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木々が生い茂る森の中、ひとりぼっちの人間の少女・ソマリは、およそ1000年の時を生きるゴーレムと出会います。そして、ソマリはゴーレムを“お父さん”と呼び、心からの信頼を寄せるように。世界を旅する二人。その過程で、ソマリとゴーレムは、異形との出会い、交流をしながら、二人の“親子”の絆を深めていくのです。
さまざまな感情を揺さぶるエピソードと美しい心理描写と、緻密な絵で人気のマンガ「ソマリと森の神様」が、2020年1月9日より放送中です。それを記念して、ソマリ役の水瀬いのりさんとゴーレム役の小野大輔さんへインタビュー。後編では、お二人がキャラクターの魅力を語ります。
――小野さんが演じるゴーレムの魅力は、どんなところにあると感じますか。
小野 異形で、寡黙でなかなか掴みきれないキャラクターであるゴーレムですが、その根底にあるのは、優しさです。ソマリにはもちろん、旅の過程に出会う人たちもなるべく傷つけないようにしていますし、それが、揺らぎがない安心感につながっています。ただ、ゴーレムとして出せる表現の範囲の中で、それを演じるのは本当に難しいです。だから、周りの人たちが安心してそこに生きていられるような落ち着いたオーラを出せるように、僕自身も穏やかな気持ちでいます。
――感情表現を封じられると難しいですね。
小野 表現で優しい声を出すこと自体は難しいことではありません。ただそれは封じられているわけで。でも見る角度を変えると、今だからこそ演じられる役なのかなと思います。声優として芸歴が20年になります。その期間に培ってきた経験を活かして、気持ちをコントロールして熱を声に乗せられればいいなと思いながら、マイクの前に立っています。
――水瀬さんが演じるソマリの魅力を教えてください。
水瀬:ひたむきでまっすぐで、なにひとつ嘘がない女の子であるというのが、彼女の魅力であり、見習いたい部分です。忘れていた子どもの頃を思い出すようです。
――心を開きっぱなしなのですね。
水瀬:相手が誰であっても自分の心を開いて、駆けよって懐く。人と歩み寄ろうとする意識がある女の子。物怖じせずに、知らないことを知ることを楽しみにしているので、演じていて楽しいですし、自分の娘だったらいいなという母性も覚えてしまいます(笑)。
――そんなに心を開きっぱなしだと、演じていて疲れませんか?
水瀬:それが、そうでもないんです。どんな球を投げてもゴーレムが受け止めて、必要であれば導いてくれる。ゴーレムはまさにお父さんという存在ですね。実際の父と話していてもそうですが、一緒にいて安心できる存在がそばにいると、疲れは出にくいんだなと思います。
――印象に残るディレクションはありましたか?
水瀬:アフレコ時には、声を出す目安となる「ボールド」が映像につけられています。第1話では、ゴーレム役の小野さんに対してボールドよりも長くセリフを言っていいという指示があった一方で、ソマリ役の私がその分を早口でしゃべって、トータルで尺をあわせるようにディレクションがありました。まさにゴーレムとソマリが協力しながら作り上げるアニメとなっています。
――ゴーレムとソマリの関係性をどのようにとらえていますか。
小野 前述のように、ゴーレムは、言葉が少なく、感情の振れ幅がまったくありませんが、そういう特性によっていつも一緒にいるソマリの感情や愛らしさを引き出しているのかなと思っています。そういう意味では、ソマリのためにゴーレムがいるので、そんな存在を演じられるのは喜びですね。別の見方をすれば、ソマリがはつらつとした感情を表現するからこそ、ゴーレムの魅力が引き立つのかなと思います。演じていると、水瀬いのりさんのソマリと一緒に声をつくっていると感じます。
水瀬 紛れもない本物の親子の絆が二人の間にあると思います。人間であったり、異形のものであったりという姿形を超越した愛です。そういう愛情があるからこそ、お互いにわかりあえるし、違う部分をカバーしあえていると感じます。一緒にいると、より高めあえるのがソマリとゴーレムです。
――印象的な風景が多い作品ですが、お二人が行ってみたい街や村、シーンを教えてください。
小野 原作第17話の食堂です。アニメでもそのシーンは登場するのですが、すごく楽しかったです。異形の者たちがたくさん飲み食いをする時のガヤも演じたのですが、ディレクションが話の内容や喋り方が人間を逸脱するようにというものだったので、ここぞとばかりに演じました(笑)。普段はゴーレムで、感情を一切表に出せないので、思い切って演じましたね。ぜひガヤにも注意して聞いてください!
水瀬 あのシーンは私も楽しかったです(笑)。行ってみたいところとしては、図書館です。壁一面が本棚で、多種多様な書物がある夢のような空間でした。ソマリたちが住む土地の歴史や風土を、図鑑でずっと調べていたいです。
――アニメを楽しみにしているファンにメッセージをお願いします!
小野 原作の良さをどれくらい再現できるのかをスタッフみんなで挑戦しているわけですが、感じたのは関係者のみんながゴーレムやソマリのいる世界が好きだということ。だから、全員でアニメに再現することに全力ですし、どうすればアニメで原作の魅力をより伝えられるのかにも腐心しています。原作そのままではないのですが、それは原作の魅力をアニメへと変換するため。アニメを見ると、また原作を読みたくなるはずです。スタッフの熱量は半端なのもではありませんので、原作ファンの皆さんの期待は絶対に応えられると思います。
水瀬 原作のもつパワーや温度感を、アニメとしてお届けできるのは嬉しいことです。アニメーションならではの、音楽や声がついた世界がどうなるか、ぜひとも楽しみにしてほしいなと思います。
【取材・文:星政明】