8月にNetflixで配信が開始され2週間限定の劇場公開も折り返しを迎えた「THE RIBBON HERO リボンヒーロー」。その終盤で、実写映像が流れることに驚いた観客も多いのではないでしょうか?
そんな実写パートのほか、AパートとDパートの演出を務めた演出家・土門健一さんにインタビュー。実写パートへの意識や、五十嵐祐貴監督への想いを伺いました。
――本作において本編の一部パートの演出のほか、実写パートも担当されている土門さんですが、もともと実写映像を撮影された経験があったのでしょうか。
土門 高校時代から映画を自主制作していましたね。その後も日本大学芸術学部映画学科に通っていたので、経験はありました。ただ、今回は実写映画があるから本作に呼ばれた、というわけではなくて。監督の五十嵐(祐貴)さんが後半のパートをまとめることに苦労されていると伺い、いち演出として参加することになったのが始まりだったんです。五十嵐さんと前半のパートからディスカッションを重ねて、パインがこの瞬間どんな気持ちなのだろうかとか、採掘場でどういうシーンを描くべきかなどを話していたのですが、ある日いきなり実写パートを入れるというアイデアが飛び出してきたんです。そこで経験のある僕が実写パートを担当することになりました。
――そんな実写パートを含めて、土門さんは「THE RIBBON HERO リボンヒーロー」にどのような方向性で携わろうと考えられましたか?
土門 まず、本作は五十嵐さんの初長編映画監督作品です。なので、第一に五十嵐さんがやりたいものを汲み取るように意識しました。そして、手塚(治虫)先生をリスペクトした演出にすることです。手塚先生はもちろんマンガ家として多大な功績を遺されていますが、アニメーション作家としても素晴らしい作品を手がけられています。大学時代、僕は片渕(須直)監督のゼミに在籍しており、当時片渕先生から「作品を作るならば、関連したテーマについて徹底的に調べるべき」と教わっていたこともあり、本作への参加が決定してから改めて手塚先生の作品や関連するドキュメンタリーなども見返したんです。
――そこから、現在のような手塚先生のルーツなどを写した構成が思いついたのですね。
土門 そうですね。手塚先生が歩んできた歴史を辿りながら、宝塚という街が積み上げてきたもの、想いを捉えたフィルムにできればと考えていました。
――構成に対しては、五十嵐監督からどのようなオーダーがあったのでしょうか。
土門 宝塚の街の全景や阪急電車は入れたほうがいい、といった内容に関する具体的なオーダーをいただいていました。ただ、レイアウトと構成については一任されていましたし、実は8ミリフィルムで撮影することも自分からの発案で……。
――そうだったんですか!?
土門 最初はデジタルのシネマカメラやスマートフォンでの撮影でも問題ない、というお話だったんです。とはいえ、歴史を扱うのであれば、見た目でのわかりやすさとしても8ミリフィルムが良いのかなと。8ミリフィルムの場合、現像するまでちゃんと写っているのかわからない、その場一回限りでの質感が得られることもあり、本作には合っているのではないかと五十嵐さんに提案させていただきました。
――8ミリフィルムでの撮影にあたって意識されたことをお教えください。
土門 本来、屋外で撮影を行う場合、デイライトフィルムと呼ばれるものを使用することがセオリーなのですが、今回は屋内用のタングステンフィルムを使用しています。そうなると、画が少し青白くなって粒子感が出る。それがノスタルジックな雰囲気を醸すだろうと考え、敢えてタングステンフィルムを採用しました。本編の演出時に、サファイアの赤やパインの黄色を立たせようと意識していたこともあり、色味に関しては強烈になるよう考えていましたね。
――ちなみに、8ミリフィルムの場合、フレームレートが一般的なアニメのコマ数である24コマとは異なる18コマのものになるのではないでしょうか。
土門 仰る通り18コマのものが普及しているとは思うのですが、今回使用した8ミリフィルムカメラは、フレームレートが24コマにも変えられるものだったんです。なので、今回はアニメと変わらないフォーマットであり、上手く使うことができました。
――実際の撮影・編集はどのように行われたのでしょうか。
土門 大学時代の友人である渡辺(大士)くんにも声をかけて、自分がファインダーを覗いていない映像も撮れるようにしつつ、6ロール(24分尺)のフィルムを持って宝塚市を回りました。自分が撮影した素材だけでは、どこか独善的なフィルムになってしまう可能性があり、その怖さから別の方にも撮影をお願いしたかったんです。そこで撮影した映像をもとに、本編の編集を担当されている植松(淳一)さんとCTやロールチェックを重ね、前後のアニメ本編とシームレスに繋がるよう、仕上げていただきました。
――そうして完成した映像について、どのような手ごたえを感じられていますか?
土門 なんとも言えぬ快感がありましたね。初めて映画を制作したときのような充足感がありました。あと、一度観ただけでは分からないテンポ感になったとも思っているので、自然ともう一度観たくなる映像にもなった気がしています。
――これから改めてNetflixや劇場でご覧になる方もいらっしゃるかと思いますが、土門さんが特に推したいポイントはどこですか?
土門 自分は絵描きではなく演出家なので、完成したフィルムに対してのシーンやカットの贔屓をしてはいけないと考えているんですよ。なので、最初のカットから、エンドロールが上がるまで、スタッフの皆さんが全身全霊で作った作品を観ていただきたいです。そんな本編の中から、皆さんの好きなポイントが見つかるととても嬉しいです。一方で、一演出家としては五十嵐さんの作りたいものに寄り添うことを目指していましたが、実写パートを含めて、いくつか自分の好みがこの作品の中には滲み出ています。その案をいくつも採用してくださった五十嵐さんをはじめとしたスタッフの皆さんには感謝しかないのですが、そんなポイントも愛してくださるとありがたいです!
土門健一
●どもんけんいち/東京を拠点に活動。日本大学藝術学部映画学科を卒業後、株式会社サンジゲン、株式会社MAPPAで制作進行を経験。株式会社サンライズ(当時)第1スタジオで演出助手を経て、2022年から完全フリーランスの演出として活動して現在に至る。
※公式サイト:https://kenichi-domon.work/
【取材・文:太田祥暉】
『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』
公式サイト:https://www.theribbonhero.com/
【STAFF】
監督:五十嵐祐貴/原案:手塚治虫『リボンの騎士』より/脚本協力:香村純子/キャラクター原案:望月けい/キャラクター原案協力:米山 舞/アニメーションキャラクターデザイン:新垣一成/アートディレクター:セドリック・エロール/ネルガルデザイン:okama/美術監督:野村正信/色彩設計:渡部夏美/CGディレクター:長嶺明音/撮影監督:福田 光/編集:植松淳一/音楽:神前 暁(MONACA)/髙田龍一(MONACA)/音響監督:三好慶一郎/音響制作:東北新社/製作・配給:ツインエンジン/制作:OUTLINE
【CAST】
サファイア:サーヤ(ラランド)/パイン:小林星蘭/ベルベット:内山昂輝/ジルコ:新谷真弓/教皇:壤 晴彦/ロック:細谷佳正/ヘケート:月ノ美兎/チョロギ:手塚祐介/チック:ルンルン/タック:でびでび・でびる
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