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2019年10月7日(月)より放送開始となるTVアニメ「私、能力は平均値でって言ったよね!」。現代で命を落とし、異世界へ転生する際に「能力は平均値にしてほしい」と願った結果、虫や竜などあらゆる生命の平均値――常人をはるかにしのぐ能力――を得てしまった少女・マイルが送る異世界ハンターライフを描く物語です。
そんな本作のアニメを手がけるのは、「ゆるゆり」や「干物妹!うまるちゃん」などで知られる太田雅彦監督と、シリーズ構成のあおしまたかしさんのコンビです。マイルたち4人の少女で構成されるハンターパーティー「赤き誓い」の活躍をどのように描くのかをうかがいました。
――今回のオファーを受けたときの感想をお聞かせください。
太田 これまでは現代を舞台にした、コミックが原作の作品のお話を多くいただいてきましたが、原作はノベル、舞台はファンタジーの世界と初めてづくしでしたので新鮮でした。それも“異世界転生モノ”ということで、資料を見る前は「主人公はチートな能力を持った男の子だったりするのかな?」と思ったのですが、フタを開けてみたらマイルをはじめ、メインキャラクターはみんな女の子で。それで自分に話がきたのかな、と。
あおしま このジャンルはそろそろお話をいただける頃かなと思っていましたので、「ついにきたか!」と思いました(笑)。僕はこれまでにノベル原作の作品に参加したことはありますが、太田監督同様、ファンタジー作品は経験が少なく、興味深くやらせていただいています。
――異世界召喚モノ、転生モノといったジャンルの魅力は、どのようなところにあると感じられますか?
太田 もちろん、流行っているのは知っているのですが、実はあまり詳しくなくて……(笑)。ただ、オリジナル作品をやるというわけではありませんので、FUNAさんの原作を大切にして、そこにアニメならではの魅力を加えたフィルムにできればいいのかなと思っています。
あおしま こうしたジャンルは、気軽にカタルシスを楽しめるのが魅力のひとつですよね。「小説家になろう」で連載されている作品を読んでいると、極端なことを言うとランダムにどこかの話数を選んでその話だけを読んでも楽しめたりします。そういう、気軽に楽しめるところが人気のひとつではと思っています。
太田 本作のマイル(の生前である栗原海里)もそうだけど、トラックにひかれて転生するのがお約束のひとつらしい、と初めて知ったときはビックリしました(笑)。
あおしま (笑)。でも、そういうある種テンプレート的なものができているにも関わらず、そこからさまざまな広がり方をする作品がこれだけあるのは本当にすごいと思います。
――制作に入るにあたって、構成はどのように固められましたか?
太田 原作が巻数を重ねていますので、まずはどこまでアニメ化するかを決め、その後、あおしまさんを含めたメインスタッフで構成を詰めていきました。小説の細やかな描写をフィルムですべて拾うのはさすがに現実的ではありませんので、どこをカットし、どこを1枚の絵で見せるかも苦心しましたね。コミックとノベルでは情報量が全然違うのだということを、実作業を通して実感しました。
――本作はコミカライズもされていますが、それでもコミック原作に比べると各キャラの表情やリアクションのふり幅を固めるのが大変そうな印象があります。
太田 キャラクターたちの性格をきちんと固められていれば、そこまで苦労することではないですよ。もしかしたらアニメでは、マイルはみなさんが思うより表情がコロコロと変わる子になっているかもしれません。かわいらしく、時にコミカルな子であることをより分かりやすく伝えられればよいなと。
あおしま ノベルが原作の作品を手がけるときは、エピソードの取捨選択にいつも悩みます。もしかしたら、僕が断腸の思いでカットしたところが本当に好きなファンの方もいらっしゃるかもしれません。そう考えると本当に難しいです。特にこの作品は、Web連載されていた頃からのファンの方が多いと思いますし。アニメでは「赤き誓い」4人の絆が描かれているところを中心に、ファンのみなさんに喜んでいただけるであろうシーンをいかに入れていくかを考えています。
――現代とは大きく異なるファンタジー作品は本作が初とのお話でしたが、美術設定まわりで苦心されたことなどはありますか。
太田 現代が舞台なら、ちょっとした住宅街くらいなら近所を参考にしてもいいのですが、ファンタジーだとそうはいかないんですよね。廊下を描いてもらうにしても、ファンタジー世界の学校となると、「どのような廊下がよいか」までを最初に考える必要があります。これは武器にも同じことが言えます。刀一振りだけでもさまざまなデザインが考えられますしね。
あと、ファンタジーという話題からは少し離れてしまいますが、本作は登場キャラクターも多いんですよ。キャラクターデザインの渡辺(奏)さんが「もう、盗賊のデザインはこれ以上はキツイ!」と頭を抱えていたのが印象に残っています(笑)。
――メインとなる赤き誓いの4人をどう捉えているか、どう描いていくかをお聞かせください。まずは主人公のマイルからお願いします。
太田 せっかく人並外れた能力があるのに、普通でいたがるんですよね(笑)。でも、ずっと隠しておくこともできず、生来の優しさや、ちょっと抜けているところが原因でその力を見せてしまったりします。生前は優等生だったかもしれませんが、完璧なわけではない女の子です。そういうところが愛らしいですね。時おり、現代にあったものを異世界で再現しようと執念のようなものを見せるところもありますので、そんなところはおもしろおかしく描けたらいいなと思っています。
あおしま 生前の栗原海里は高校生でしたが、マイルとしての彼女を書くときはそのことをあまり意識しないようにしています。原作を拝見していても、今の肉体年齢に引っ張られて、少し幼くなっているんじゃないかなと感じられるんですよね。マイルはあくまで「高校生だった記憶・知識を持っているだけの子供」として捉えています。それと、彼女はいわゆる“チート持ち”でもあるわけですが見てくれたみなさんに「この子なら(人並外れた力を持っていても)いいか」と納得していただけたらいいなと思いながら書いています。
――それでは、レーナについてお聞かせください。
太田 ハンター経験は一番ある子ですね。仕切り屋で、4人の中ではリーダーシップを取れるタイプだと思っています。マイルのボケへのツッコミも担当しますので、いいコンビです。おたがい貧乳という負い目を持っているところも含め……(笑)。
あおしま 実力も結構あって、重い過去を持ち、ツンデレで、ツッコミ係と属性が盛りだくさんな子です。気を付けないとついついこの子ばかりしゃべらせてしまうので、そこは気を使いました。
――メーヴィスについてはいかがでしょうか。
太田 素直で邪念がなく、「赤き誓い」で一番の常識人です。言い換えれば、一番騙されてしまいやすい子です(笑)。見た目は男装の麗人風ではありますが、どちらかというといじられキャラだと捉えています。
あおしま 見た目はかっこいいけど中身はかわいい子ですね。感情表現が一番ストレートですので、アニメでは素直でかわいいところを見てほしいです。
太田 メーヴィスは一度堰が切れるともうボロボロ泣き出すので、そんなところにも注目してみてください。
あおしま あれはきっと、演じる内村(史子)さんも楽しんでくださったのではないかと(笑)。
――それでは最後の1人、ポーリンについてお願いします。
太田 商人の娘なので、一番オトナで社会を知っており、その分冷静な視点を持てる子です。金勘定もお手の物で、この子がいてくれるから「赤き誓い」がチームとして機能できているという面はあると思います。あまり表には出さない一面があるところがおもしろいキャラクターですね。「赤き誓い」の中では、マイルだけが薄々感づいていてびびっています(笑)。
あおしま 加えて、マイルは自身の貧乳を気に病んでいるので羨む対象でもあります(笑)。そんな関係性にも注目してみてください。マイルとレーナの貧乳対決とか!
――アフレコ現場では、そんな4人を演じるキャストの皆さんの雰囲気はいかがでしたか?
太田 本作では、マイルたち「赤き誓い」の4人がいかに友情を育んで“家族”同然になっていくかが描かれるわけですが、そんな物語が進むにつれ、キャストのみなさんも段々打ち解けていかれたようで、ほほえましかったです。また、作中ではレーナが他の3人の口調をマネしながらしゃべるシーンがあるのですが、それがすごく似ていて(笑)。徳井さんはかなりしっかり観察されておられるのだなとびっくりしました(笑) 。
――10月からはメインキャスト4名によるWebラジオ「私たち、ラジオは平均値でって言ったよね!」の配信も始まります。
太田 「赤き誓い」ではレーナが仕切り役になることが多いですが、キャストのみなさんの中ではどなたが仕切り役になるのか、楽しみにしています(笑)。アフレコ現場ではいわゆる“座長”がおらず、「赤き誓い」同様、みんなで仲がよいという感じでしたので。
あおしま メーヴィスはあまり仕切ったりしないタイプですので、そういう意味では仕切るのが内村さんだったりしたらおもしろいですね!(笑)
――それでは最後にメッセージをお願いします。
太田 「赤き誓い」の4人の出会いから、友情を育んで絆を深めていく過程を、コミカルなシーンをまじえながら描ければと思います。
あおしま 原作で見られる、マイルの“懐かしの作品ネタ”も入れられるだけ入れています!
太田 「入れるスキがあったら入れてください」とお伝えしたら、脚本家にも結構楽しんでやってもらえました。僕も、絵コンテの段階でしれっと追加したりしています(笑)。