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現在、好評放送中のTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。
第5回は、ラフタリアを演じる瀬戸麻沙美さんとフィーロを演じる日高里菜さんが登場。前編では、序盤の大きなターニングポイントである第4話までのストーリーと、ラフタリアの魅力について語ってもらいました。
――前編では序盤戦を振り返りつつ、ラフタリアのお話を中心にうかがえればと思います。まずは第1話の感想はいかがでしたか?
日高 フィーロの出番がない話数だったので、「もともとの尚文ってこんな性格だったんだ」「マイン、ひどいな!」って視聴者の皆さんと同じ目線で見ていました。
瀬戸 単純に尚文がかわいそうでしたよね。
日高 マインとほかの勇者にはびっくりしたというか、こんなにイラッとすることってなかなかないと思うくらいです(笑)。
瀬戸 尚文は異世界での冒険を楽しみにしていただけなのに、なんでこんなひどい目に遭わないといけないのって、胸が痛くなりましたね……。
日高 仕事上、いろんなアニメに関わらせていただいていますけど、ここまで周囲が敵だらけの作品というのは、なかなかないですよね。でも、タイトルに「成り上がり」とあるので、これから尚文がどう見返していくのかとても楽しみになりました。
――第1話の最後にラフタリアが登場し、第2話では尚文のパートナーとなって成長する姿が描かれました。
瀬戸 最初のラフタリアのような幼い女の子って、自分がなかなかやらない役どころなので、いざ放送を見るとちょっと照れくさかったです(笑)。でも、ご好評をいただいたというお話をスタッフの方からうかがって、ほっとしました。
日高 すごくかわいかった! 私がアフレコ現場に入ったときにはすでに成長していて、カッコよくて頼もしいお姉さんだったから、傷ついて弱っていたり、トラウマを抱えていたりするラフタリアは悲しくもあり、新鮮でもあり……。
瀬戸 確かに、第2話はラフタリアが怯えているシーンが多かったから、なんでこの子がこんなにつらい目に遭わないといけないんだろうって思っていました。
日高 でもその分、お子様ランチを食べるときに尻尾を振る姿がよりかわいく見えますよね。
瀬戸 あのシーン大好きです! ラフタリアだけじゃなくて、尚文もいいですよね。食事だけじゃなくボールも与えてくれて、尚文の心は暗く閉ざされているけれど、優しさは残っているんだなと思えたし、今後の二人の関係にも希望が持てた。
そういえば、そのお子様ランチを食べるシーンの台本のト書きに「超かわいく」って書いてあったんです。「うまいか?」って聞かれて、「うん!」って返すところ。
日高 ハードルを上げてくるスタイルだね。
瀬戸 ものすごいプレッシャーだった記憶があります……。
――外見が成長したラフタリアを演じる上で、何か意識したことはありますか?
瀬戸 成長して尚文との関係が深まっていくと、割とお節介なお母さんのような部分が出てくるんです。最初は尚文に助けられてばかりだったのが、自分のことよりも尚文のことを優先するようになって。その“オカン”っぽさは大事にしようと思いました。
――成長してからは、尚文との距離感がグッと縮まっていきますよね。
瀬戸 もちろん心の中には幼いころに受けた傷や波への不安が残っているんですけど、尚文への愛情のような忠誠心のような気持ちはどんどん強くなっていきます。それが明確にセリフとして出てくるわけではないので、会話のテンポ感、尚文との距離感を意識して、親密度、親愛度を表現できればいいなと思いました。
日高 瀬戸ちゃんってすごいんですよ。これは石川界人君もそうなんですけど、台本に書かれたものを「はい」ってそのまま演じるんじゃなくて、「これはどういう意図で言っているのでしょう」「こうしてみてもいいですか?」って、自らスタッフさんに聞いたり、提案したりするんですよね。そういう姿を見ると私もすごく刺激を受けます。
――そうなんですね。何か印象的だったスタッフとのやり取りは?
日高 尚文に対するラフタリアのリアクションですね。
瀬戸 あった! ある言葉を受けてラフタリアが「?」って反応するんですが、ラフタリアはその言葉を知っていて反応しているのか、それとも知らずに反応しているのか。どっちの「?」マークなんだろうって。
日高 そういうのって当たり前のように流してしまうことが多いんです。でも、瀬戸ちゃんがふと「これってラフタリアは知った上で反応しているんですか?」って聞いてくれて。私たちが考えていなかった回答を監督さんがしてくださったので、「聞いてよかったね」ってなったんです。
瀬戸 結果、異世界には存在しない言葉だから、ラフタリアは「ナオフミさまは何を言っているの?」というリアクションにしようって。
日高 同じ台詞でも気持ちの込め方が変わりますし、「瀬戸、さすがだ!」って思いました。
瀬戸 スタッフさんたちは数多くのキャラクターに目を配りますが、私たちが向き合うのは基本的に一人のキャラクターです。となると、やっぱりスタッフさんたちが気付けない部分もあると思うので、お互いを尊重し合った上で意見を交換していくのは作品をつくる上で大事なことなんじゃないかなと思います。
――では、序盤のクライマックスとも言える第3、4話はいかがでしたか?
瀬戸 ラフタリアが最初よりもグッと成長したのは嬉しかったんですが、4話でわかったように、実は尚文が成長に気付いていなかったというのが衝撃的でした。それだけ心を閉ざしていたんだなって。
日高 私はラフタリアの成長ぶりにびっくりしました。見た目じゃなくて、精神的にも強くなっていて。あの弱々しかった子が、しっかり者になったことが嬉しかったです。
瀬戸 でも、ちょっと反省点もあって。弱々しいラフタリアを演じたつもりだったんですけど、思ったよりも最初から芯のある感じが出ちゃったかなって。
日高 私は、すごくいいグラデーションだなと思って見ていましたよ。確かに尚文に引き取られてすぐは怯えてばかりだったけど、もともとハキハキしているし、潜在的に芯がしっかりしている子だから、むしろ自然だなって。
瀬戸 嬉しい! 確かに、お父さんの膝に抱かれて盾の勇者のお話を聞いているときも、自分の気持ちをぱっと言えていたからね。そういう部分が、“オカン”っぽさに繋がっているのかも(笑)。
――第4話の決闘はいかがでしたか?
瀬戸 いやぁ……元康がもう。
日高 うん、ダメダメすぎ!
瀬戸 マインの言うこと全部信じちゃうからね。
日高 マインが魔法使ったのくらい気付きなさい!よと。
――(笑)。よっぽど憎いんですね。
瀬戸 はっきり言っちゃいますけど……イラッとしました(笑)。錬と樹は不正があったってちゃんと認識していたのに、元康は信じ切れていなくて。
日高 子どもかと思いましたね。
瀬戸 10代半ばぐらいだったらわかるけど、元康は最年長の21歳ですからね。「お前は~」って思ってしまいました(笑)。
日高 すごく残念ですよね(笑)。本人は正義感で動いているから、誰かを貶めたくてやっているわけではないし、悪人でもないんだけど……。それゆえ、残念感が半端ない!
瀬戸 ただ、だんだん元康の残念感がクセになってくるんです。
日高 そう! かわいいと思えてくる部分が出てくる。
瀬戸 だから、アフレコ現場で(高橋 信さんが)演じる姿もかわいらしく見えてくるというか。
日高 一生懸命なところが、元康と重なるんですよ。
――瀬戸さんは、第4話の挿入歌「Falling Through Starlight」を歌われていましたね。
瀬戸 あんなに感動的なシーンで使っていただけて嬉しかったですね。ただ、割と長い時間、大きめの音で流れていたので、ちょっと照れくさくなっちゃいました。
日高 素敵だったよ~!
瀬戸 キャラクターソングというわけではないんですが、ラフタリアの想いを代弁する気持ちで歌いました。
日高 英語の歌詞をあそこまで上手に歌えるのがすごい。
瀬戸 英語の楽曲ってあまり挑戦したことがなかったんですが、とても大事なシーンで使用されるとうかがったので、できるだけこだわりたいと思ったんです。それでレコーディング前に、こちらから無理を言って練習日とリハーサル日を設けていただいて。さらに、英語を話せる方にレクチャーしていただいてから本番を迎えたんです。レコーディング日は、Skypeで楽曲を作ってくださったKevin (Penkin)さんにディレクションをいただくこともできて、万全の態勢で臨むことができました。
日高 この作品はOPテーマやEDテーマも含めて音楽がすてきなので、ぜひ音楽にも耳を傾けていただけたら嬉しいですね。
後編では第5話以降のお話とフィーロについてうかがっていきます!
【取材・文:岩倉大輔】