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「怪獣ヤロウ!」いよいよ封切り! 監督・八木順一郎インタビューが到着!——みんなが心のどこかに、怪獣のような存在を求めているのかも

©チーム「怪獣ヤロウ!」


「バキ童」ことぐんぴぃ(春とヒコーキ)が初主演を飾る「怪獣」×「ご当地」映画、「怪獣ヤロウ!」が1月24日(金)より岐阜県にて先行公開、全国公開も間近となりました。ぐんぴぃが演じるのは、怪獣映画が好きな地方公務員・山田。さえない公務員生活を送る彼が、ひょんなことから市を盛り上げるための特大ミッション・「ご当地映画の制作」に挑む! 本作の指揮を取った八木順一朗監督は、芸能事務所・タイタンでマネージャーとして働くかたわら、この映画の企画を練り上げ、みごとに作品を完成させました。八木監督にとって、本作は初めての怪獣映画。本稿では、本作に懸けた熱い思いを語っていただきます!


©チーム「怪獣ヤロウ!」


——八木監督はもともと怪獣映画がお好きだったそうですね。
八木 はい。4歳の時に「ゴジラvsモスラ」(1992年公開)と出会って映画が好きになり、小学校2年生の時に「ゴジラvsデストロイア」(1995年公開)で、ゴジラが死ぬシーンを見て、自分もゴジラ映画を撮れたらと思って。そのころから、映画監督への夢を見始めました。

——ご自身のベスト怪獣映画をあげるとすると……。
八木 初代「ゴジラ」(1954年公開)を別格とすると、やはり「ゴジラvsデストロイア」ですね。ゴジラのかっこよさが存分に出ていますし、物語としてのおもしろさもある。なおかつ、自分にとっては進路を決めた、思い出深い作品でもあるのでやはりベストと言われると、この一本だなあと。

——八木監督は本作「怪獣ヤロウ!」で怪獣映画デビューとなるわけですが、本作以前にも「実りゆく」(2020年)などを始め、映画をお撮りになった経験があります。これまでの作品で、怪獣映画的な要素を意識したことは?
八木 中学生から家庭用ハンディカムで映画を撮り始めて、そのころに撮った映画には怪獣を登場させたこともありました。でも本格的に映画を撮るようになってからは、怪獣映画へのあこがれが強い分、生半可なものをつくるのはイヤだ!という思いがあって。いつか、しかるべきタイミングになったら、しかるべき映画を撮ろうとずっと温めていたんです。

——それでは、本作は満を持しての怪獣映画ということになるわけですね。劇中に〝怪獣映画の伝説的監督〟という人物が登場しますが、その方のセリフに「怪獣映画は怒りだ」というものがあります。このセリフには、八木監督の怪獣映画にかける思いが込められているのでしょうか?
八木 はい、あのセリフと同じ思いを、僕もずっと心の中にもっていたんです。ゴジラが好きだった子どものころから、子どもながらに破壊衝動や反抗心みたいなものを怪獣映画に重ねていて。学校であれば先生、社会人になれば上司、上から「これはダメ、あれはダメ」と言われ続けているときに、ああ、こうしたものをいつか、怪獣が全部ぶっ壊してくれればいいのにな……とずっと思っていました。大人になってからは怪獣映画が心の安定剤のような存在となり、ずっと僕の心の中にありました。それを今回、ストレートに形にすることができたのかなと思っています。そうだ……今日はこれをもってきたんです!


©チーム「怪獣ヤロウ!」


——怪獣映画の……ノート?
八木 このノートに、いろんな怪獣映画を観たときの感想や、怪獣映画の本を読んだときに考えたことを全部メモしていたんです。「ゴジラ」シリーズや、それ以外の怪獣映画の感想もたくさん書いてありますね。このノートを書き始めたのは社会人になってからなのですが、仕事が終わったあとや休みの日に怪獣映画を見ては、このノートにメモを付けていました。今回の脚本を書くときに、このノートを一回見返して。これまで抱いていた怪獣の思いを全部、作品に詰め込みました!

——すばらしいです! 本作は、岐阜県・関市のご当地映画として企画がスタートしていたそうですね。
八木 最初は岐阜県・関市の観光課が立ち上げた町おこしプロジェクトの一環として「映像作品撮影事業補助金」というのがあったんですね。そこに僕がエントリーをしたことが、今回の映画を撮ることになったきっかけです。じつは僕がエントリーするにあたって、大学の先輩にいろいろと相談に乗ってもらっていたんですね。そのときに「〝いわゆる〟な、ぬるいご当地映画なんてつくっても意味ありますかね?」「むしろ、僕は怪獣映画をやりたいんですよ!」なんて言っていたら、先輩が「それがそのままドラマになるじゃん。いまのその気持ちをそのまま映画にすればいいんだよ」と返してくれて。ああ、たしかに、と思いました。そこから一気に舵を切って、企画書に今の構想を書き上げたんです。


©チーム「怪獣ヤロウ!」


——その企画に乗ってくれた、関市の観光課の方々もすごいですよね。
八木 よくこんな企画を通してくれましたね、って思います(笑)。最初にこの企画を提出したときから、登場人物の設定を関市の観光課の職員にすることと、怪獣映画らしい結末を迎えることは決めていて。それを快くOKと言ってくださったわけですから、観光課の方々は、エンタメの心をわかってくださっているんだなと感動しました。

——刀鍛冶、鵜飼いといった関市の伝統芸能・文化、そして関市にある地元の企業なども劇中に登場します。このあたりはご当地映画の雰囲気がありますね。
八木 劇中に登場する協賛企業は、担当者の方々に直接お願いしにいって、映画に出ていただいています。「ご当地映画で……」と説明をすると、最初はどの企業さんも「それ意味ある?」っておっしゃるんですが、「いや、じつは怪獣映画で……」と話を進めると、みんな「何それ? ちょっと話が聞きたい」って興味をもってくださって。うれしかったですね。


©チーム「怪獣ヤロウ!」


——実際に関市の街並みや文化をご覧になっていかがでしたか?
八木 映画の取材がきっかけになって、刀鍛冶が刀を打つところを初めて見ましたし、鵜飼いの鵜が鳴く声も聞きました。そのひとつひとつが、しっかり映画のエッセンスになっていきました。僕自身も出身が岐阜県で、小さいころはずっと、こんなところで怪獣映画なんて撮れるわけがない、早く東京に行きたいと思っていたのですが……そんな自分をぶん殴りたいですね(笑)。怪獣映画は、ちゃんとここで撮れるんだぞって。



——怪獣映画はいわゆる特撮と呼ばれるジャンルになります。今回、特撮の世界に挑まれて、どんな手ごたえを感じましたか。
八木 今回ミニチュアの撮影もしたのですが、自分が思い描いていた世界を、ミニチュアとして目の前で撮影できるという経験は楽しかったです。メーサー戦車(「ゴジラ」シリーズでおなじみの架空兵器)のような車両を走らせたのですが、現場でうまく走らないトラブルなんかも、ちゃんとたくさんおきて。そうした撮影の苦しみも、しっかり味わうことができましたね。特撮のプロフェッショナルの方々が、ミニチュア撮影のアドバイスをしてくださり、これぞ特撮!と感じる現場もたくさんありました。あと、地元の建築会社さんが、地元の建物の25分の1のミニチュアをつくってくださったんです。お金も時間も限られた撮影ではありましたが、本当にみんなの力で実現した作品だと思っています。

——八木さんは映画監督でありながら、芸能事務所・タイタンのマネージャーでもあり、本作の主人公でもあるぐんぴぃさんと土岡哲朗さんとのお笑いコンビ・春とヒコーキもご担当されています。そうしたマネージャー業の経験が、本作の撮影に活きるところはありましたか?
八木 そうですね、それで言うと役者さんの気持ちがすごく気になってしまうところがあるかもしれません。現場に入ると、楽屋や控室はちゃんとあるかな、としきりにチェックしてしまったり……あと、撮影の進行も気が気じゃなかったですね(笑)。

——そうしたところも、きっと本作独特の魅力につながっているのでしょうね。本作を撮り終え、公開を控えた今のお気持ちをお聞かせください。
八木 「怪獣ヤロウ!」という作品は、僕にとって想像をはるかにしのぐ作品になったなという気がしています。キャストさん、スタッフさんに恵まれて、自分が思っていたよりも何十倍もいいものになりました。怪獣映画でありながら、ポップでキャッチーで笑いどころがある、意外と今までなかった切り口のものになっているんじゃないかなと思っています。「自分のやりたいことをやろう」という普遍的な内容ですから、怪獣映画になじみがない人にも、ストレートに楽しんでもらえると思っています! あ、劇中の特撮シーンは主人公の山田一郎くんが撮ったという設定なので、ぜひ大目に見てあげてください(笑)。


©チーム「怪獣ヤロウ!」


——そして少々気が早いですが……(笑)。八木監督の怪獣映画、次回作も楽しみにしております!
八木 そうですね。ぼんやりと次の構想はあります。昔は「ゴジラ」シリーズを撮ってみたいっていう思いが強かったんですけど、最近はだいぶ変わってきて。今回の「怪獣ヤロウ」のように、〝バカ〟怪獣映画をもっと撮ってみたいなという気持ちがあるんです。「オースティン・パワーズ」のようなノリで怪獣映画を撮ってみたらどうなるだろう、と考えたりしていますね。怪獣映画についていろいろな本を読んでいると「社会が不安になると怪獣映画に注目が集まる」という話があるんです。やっぱり、みんなが心のどこかに、怪獣のような存在を求めているのかもしれないなって思うんです。映画を観てくれた人が明るい気持ちになるような、バカで楽しい怪獣映画がやれたらいいなって思っています。  

プロフィール

八木順一朗(やぎ・じゅんいちろう)
1988年生まれ、岐阜県出身。株式会社タイタンにて爆笑問題などのマネージャーを務める。映画監督としても活動。2020年に映画「実りゆく」で第63回ブルーリボン賞作品賞にノミネート

【取材・文:志田英邦】

■「怪獣ヤロウ!」
●2025年1月24日(金)より岐阜県先行公開/1月31日(金)より全国公開

スタッフ:監督&脚本…八木順一朗/製作総指揮…太田光代/製作…小野寺嗣夫、中村優子、高澤吉紀、福浦与一、松岡雄浩、磯野史訓、三上政高、飯田義典、渡辺章仁、和田絵美子/プロデューサー…和田有啓、佐藤雅彦/共同プロデューサー…田代蔦/特技監修…中川和博/脚本協力…山崎太基/撮影…柴田晃宏/照明…高木伶/録音&静穏…渡辺丈彦/美術…田中真也/特撮&小道具…武富洸斗/装飾…Frank Okay/衣装…谷村未来/ヘアメイクマネジメント…塚原ひろの/ヘアメイク…柿原由佳/VFXスーパーバイザー…太田貴寛/VFXプロデューサー…巻田勇輔/カラーグレーディング…根本恒/音響効果…廣中桃李/編集…瀧田隆一/音楽…ゲイリー芦屋/助監督…安川徳寛/キャスティング…伊藤尚哉/制作担当…長島紗知

キャスト:山田一郎…ぐんぴぃ/吉田麻衣…菅井友香/武藤…手塚とおる/古川…三戸なつめ/高羽…平山浩行/桝井…田中要次/本多英二…麿赤兒/市長…清水ミチコ

リンク:映画「怪獣ヤロウ!」公式サイト
    公式X(Twitter)・@kaiju_yaro

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