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現在、好評放送中のTVアニメ「盾の勇者の成り上がり」。その放送を記念して、スタッフ&キャストによるリレー連載をお届けします。 第7回は、2度目の登場となる田村淳一郎プロデューサーにお話をうかがいました。後編では、尚文パーティの軌跡を振り返っていただいたほか、第10話以降の見どころについて語っていただきます。 ――これまで登場したキャラクターについてこだわってきたところや、今後注目してほしいところについてうかがえればと思います。まずは尚文についてはいかがでしょうか。 田村 尚文は勇者として波に対抗するため、商人のような行動してきました。それは彼がかなりのリアリストで、異世界で生活していく上でどれぐらいお金が必要なのか、波に向けて何を準備しなければいけないのか、ほかの勇者に比べてずっと現実を見据えているからです。自分の悪評も利用できるところは利用するような、名より実を取るタイプ。それが彼の魅力で今後も変わらない点ですね。 ――リアリストというところだと、ほかの勇者が異世界の生活をゲーム感覚でとらえているのに対して、尚文はちゃんと現実として受け入れていますよね。 田村 三勇者はゲームの延長という感覚が抜けきれていないので、たとえばドラゴンを退治しても肉が腐ることまでは考慮していないんです。当然、尚文からしたらそんなわけないだろうと文句を言いたくなりますよね。今後、尚文が現実を突きつけるとき、ほかの勇者がどんな反応をするのか楽しみにしていただきたいです。 ――ラフタリアとの関係についてはいかがでしょうか? ラフタリアは恋愛感情があるようですが、尚文は全然気にしていないですよね。 田村 ラフタリアは精神的におませな年ごろになりましたが(笑)、尚文からすれば、ただ体が大きくなっただけでまだ10歳ぐらいの女の子という認識なんです。フィーロに至っては、生まれてわずか1ヶ月程度。二人とも子どもにしか見えていないんですね。その視点は変わらないのですが、この先、尚文は“波の終わり”のそのあとを考えることになります。当然、二人についても考えなくてはならないことが出てくるので、尚文の気持ちの上では二人のことはより重要になってくるのではないでしょうか。 ――一方、ラフタリアについてはいかがでしょうか。 田村 尚文に対する恋愛感情はあるのですが、一方で尚文は自分の人生を変えてくれた恩人であり、恋愛感情以上に強い想いもあるんです。それが出てきたのが第8話でした。呪いの炎に体を焼かれても尚文を取り戻そうとする。その献身性がラフタリアの魅力ですね。 ――思春期らしさと母性の両方を備えていて、とても魅力的に見えます。 田村 今後も、「ナオフミ様、大好き」という気持ちは変わりません。なかなか表に出せない気持ちなので、恋心を隠しつつ、でも見えてしまうというところをかわいいと思っていただけたらありがいたいですね。 ――では、フィーロについてはいかがでしょうか。 田村 どんなに暗い場面でも明るくしてくれる天真爛漫な子で、しかも戦闘能力も申し分ない。キャラクターとして“強い”と感じます。生まれたばかりであり、フィロリアルという種族でもあるので、人間の感情や感覚とちょっとズレたところもあって。そこがまたかわいいらしいポイントなのかなと。 ――フィーロは人間の姿だけではなく、鳥の状態のときもかわいらしいですよね。 田村 鳥のデザインもこだわってくださって、とても表情豊かでかわいいキャラクターになりました。あとは、ぜひフィーロのアクションにも注目していただきたいですね。3Dと作画を組み合わせているのですが、全然違和感がないんです。今後も鳥の状態で派手なアクションをする場面があるので、そのカッコよさとかわいらしさの両方を見ていただけたら嬉しいです。 ――そして、第9話ではメルティと出会いました。 田村 この出会いがフィーロの精神的な成長にも繋がっていきます。二人のやりとりをぜひ“お父さん目線”で楽しく見守っていただきたいですね。 ――あともう一人、ぜひお聞きしたいなと思ったのが、マインです。実際、彼女の反響はいかがでしょうか? 田村 国内外問わず、「こいつ……!」という視聴者の怒りがすべて彼女に向けられている印象ですね。話が進んでいけばいくほど、元康はマインにいいように使われているだけなのが見えてくるのですが、その分、マインの悪役感はさらに増していきます。 ――ここから、さらにですか! 田村 ええ。今後もまったく反省しませんし、その野心もますます膨らんでいきます。見た目こそ美女ですが、とにかく恐ろしい女の子ですね。マインを演じているブリドカット(セーラ 恵美)さんがノリノリで憎々しく演じてくださっているのも、うまく作用しています。ブリドカットさんも似たようなことをブログに書かれていましたが、マインは嫌われれば嫌われるほどキャラクターとして成功したことになるんです。これまでもひどかったですが、今後もまぁひどいので、逆に安心して見ていただけるかなと(笑)。 ――おっしゃるとおり、ここまで突き抜けた悪役はなかなかいませんよね。 田村 自分の欲望のために好き勝手動いて、人を騙すことも厭わないキャラクターはいるかもしれませんが、それをずっと貫けるキャラクターとなるとあまりいないんじゃないでしょうか。どこか良心が残っていたり、実は崇高な目的があったり。そういう悪役はたくさんいますが、マインにその片鱗はまったくないですから。アニメにおける悪役の金字塔になれるポテンシャルがあると思います。 ――さて、第10話以降の展開ですが、まず第9話のラストで尚文がメルティを追い出そうとしました。メルティにとってはショックな展開だと思いますが……。 田村 尚文にとってメルロマルク王家というのは憎むべき存在でしかないので、当然、メルティもその一味だと疑っています。自分たちについてきたのも最初から陥れるためだったのか、と。一方、メルティには王家と勇者を繋げるのは自分しかいないという責任感があり、なるべく尚文ともコミュニケーションを取りたい、でもどうしたらいいかわからないという葛藤があります。一緒に行動できないと意固地になる尚文と、葛藤に苦しむメルティ。この二人の関係性がどのように変わっていくのか、二人の行動をぜひ楽しみにしていただきたいですね。 ――いよいよ物語も折り返し地点を迎えます。この先の注目ポイントについても教えていただけますか。 田村 1クール目の終わりに差し掛かって、また次の波がくるのですが、前回の波に比べて敵のレベルが急上昇します。1が2になるのではなく、1が10になるようなイメージですね。今まで戦ったことのないような敵も出現するので、それに対して勇者たちがどのように立ち向かうのか。三勇者は相変わらず尚文を信用していませんが、強い敵を前にしてそうは言っていられません。勇者同士が今まで以上に会話を交わすことになるので、そのやりとりは面白いものになるのではないかなと思います。 ――波戦ということは、戦闘シーンにも期待ができそうですね。 田村 新たな波においてぜひ注目していただきたいのは、尚文のパーティと三勇者のパーティの違いですね。尚文たちのほうが明らかによく連携できていて、「盾のパーティ、すごい」というのが映像からもわかると思います。 ――これまで培ってきたチームプレイのたまものですね。 田村 尚文たちの組織化された戦い方というのは、これまでの戦いを物語っている部分でもあるので、ちょっとした集大成感があります。今後の肝となるのは、自分たちも強くなっているけれど、それ以上に波が強力になっているということです。いつまでも苦労は続きますが、それを知恵とコンビネーションで乗り切っていくのが尚文たちの強さなので、見ていてワクワクできると思います。 【取材・文:岩倉大輔】
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