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6月10日(土)、劇場アニメ「KING OF PRISM -PRIDE the HERO-」の上映がスタートします。
本作は2016年1月9日に上映が始まり、応援上映という特殊な上映スタイルとともに話題を集めた「KING OF PRISM by PrettyRhythm」の新作。これら2作では、2013年から2014年にかけて放送された「プリティーリズム・レインボーライブ」のその後の世界で、プリズムスタァ、およびその候補生となる人々の物語が描かれています。
この「KING OF PRISM -PRIDE the HERO-」には、すでに発表された場面写真からもわかるように「プリティーリズム・レインボーライブ」はもちろん、さらにその過去作のオマージュも多く散りばめられています。そこで今回、シリーズを通じて監督を務める菱田正和さん、長年「プリティーリズム」シリーズに関わるプロデューサーの西浩子さんに新作について話を伺うとともに、同作のエッセンスを余すことなく味わうために観ておきたい過去作の10エピソードをセレクトしました。まずは前半として「プリティーリズム・オーロラドリーム」、「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」の話題をどうぞ!
なお、本稿では以降「プリティーリズム・オーロラドリーム」を「AD」、「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」を「DMF」、「プリティーリズム・レインボーライブ」を「RL」、「KING OF PRISM」2作を合わせて「キンプリ」シリーズ、「KING OF PRISM by PrettyRhythm」を「キンプリ」、「KING OF PRISM -PRIDE the HERO-」を「新作」と記述します。
■“修羅場うちわ”そのままの大変さだった新作の制作
――素敵な作品、本当にありがとうございました。「プリティーリズム」シリーズの1ファンとして胸がいっぱいになりました。5月17日(水)に行われた新宿バルト9での完成披露試写会の2日前まで制作されていたそうですが、まず作り終えた率直な感想をお聞かせください。
菱田:2016年3月にプロットを書き始めてから1年2カ月携わってきました。当初は時間があると思い「余裕を持って作れるだろう」と思っていたけど、最後の2週間の現場の様子は地獄絵図でしたね。ちょうど、劇場で発売されている修羅場うちわ(劇中でタイガが使用する「修羅場」と書かれた巨大なうちわを模したもの)が僕の席に届いて、それを飾ったタイミングから修羅場が始まって。「これはやばい」と思い裏面の「祭」側に変えたら、ハイテンションな祭り状態になったことを覚えています。
西:私は制作に関して何か言うのもおこがましい立場なので、ただただ応援していました。
菱田:「そろそろできた?」「早く納品せーよ」って言いながらね(笑)。
西:いやいや、本当にタツノコプロさんと菱田監督に感謝するばかりです。
――菱田監督はこのシリーズについて以前「『AD』から『DMF』に移る時が一番大変だった」と仰っていました。それに比べても大変でしたか?
菱田:あの時は、制作会社やスタッフが一気に変わったりしたし、「DMF」は2作目ということで商品とのタイアップも増えたし、全体の舵取りがすごく大変でした。しかも1~2話、6話と僕が演出して、物理的にも精神的にも苦しかったです。ただ今回はそれとは別の大変さで、3Dパートも含めれば1000カットを超えるような作品になったのが一番の原因ですね。
――「キンプリ」は約450カットだったので、倍以上ですか。
菱田:そうです。その大量に増えたカットを完成させる作業が最後の2週間に固まったので、それは大変でした。ただ「キンプリ」よりも間違いなく各カットの情報量もクオリティも2倍、3倍になっていますよ。
――菱田監督や西さんは「新作」の鑑賞にあたって「過去作を観ておいたほうがいい」と各所で仰っています。そして内容を拝見すると、今回は過去作を匂わせる要素が多くありました。こういった要素を入れないという選択肢もあったと思いますが、入れようと決めた理由は?
菱田:「キンプリ」シリーズは当初から「キンプリ」と「新作」の2作構成で考えていました。そのため今回の「新作」が「プリティーリズム」としての最終作になるので、シリーズの集大成として入れられるものは全部入れたんです。もちろん何か新しい要素を作って構成するということもできたんですけど、よくわからない新設定が出るくらいなら、過去作の要素を持ってきたほうが作品として幅が出ると思って入れました。
西:そもそも「キンプリ」シリーズは「『プリティーリズム』は面白い」ということを証明するために作り始めた作品なので、私もその点についてまったく反対しませんでした。
■過去作から観るべき10エピソード(「AD」&「DMF」編)
――過去作から支えてくれたファンへのサービスだけではなく、そういった面もあると。それでは、ここからはそういったオマージュやパロディを含めて「新作」を100%楽しむために観ておきたい、過去作の10エピソードを選んで頂きます。まず、叩き台となるような10エピソードを選んでおきましたので、それをベースにおふたりで取捨選択やコメントをお願いします。まず「AD」からは48話「そなたの冬」、50話「新プリズムクイーン誕生!」、51話「Dream goes on…」の3本です。
菱田:いきなり48話(笑)。1話「スタア誕生!」じゃないんだ。これは「キンプリ」の話ですが、氷室が語るスタァの話は「AD」1話から来ているんですよ。それを改めて振り返っておくという意味で、ぜひ観ておいてほしいエピソードです。
――おっしゃるとおりですね。48話はどうでしょう? 僕は内容はもちろん、サブタイトルが「冬のソナタ」のオマージュという点もキマっていて、すごく好きです。
菱田:当時はみんな反対しましたけど、あれ以上のサブタイトルが思い浮かばなかったんです(笑)。確かに「新作」を楽しむために、48話と50話は必須ですね。51話はどんな理由で?
――エーデルローズ生の掛け声の元ネタとなる「MARs、ミュージック、レディースパーキング!」が印象的と思って入れたのですが、それ以前にも出ていましたよね。
菱田:46話「対決!あいらVSりずむ」でも純さんが言いますよね(編注:35話「MARsドリームライブ!」などでも登場)。「AD」ならその46話もそうだし、21話「嵐のサマークイーンカップ」も観てもらいたいし……でも「新作」に紐付ける話となると、1話、48話、50話でいいと思います。
――「DMF」からは24話「お宝ゲットだ! チャムの大冒険!」と30話「ハロウィンコーデはラブミックスコンチェルト」でいかがでしょう。「キンプリ」ではマスコットが登場しませんでしたが、今回はそのかわいい顔を見せてくれます。それを考えると、シリーズ屈指でマスコットキャラが活躍する24話はやはり外せないのではないでしょうか?
菱田:またコアなものを選んできましたね。24話は僕が一番好きなエピソードですよ! この話はマスコットが活躍するという意味でもそうですし、プリズムジャンプで敵を直接的に倒すおそらく初めてのエピソードなんです。プリズムショーの勝負という側面を描いたという点では「キンプリ」シリーズの萌芽とも言えますね。
西:ちょっとおかしい回ですよね(笑)
菱田:どこかのイベントで、小さい女の子から「24話が大好き」言われた時はうれしかったですね。あとは30話か。正統派でかっこいいCallingsとは別の方向性の男子プリズムショーの原点ですから、この2本で納得です。
――確か西さんは、この頃から「プリティーリズム」シリーズに参加され始めたんですよね?
西:オムレツの回(33話「恋のパクパクレストラン」)のころからです。オムレツがパカっと開いたら指輪が出てきて。「なんだこれ!」と驚いたのが忘れられません。
菱田:口から何か出しながら「美味しい~!」とか言ってね。あれは同話の絵コンテを担当したワタナベシンイチさんが昔演出されていた作品の影響ですかね(笑)。
西:あと「新作」に直接は紐付かないですが、みあが「私たちはプリズムスタァだ!」と叫ぶ50話「未来の私がいっちばーん!」。あれは観てほしいですね。
菱田:完全に「プリティーリズム」の王道ですね。それとプリズムショーの最中に缶がぶつけられる43話「立ち上がれスタァ!」とか。
西:「スタァは客に叩かれるのが基本」ですから。
――その辺や「私の情熱は一兆度だよ!」というフレーズが飛び出す44話「情熱レボリューション」など、終盤はとにかく熱い展開が続きます。
菱田:あの熱量は坪田節ですね(編注:脚本家・坪田文のこと)。それと38話「夢と神秘のメタモルフォーゼ」。あの話のプリズムジャンプと、蝶のエフェクトに注目してほしいです。「新作」の仁が登場しているシーンで下部に蝶のエフェクトがありますが、実は仁もプリズムアクトができたんですよ。一体、彼に何があってできなくなったんでしょうね。
西:本当に「DMF」は多くの人に観てほしい作品です。
(インタビュー後編に続く)
【取材・文=はるのおと】