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「盾の勇者の成り上がり」2Dアーティスト・hydekick インタビュー「尚文のオタク性や時代性に合わせた、現代的なUIを意識」

2019年06月21日 18:30配信
「盾の勇者の成り上がり」2Dアーティスト・hydekick インタビュー「尚文のオタク性や時代性に合わせた、現代的なUIを意識」

「盾の勇者の成り上がり」のステータス表示カット

(C)アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

現在、好評放送中のTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。

第16回は、本作のビジュアルデザインを一手に担う2Dアーティスト・hydekickさんが登場。本編のステータス画面や2Dワークスのほか、Blu-ray BOXのパッケージデザインなど多岐にわたるお仕事についてうかがいました。

――hydekickさんは、「2Dアーティスト」という役職でクレジットされていますが、主にどういった作業をされているのでしょうか。

hydekick この役職名はクレジットを整理しているキネマシトラスさんの方がつけてくださったものです。アニメ作品には、看板の張り込み画像やアイテムのラベルなどを作る「2Dワークス」という役職と、モニターのUI(ユーザーインターフェイス)を作る「モニターワークス」という役職があります。今回はそのどちらも担当させてもらっていて、かつステータス画面やスキルツリーなどがストーリーにも深く関わってくるので、この役職名になったのかなと思います。

――もともとはグラフィックデザインのお仕事をされているんですよね。

Hydekick  はい。ウェブデザインやポスターなどのグラフィックデザインの仕事が主ですね。その流れで「盾の勇者」では公式HP、キービジュアル、Blu-ray BOX、サントラなどのグラフィックデザインもやらせていただいています。

――今回はどういった経緯で参加されることになったのでしょうか。

hydekick 最初は、PV制作と海外版のタイトルロゴ制作でお声がけをいただきました。その前に、キネマシトラスさんが制作した「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の2Dワークスやグラフィックを担当されているデザイナーさんと知り合い、WEBサイトの制作を依頼されたんです。

その方と一緒にキネマシトラスさんにうかがってアニメーションプロデューサーの小笠原(宗紀)さんにご挨拶したところ、次に「盾の勇者」という作品が控えているというお話をいただいて。それで「盾の勇者」のPVやロゴの制作を依頼され、せっかくだったらということで本編にも関わせていただいたという流れですね。

――最初はPVのお仕事だったんですね。

hydekick 動画編集をしている知り合いの手伝いで、ビジュアルに関するディレクションやテロップ制作の仕事もしているので、それでお話をいただいた感じですね。

――最初に作られたPVというのは、特報PVですか?

hydekick そうです。アニメの仕事は初めてだったので、勝手があまりわからなかったのですが、たとえば勇者のキメのカットで画面全体が赤くなるという演出をご提案したら、思った以上にいい反応をいただけて。見た目を重視した作り方でいいんだなと方向性が定まった感はありましたね。

――冒頭でおっしゃっていた2Dワークス的なお仕事というのは、看板の張り込みなどのほかにどういったものがあるのでしょうか。

hydekick たとえば、第1話に登場した四聖武器書の表紙やマインが第5話で出したメルロマルクの書状、尚文が使っていた行商用の通行手形、あとは紋章や魔法陣などですね。プロップ(小物)そのもののデザインはプロップデザインの方が担当されているのですが、そこに張り込む素材や文字のレイアウトはこちらで作り、アニメのテイストに馴染ませて、その素材を3Dではめ込んでもらっています。

――何か参考にしたものなどはあったのでしょうか?

hydekick 最初にコミック版を読ませていただいたのですが、世界設定はもちろん小物や装飾も作り込まれていて、クオリティが高いなと思ったんです。たとえば、メルロマルクで使われている象形文字風のフォントがありますよね? それがどのくらいの密度で書かれ、どんな装飾がされているのか、どの時代のどの地域のデザインに近いのか、など緻密に練られていたので、とても参考になりました。

――モニターワークスとしてのお仕事は、ステータス画面やスキルツリーが主になるかと思いますが、具体的にどういった作業をされるのでしょうか。

hydekick UIの全体的なデザインとそのパーツやアイコンといった、画面のベースになる部分を設計しています。流れとしては、最初にUIデザインを監修されている和田(慎平)さんから画面の方向性と入れたい情報が書かれた構成案をいただいて、WEBデザイン的な感覚で情報に優先順位をつけ、どこにどの情報を格納していくかを精査していきます。そこにゲーム的なUIを参考したデザインをミックスするという感じですね。

実際にステータス画面やスキルツリーを動かすのは、モーショングラフィックスの上村(秀勝)さんになります。

――情報の格納というところについて、詳しく教えていただけますか。

hydekick 構成案にはひとつの画面の中に入れてほしい要素がいくつも書かれているのですが、ひとつの画面に全部入れてしまうと複雑になってしまうんです。それに、あくまでも映像なので、メニュー画面でも時間の流れといいますか、動きがほしいなと思って。たとえばWEBでいうところのメニュー画面を押したらメニュー内容が展開してそこから各コンテンツにとんでいくように、ステータス画面も要素を選択して別の画面に展開するような構成にしています。だいたい、ひとつの画面としていただいた要素が三画面分ぐらいになりますね。

――ステータス画面やスキル画面のUIは何か参考にされたのでしょうか。

hydekick 実際のゲームで使われている画面のように設計したいと考えていたので、制作に入った2年前からUIが秀逸なゲームタイトルは常にチェックし参考にしていました。ビジュアルとしてのデザインもそうですが、今お話した情報の処理や格納の仕方なども参考にしています。

――UIがとてもスタイリッシュだと感じましたが、ビジュアル的なところではどんなことにこだわったのでしょうか。

hydekick 最初に出たアイデアは、モニターの中に小さなウィンドウがいくつもあるというイメージでした。よくロボットアニメなどで採用されるUIですね。これは画面の情報密度があがるという利点があります。また、「盾の勇者」のUIは主観映像に重なるのですが、ベタ(モニターの背景画面)を敷いてその上にウィンドウをのせられるので、背景、風景がどんな状況でも視認しやすくなるというメリットもあります。

ただ、個人的にはもう少し新しいことがやりたいと思って。そこで今のゲームで主流となっている、背景を映した画面にそのままUIが出てくるような、あるいはぼかされた背景の上に文字が乗るようなUIを提案させていただきました。

――それはどうしてでしょうか?

hydekick 尚文の年齢やオタク性、時代性と照らし合わせると、こちらのほうが合っていると思ったからですね。それに、ひとつひとつをウィンドウにしてしまうと、いちいちブラウザを開いたり閉じたりするような感じになり、ちょっとレトロなテイストになってしまうんです。それを避ける方法もあるのですが、それよりも最初から画面全体をキャンバスにして情報をそのまま置いていったほうがいいと思い、この形になりました。

――とても見やすいUIでした。

hydekick 最初は、視認性は大丈夫かという意見もあったので、いくつかルールを決めたんです。もともと尚文の視界に表示されるという設定なので、ピントの違いを出すために背景をぼかしたり、眼球の膜をフラクタルノイズで表現してみたり。その上に文字を乗せることで視認性を確保しました。

阿保(孝雄)監督がこちらに大部分を委ねてくださったのも大きかったです。いくつか案が出たときは、基本的にはカッコいいほうを優先させてくれました。

――ところで、作品全体の印象についてはいかがでしたか?

hydekick 壮大な世界を描いているけれど、現実的な部分をクローズアップしているところに惹かれました。戦いが中心のファンタジーやSFって、モブキャラクターがオブジェクトとして消費されるイメージがありますが、そうではなく尚文の活躍を描きながら選ばれし者ではない人たちの生活が描かれているんです。

リユート村の人を避難させたり、行商をしたり……それはそれで勇者の役割のひとつかもしれませんが、RPGでいえばサブクエストを消化しているようなものですよね。でも、それによってメルロマルクで暮らしている人たちの生活が見えてくるので、リアリティを持って見ることができました。

――最後に「盾の勇者」ファンへ一言お願いします。

hydekick 2クール目が始まるくらいには、自分の担当する本編の作業は終わっていたので今は皆さんと同じように一視聴者として楽しんでいます。本編以外のところでは、Blu-ray BOXのパッケージデザインにも関わっていますので、続々とリリースされるBlu-ray BOXを手にとっていただけたら嬉しいです。

【取材・文:岩倉大輔】

■TVアニメ「盾の勇者の成り上がり」

放送  :AT-X…毎週水曜22:00〜

     TOKYO MX…毎週水曜25:05〜

     テレビ愛知…毎週水曜26:35〜

     KBS京都…毎週水曜25:05〜

     サンテレビ…毎週水曜25:30〜

     TVQ九州放送 …毎週水曜26:35〜

     BS11…毎週水曜25:30〜

配信  :ひかりTV、dTVチャンネル 【ひかりTVチャンネル+】 ほか

スタッフ:原作…アネコユサギ(MFブックス『盾の勇者の成り上がり』/KADOKAWA刊)/原作イラスト…弥南せいら/監督…阿保孝雄/シリーズ構成…小柳啓伍/キャラクターデザイン・総作画監督…諏訪真弘/音響制作…グロービジョン/音響監督…郷文裕貴(グルーヴ)/音楽…Kevin Penkin/アニメーション制作…キネマシトラス

キャスト:岩谷尚文…石川界人/ラフタリア…瀬戸麻沙美/フィーロ…日高里菜/天木 錬…松岡禎丞/北村元康…高橋 信/川澄 樹…山谷祥生/メルティ…内田真礼

リンク:アニメ「盾の勇者の成り上がり」公式サイト

    公式Twitter・@shieldheroanime