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2022年3月5日、2021年度に最も活躍した声優を称える第十六回声優アワードの受賞者が発表されました。本稿では、主演男優賞を受賞した小野賢章さんへのオフィシャルインタビューをお届けします。
――声優アワード主演男優賞受賞、おめでとうございます。受賞を知った際の心境は?
小野 「本当ですか?」とビックリしたのが率直な感想ですが、たくさんの素晴らしい作品があるなかで主演男優賞に選んでいただいて、とても光栄に感じています。
――2021年6月に公開された映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」ではハサウェイ・ノア役として主演されました。歴史ある作品を背負い、かなりのプレッシャーだったと思います。
小野 そうですね。誰もが知る機動戦士ガンダム、しかも33年ぶりに「逆襲のシャア」の続編が公開されたということで、主演としての重圧を強く感じました。それに、ハサウェイは迷いや葛藤、罪悪感といった複雑な思いをたくさん抱えているキャラクターなので……僕自身も気持ちがぐちゃぐちゃになってしまうようなところがあって、苦しみながら演じた印象が強いです。ハサウェイの複雑な感情を全部出すことは不可能なので、どうやって表現していったらいいのか、制作陣のみなさんと相談しながら作っていきました。
――制作陣からはどんなことを言われたのでしょうか?
小野 “機動戦士ガンダムの主人公”ということで、「かっこよく見せてあげたい」という思いが僕のなかにあって、それが表にも出ていたんでしょうね(苦笑)。監督から「もっと人間臭く、正直に演じていいよ」といったニュアンスのことを言っていただき、ヒイヒイ言いながら逃げたり、やるべきことがあるのにギギを意識したりする、ハサウェイの人間臭いところもきちんと演じることができたのは大きかったと思います。過去には縛られているけれど、しっかり今を生きているキャラクターになれたんじゃないかと思っています。じっくり時間をかけて役と向き合うことができたので、またひとつ僕にとって大きな財産になった作品でした。
――2021年1月から放送されたTVアニメ「2.43 清陰高校男子バレー部」は青春全開の熱い物語でしたね。
小野 「青春っていいな」と改めて思いました。高校生が部活を一生懸命やっている姿ってすごくかっこいいですし、言葉がストレートですよね。大人になると「これは別に言う必要もないかな」とかって気を使いながら言葉を選んだり、真っすぐな思いを心に留めたりすることが増えてくると思いますが、彼らの姿を見ていると「相手と意見をぶつけ合うことも大事だな」と改めて思いますし……そうやって思う自分を「ちょっと年取ったな」と思ったり(笑)。心に刺さるものがたくさんありました。
――小野さんが演じた灰島公誓は東京から福井に戻ってきた、少しクールな印象の人物でした。
小野 クールなんだけど熱いものは胸に秘めていて、とにかくバレーボール一筋というキャラクターだったので、真っすぐに演じることができました。言葉がキツいので誤解されるかもしれないけれど、彼は誰かを傷つけようとして言ってるわけじゃなくて、試合に勝ちたいがために言っているだけなんですよね。そういった心情を真っすぐに演じたら成立するキャラクターだったので、「どう演じたらいいんだろう?」と悩んだりすることはなかったです。
――ほかにも「体操ザムライ」や「バック・アロウ」といったオリジナルTVアニメなどにも出演されて、小野さんの幅広い表現力に触れた1年となりました。
小野 「体操ザムライ」のレオナルドは外国人でしゃべり方がカタコトだったり、「バック・アロウ」のビット・ナミタルはずーっとギャアギャア言っているような役だったので(笑)、改めて振り返ると……役の振り幅が結構大きかったんだなあと思います。
――そうやっていろんな役を演じるなかで、小野さんが大切にしているものとは?
小野 「違和感がない」こと……でしょうか。例えば、キャラクターが発したものに対して見ている方が「うわ、コイツむかつく!」とかって思うのはいいんですが、「ん? 何かこのキャラクターって周りから浮いてない?」と感じるのは「違和感」だと思うんです。作品からもらえる感情以外のところに引っかかりを持たせたくない。そういったものをいかに無くすことができるのかということを、いつも課題として意識しています。それぞれの作品に溶け込めるように、常に自分をフラットにして、どんな方向にも柔軟に振りきれる役者でありたいという思いが強くあります。
――今回の受賞をふまえて、これからの目標をお聞かせください。
小野 いつもそんなに大きな目標は立てないようにしているので……これからも浮かれずに、謙虚に、ひたむきに、ひとつひとつの作品に向き合っていきたいと思っています。最近は主人公だけでなく、主人公を支える役も任せていただく機会が増えてきているので、役者としての幅をどんどん広げていけたらいいなと思っています。
【撮影:田上富実子/取材・文:とみたまい】