ニュータイプ2026年1月号(2025年12月10日発売)のBOOKページにて掲載した「百槍のオラシオン」著者・蒼月海里インタビューを、WebNewtypeにて公開いたします。皆さまお楽しみください。
「自分にとって物語を書くことは呼吸と同じくらい自然なことで、生み出したキャラクターをどう動かしたら、読者の方が思いっきり楽しんでくれるのか?を考えることが好きなんです」
創作の源を明かすのは、蒼月海里。初めて小説を書いたのは中学生のときだった。
「物語に触れることが好きで、そのうちに自分でも考えるようになりました。初めは漫画を描いていたんですが、お小遣いで画材を買うのが厳しくて。あるとき、新しもの好きな父がワープロを買ってきたまま使いこなせず放置してあったのをさわったら楽しくて。文章で表現する創作のおもしろさを知り、小説を書くようになりました」
折しも当時はライトノベル全盛期。
「たくさんの剣と魔法のファンタジー小説に魅せられて、見よう見まねで書き始めて、高校では読みたいと言ってくれる同級生に自分で考えたアンケートを付けて回覧していました」
なぜ、アンケート?
「どう書いたらもっと楽しんでくれるのか、知りたかったからです。なので、反響によって物語の展開を変えたり、贔屓している(笑)キャラクターをどう活躍させるかを考えていました」
まさにサービス精神の塊!
「楽しく書いたものを受け取ってくれた方々に喜んでほしいから。でも、それは自分のためでもあるんです」
しかし、作家になることを反対され、せめてエンタメにかかわりたいと、一度はゲーム会社に就職したが、健康上の理由により退職し、大学で学んだスキルを活かせる業界に。
「その後、リーマン・ショックのあおりで無職になってしまって。再就職もうまくいかずに貯金が尽きかけ、あとは死ぬだけだとなったときに、小説家をめざすか、と思いました。実は一度、デビューしていたのですが、ご縁が続かなくて……その失敗をバネにすべく書店員になりました。どんな小説が人気なのか、どんな魅力があるのかを日々、浴びて、たどり着いたのがミステリーとホラーの世界です。なかでもエドガー・アラン・ポーとの出会いは衝撃的でした。作品の持つ気配と題材の幅広さに、好きなことを書いていいんだ!と教わりました」
新たに自身がつむいだのは浮世と常世の間にある東京都狭間区幽落町を舞台にした、心あたたまる妖怪譚。
「オカルトが好きで、不思議な存在の正体を知りたくなるんです。自分が書くキャラクターに対しても同じで、どんな性格で、どんなことを思って、どんな行動しているのか。それによってぶつかることもある。だから時々書きながら、えっ、オマエってそんなことを考えていたんだ!?とわかってしまい結末が変わることもあります」
今作はどんなふうに生まれたのか。
「ニュータイプ本誌での連載なので、アニメ的で共感しやすい現代を舞台に、自分が好きなバディもので組み立てました」
舞台は「悪魔憑き」が実在する世界。登場するのは悪魔アスタロトと親友のために彼と契約する新島翡翠。彼らは悪魔憑きを排除する「断罪機関メタノイア」、神仏を管理する「八百万連盟」といった組織とかかわり、やがて謎の薬「パダディソス」の秘密へと迫る。
「題材は『ギルガメッシュ叙事詩』です。この存在を紐解きたくなりました。同時にその存在に連なる神々にも心惹かれ……私ならどんな物語にするだろうと妄想を膨らませていきました」
語るとおり、描かれたのは異端のバディが挑む、探偵譚!? 新宿は歌舞伎町、渋谷のスクランブル交差点といった見知った街で繰り広げられる異能のバトルアクションは圧巻、のひと言。
「題材に対しては常に真摯でありたくて原典を自分なりに解釈しています。アスタロトは悪魔ですが、王であり英雄のギルガメッシュとともに豊穣の女神イシュタルとも縁があり、とある秘密を抱える翡翠ともぶつかります。これは彼らの気高さをぶつけあう戦いでもあり、関係の変化にも注目してください。わたしはオタクなので巨大感情のまま、愛するキャラクターを徹底的に掘り下げながら、今回も好きかってに書きました」
その掛け合いも実に愉快痛快。
「読者の方への贈り物で、別シリーズ『咎人の刻印』の神無と御影も登場します。2人がどうかかわっていくのかも楽しんでください。初めて読む方も連載を追っていてくださった方も改めて彼らの旅路を追ってください」
著者プロフィール
蒼月海里●あおつき・かいり/宮城県仙台市生まれ、千葉県育ち、東京都在住。日本大学理工学部卒。「幽落町おばけ駄菓子屋」シリーズをはじめ、数多の作品を次々と発表し続ける稀有な存在。最近では同人活動も開始、自身で装画も手がけ、文学フリマといった新たな発表の場へと活動の幅を広げている。
【取材・文:おーちようこ】
■「百槍のオラシオン」
著者:蒼月海里 イラスト:巖本英利
定価: 1870円 (本体1700円+税)
発売日:2025年12月24日 判型:四六判 ページ数:306 ISBN:9784041165515
カドスト https://www.kadokawa.co.jp/product/322504001134/
ニュータイプ本誌にて2024年11月〜2025年6月まで連載された物語がついに書籍化。社会となじめない自分といっしょに喫茶店をやろう、と言ってくれた親友が悪魔の餌食となってしまうーー悪魔憑きが存在する世界で、まさかの悪魔と悪魔憑きがバディとなって事件を追う。装画は著者作品『咎人の刻印』シリーズも手掛ける巖本英利。