生の田畑若菜さんが、年月を経て、大切な役割を果たしていく姿を演じきった中林新夏さんの好演も効いていますね。若菜さんのあっけらかんとした率直さに救われる瞬間もところどころにあって。
浅香 事情も何もよくわからないまま入寮した子というまっさらなところが、観ている方に同じ目線になってもらえる存在だったのだと思います。何者にもなるし、どういう見方もできる。そういう初々しさは、キャストの中林中村さん御本人にもすごく重なるところがあって。ほぼ毎回、若菜の出番がない話数にも現場に来て見学していたりして、作品に対してまっすぐ取り組んでくださるところも、かなりダブるところがあって。いい役者さんだなぁと思っていました。ちなみに、第1 話Aパート終盤の若菜と絹江がカーテン越しに話しているシーンは、お互い顔は見えないまま進むのがよいと考えて、いっそ絹枝のほうにはカメラを入ないでできないかと模索したこともありました。ただ、Bパートが絹枝のエピソードなので、橋渡しという役割もあって今の形になりました。ここにはもう一つ仕掛けがあって最終話にはこの場面が別視点から描かれるという構図になっているんです。絹枝の方にぐっと寄って、そのとき良子のことを思っていただけではない絹枝の気持ちが新しく浮かび上がってくるのです。


©志村貴子・太田出版/淡島百景製作委員会


——浅香監督は「NANA」や「ちはやふる」など少女漫画を原作とした作品も多くてかげられていますが、そういった作品に取り組む際に気をつけていることはありますか?
浅香 実はあまり構えてはいなくて、すべてはその作品にとって、何が一番いいのかというところをいつも考えています。少女文化を描くから、こうしなきゃいけない、ってことはないと思うんですね。ただ僕がやってきた作品は、原作者さんも女性のことが多かったですし、読者さんも女性が多いですし、その方々が嫌な気持ちにならないようにしたいとは思っています。特に気にしているのはキャラクターメイキングですね。単純にこれやったら面白いよねっていう案は頭の中に何層も浮かぶんですけど、でもいくら面白くても、こうしたら本質から離れちゃうね、みたいなことも混じってるわけです。なので、じゃあ、これはダメ、これもダメ……と、どちらか言うと、どんどんそぎ落としていく作業に重きを置いています。


©志村貴子・太田出版/淡島百景製作委員会


——多くの方に見守られてきた「淡島百景」、ついに最終話を迎えました。ラストシーンについて、どんな思いがありますか?
浅香 岡部絵美さんは、精いっぱいあがいたのだと思います。あがいた結果がどうなるかっていうのは、あがいた人にしかわからないし、その中にしかない。その姿をそのまま描きたいと思いました。


【取材・文/ワダヒトミ】


現在発売中のニュータイプ7月号では「淡島百景」の特集ページあり。浅香守生監督のロングインタビューを掲載しています。ぜひこちらもご一読ください。

TVアニメ
「淡島百景」
●各配信サイトで配信中

https://awajima-anime.com/

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