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『新宿RUMBLE FISH』で速水奨が朗読劇界に新風を!「ちょっと外した面白さを」お笑いにも言及

歌舞伎町ならぬ“花舞伎町”で凸凹コンビがお悩み解決! 2020年1月18日・19日に開催されるオリジナル朗読劇『新宿RUMBLE FISH』で、速水奨さんがなんでも屋「ハッピー♡デリバリー」の所長・佐藤スズキ役を演じる。キャストだけでなくプロデュース・演出も手掛ける速水さんが、「期待を裏切るようなことはいたしません」と今作にかける特別な想いを語ってくれた。

——朗読をライフワークとされている速水さんですが、この作品でプロデュース&演出にトライしようと思われた理由とは?

速水:普段は、ギタリストと一緒に朗読会をしたり、小学校で子どもたちに朗読したりしています。すべての人物を僕が演じて一つの物語を完結させる、ということが朗読だと思ってやってきましたけども、今回は“朗読劇”のお話をいただいて。朗読劇の経験は多くないのですが、そのほとんどは、声優自身にディレクションを任されていたんです。声優の演技を客観的に見て物語を掘り下げていくような、総合的な演出家がいない。だから、もしこの作品に僕が関わるのであれば、演出家の立場で、僕が朗読でやっている世界に近いものを皆さんと一緒に作っていきたいと考えました。

——『新宿RUMBLE FISH』は実際の街がモデルになっているそうですね。

速水:いろんな提案があったんですが、声だけの演技で成立させられる物語と考えた時に、架空だけどもリアルに感じられる世界を、音だけで作ってみたいと思いました。

——そして、その舞台として、新宿の歌舞伎町が選ばれたと。

速水:そうですね。劇中では“花舞伎町”という設定ですが、実在する街がモデルになっています。歌舞伎町というと、夜のお店がたくさんあって、その街の中で生計を立てて喜怒哀楽を味わっている人たちがいる。その人たちが集まることで、いろんな人間模様が作られているんですよね。この作品ではそんな魅力が生かされています。

——速水さんご自身は、歌舞伎町にどんな思い出が…?

速水:以前は、かなり深い時間にお酒を飲んでからボウリングに行ったり、バッティングセンターやダーツにも行きました。遊ぶところがたくさんありますからね。新宿で飲むなら歌舞伎町という感じで、くわしくはないんですが慣れ親しんだ場所ではあります。

——そうでしたか(笑)。では登場人物の印象はいかがでしょうか? 個性豊かで気になる人物ばかりです。

速水:僕が演じる佐藤スズキは、なんでも屋「ハッピー♡デリバリー」の所長として、従業員の寅吉(CV:野津山幸宏)とともに働いているんですが、寅吉と師弟関係ではないし、スズキがどうして寅吉と組んでいるのか明かされていないんですよ。寅吉は謎が多い人物で、物語のキーマン。そこへ、花屋の芹沢(CV:新垣樽助)が依頼に来るところからドラマが展開していくんですが、その芹沢と孤児院からの親友なのがメロス。この2人が象徴的に描かれることでドラマが展開していく。彼らの関係って、70年代によく見ていたアニメを思わせるところがあって、僕にとってはノスタルジックなんですよ。

——今作では、そんなメロスと芹沢がメインになりつつ、スズキたちには今作だけでは明かされない謎があると。

速水:なんでも屋はちっとも儲かっていないし、たぶん赤字なんですけども(笑)。生活感のないスズキには何か裏がありそうですし。寅吉が問題解決していく中で何かを見出していくのかもしれないし…。その謎については僕もまだわからないんです。

——スズキ役をどのように演じたいと思われますか? 寅吉から「ダメおじさん」と呼ばれてしまう、お世辞にも働き者とは言えない人物という設定ですが(笑)。

速水:スズキは、飄々としているんだけど、年齢を重ねている分、言葉の裏に秘められた鋭い想いがあるんです。あとはやっぱり、寅吉に対する愛…愛ではないな。心配(笑)? その関係性をどう出していくのか。2人は実際、僕と野津山の関係に似ている気がしますね。「あいつは大丈夫か」といつも心配してしまう(笑)。

——(笑)。お2人はお笑いコンビ・ラッシュスタイルを組んでいらっしゃいますね。劇中では昼公演と夜公演で異なるアドリブが入るそうで、お2人ならではの掛け合いも見られそうです。

速水:多少の打ち合わせはしますが、作り込んではつまらないので、おそらく本当のアドリブになるんじゃないかと。ラッシュスタイルでもそうなんです。あるアプリゲームのサポーターを担当していて、ネットにも映像が上がっていますが、全部アドリブでボロボロ。でも、そこにSEが入るとちょっと面白かったりして…(笑)。

——ボロボロ覚悟で挑んでいる、ということでしょうか(笑)。

速水:成立させないとって考えていたら、お笑いの鮮度が落ちると思うんですよね。演技にしても、今までは論理的に考えて質を高めようとしてきましたが、それだけではダメだと最近わかってきたんです。M-1で破れて、その悔しさは何だろうと考えた時に、「人に笑ってもらえる体質ができていないんだ」と。僕がただここに座っていても笑えませんよね? それでも笑ってもらえるようにしたいんです。で、年明けには落語にも挑戦します。

——今、さまざまな笑いを追求されているところなのですね。この朗読劇でもコミカルなシーンが登場します。

速水:キャラクター同士の軽妙なやりとりがありますが、演じる人のリズムを大切に、その人自身の素の顔が出るような、ちょっと外した面白さも入れていきたいと思っています。みんなプロだから、おそらくピタッとキャラクターを合わせてくると思いますが、むしろ、それを壊したいと思っているくらいで。

——キャストの皆さんにとっても、この朗読劇が新たなチャレンジに。

速水:僕が演出するからには、それを期待している方もいると思うので、ちゃんと一緒にディスカッションしながらいいものを作っていきたいです。たとえば「ホスト」や「お花屋さん」をそれぞれ演じたことはあるかもしれませんが、この作品では、それぞれに大きなテーマを持ったメロスが「ホスト」であり、芹沢が「お花屋さん」であるわけで。その必然性を感じ取りながら、ワンパターンではなく初めて取り組む役として演じてもらうことで、みんなが新しい演者としての顔を持てるようになれたらいいのかなと。コミカルなシーンもありますが、全体にシリアスなドラマがしっかりと流れていますので、お客様にもそのあたりを楽しんでいただきたいです。

——熱い朗読劇になりそうですね。いつもの朗読で実施されている「生演奏」も取り入れられるそうで。

速水: ギタリストと2人でセッションする感じを、今回も生かしたいなと思いましてギターとキーボードの生演奏になります。逃走シーンでのキャラクターたちの息遣いなど、楽器でも表現することで、よりライブ感を感じてもらえるかと思います。

——作品から派生した質問を1つお願いしたいのですが…。もしなんでも屋のスズキと寅吉に依頼するとしたら、どんなお悩みでしょうか?

速水:2人に依頼したら余計にややこしくなりそう(笑)。まあでも、僕は家事全般を自分でやりますし、足りてないことって特にないんですよ(笑)。あえてお願いするなら、ベランダ側の窓拭き。これから寒いし、ちょっと危険なところもあるんでね。2人がしっかり拭いてくれたら嬉しいかな(笑)。

——お答えありがとうございます(笑)。最後に、作品を楽しみにしている皆さんにメッセージを!

速水:この作品は、シンプルだけど力強く演じていこうと思っているんです。「これくらいでいいかなあ」じゃなくて、みんなで一丸となって、まっすぐに前を向いて。といっても構えることはなく、普段のあなたでいらしてくだされば、そこにドラマをきっちりとお届けできると思います。期待を裏切るようなことはいたしませんので、ぜひ体感してください。

【取材・文:吉田有希】

■朗読劇「新宿RUMBLE FISH」
日程:2020年1月18日(土)【昼の部】14:00開場 / 14:30開演
            【夜の部】17:30開場 / 18:00開演
   2020年1月19日(日)【昼の部】13:00開場 / 13:30開演
            【夜の部】16:30開場 / 17:00開演
            ※開場・開演時間は変更される場合があります
会場:東京・全電通ホール(全電通労働会館)
チケット:1DAYチケット…1万5000円 ※公演日の昼夜2公演両方をご観覧いただけます。前方の座席へご案内します。昼夜両公演とも同じ座席へのご案内となります
     一般チケット…6800円

スタッフ:原案…太宰治「走れメロス」/脚本…蒼樹靖子(スタジオモナド)/プロデュース・演出…速水奨/音楽…ウエキ弦太/デザイン…円と球/キャラクターデザイン…風李たゆ/制作…アズプロジェクト/キャスティング協力…Rush Style/協賛…ローソンチケット/主催・企画…KADOKAWA
キャスト:速水奨/野津山幸宏 他

リンク:朗読劇「新宿RUMBLE FISH」情報ページ
    公式Twitter・@RUMBLE_FISH_PR
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