2026年4月11日、12日にわたって開催された「高知アニクリ祭2026」。2022年に発足した「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」の一環で、「高知でのアニメ産業基盤の創造」をミッションに掲げています。5年目を迎えた本プロジェクトは、いまどこに向かっているのか——? 地元高知県のみならず、アニメ業界も注目する進捗状況が、4月10日に行われた「アニ魂サミット」で報告されました。Web Newtypeでは「アニ魂サミット」「高知アニクリ祭2026」の模様を3回にわたってお届けします。
2027年に複合施設「GEAR」を開業、翌年には県立高校に“まんが・アニメコース”開設
高知信用金庫が創業100周年事業として取り組む「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」は、高知県をはじめとする自治体、アニメ業界の団体・企業が参画。クリエイティブとデジタル、地域の力で、アニメと高知への貢献を目指しています。「高知アニクリ祭2026」に先駆け、関係者を集めた「アニ魂サミット」では、プロジェクト実行委員会委員長/高知信用金庫理事長の山﨑久留美氏が登壇し、5年目となる本プロジェクトの進捗状況が報告されました。
なかでも「アニメクリエイターの育成、時代に即応するアニメ開発拠点の創出」に大きな動きがあり、2028年には高知県内の高校で“まんが・アニメコース”が開設されるほか、2027年開業を目指すアニメクリエイターラボ複合施設「GEAR(ギア)」の建設も順調に進んでいるとのこと。「GEAR」は7階建て構想で、イベントスペースやシアター、企業オフィスを予定しているほか、アニメイターラボ/コワーキングスペースも併設。さらにアニメクリエイターの育成の場として、2028年3月にはクリエイターカレッジの開講を計画しています。
挨拶に立った高知県知事の濵田省司氏、合同会社ENJYU代表社員/KADOKAWAアニメ・声優アカデミー名誉アカデミー長の井上伸一郎氏も、本プロジェクトへの大きな期待を寄せていました。井上氏は、プレゼンターを務める「高知アニメクリエイターアワード2026」にも言及。受賞作にはプロと遜色のない作品も見られたといい、クリエイターの才能を発掘するだけでなく、「GEAR」などを活用した育成・交流についても展望が語られました。
アニメ業界と地方が抱える課題への取り組み
「アニ魂サミット」では、アニメクリエイターラボ複合施設「GEAR」の活用法について、アニメ制作スタジオの代表やプロデューサー、監督らによるパネルディスカッションも行われました。「今、アニメ制作の現場は」「地方でのアニメ制作は可能か」「アニメクリエイターラボ『GEAR』をどう使うか?」という3つのテーマをもとに、地方におけるアニメ制作の可能性や人材育成について活発な意見が交わされていきます。
司会の宇田英男氏による「アニメ業界の課題として、人材育成の確保と育成がボトルネックである」との分析に、田村淳一郎氏も「やはり人材不足が最大のテーマ」と認め、「現在、各社で力を合わせて人材を育てようというフェーズだ」という現場の状況が明かされました。続けて大芝賢二氏からは「人材育成というテーマにおいて、高知県内の高校に“まんが・アニメコース”が開設されるなどの取り組みは画期的だと思う」と、大きな期待感が語られます。
渡辺歩氏からはアニメーション監督というクリエイター側の視点から、現在の現場の温度感を共有されました。また高知市の街中に建設中の「GEAR」に関しても、「アニメに興味がない人にとっての入口にもなるようなアイコンになれば」とコメントを寄せるなど、業界関係者の期待の高さがうかがえます。
東京以外に福岡にもスタジオを置く株式会社トリガーの舛本和也氏も、実体験をベースに「地方でアニメスタジオを確立するためには、スタッフのなかに受け身にならないリーダーの存在が必要だと感じる」とコメント。また「スタッフひとり1人に、アニメをつくるんだという明確な意志を持ってもらうことが大事」との提言も聞かれました。
地元で活躍する吉本大輝氏からは、クリエイターや企業にとって、高知は環境としての強みと土壌としての強みがあるとのコメントが。自身が代表を務める株式会社吉本3Dファクトリーも、アニメ制作会社・スタジオエイトカラーズに続き、本プロジェクトの理念に共鳴して高知に進出しており、説得力のある提言が行われました。
総括は井上伸一郎氏が担い、若い人が継続的に業界で育っていく環境を整えていく必要性を訴えます。さらに「地元にとどまりながらアニメクリエイターとして活躍する環境を構築するためには、地方業界内外の連携のみならず、行政の力も借りていきたい」とのメッセージも。
アニメ業界、そして高知をはじめとする地方自治体が抱える課題に対し、どのようなアプローチが可能なのか? そんな難問に立ち向かう「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」の今後に、ますます大きな期待と注目が集まっています。
【取材・文:藤谷燈子】
●パネリスト(※順不同)
宇田英男氏(株式会社スタジオエイトカラーズ 代表取締役)
舛本和也氏(株式会社トリガー 常務取締役)
井上伸一郎氏(合同会社ENJYU代表社員/KADOKAWAアニメ・声優アカデミー名誉アカデミー長)
近藤真司氏(一般社団法人日本動画協会 専務理事)
吉本大輝氏(株式会社吉本3Dファクトリー 代表取締役)
田村淳一郎氏(株式会社KADOKAWA スタジオ事業局 スタジオ制作Division General Manager)
大芝賢二氏(株式会社スタジオKAI 代表取締役)
渡辺歩氏(アニメーション監督)