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2025年3月15日、2024年度に最も活躍した声優を讃える「第十九回 声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、新人声優賞を受賞した七海ひろきさんのオフィシャルインタビューをお届けします。
――新人声優賞を受賞されてのお気持ちをお聞かせください。
七海 思いもよらず、最初はなかなか実感が持てませんでした。ただそんな中でも最初に感じたのは、自分ひとりではいただけなかった賞だということです。声優の仕事をしていると「いろいろな方といっしょに作っているんだなと」と感じる場面が多く、監督さん、音響監督さんを始めとするスタッフの方々のおかげだと思っています。不器用な私は、めぐりえあえた作品とキャラクターひとつひとつに真剣に向き合って練習し、現場でのディレクションを受けて直して、また練習して……ということを地道に続けてきました。そんな一からコツコツと挑戦している姿を「新人」として見守り、評価してくださったことがとてもうれしかったです。ちょうど声優の活動を始めて5年目という新人の対象となる最後の年でいただけたことも、私にとっては意味があることでした。それだけの年月が自分には必要だったんです。
――2024年はどのような1年でしたか?
七海 「あなたが声を当てていいですよ」というパスポートをいただき、いろいろな作品に挑戦することができた濃い1年でした。初めて演じるような役柄や芝居を求められることが多く、それをどう表現しようか考える時間がすごく楽しかったです。
――「戦国妖狐」第二部「千魔混沌編」の主役となった千夜はご自身にとってどのようなキャラクターでしょうか?
七海 最初に感情を持たない子供として登場した千夜が、2シリーズかけて感情を得ながら大人になっていくという過程を演じさせていただきました。ひとつの作品でこんなにもいろいろな声や表情をやらせていただくのも稀だと思いますし、いっしょに成長していったという点で、私の声優人生においてかけがえのない存在になりました。あんなにセリフが多い役は初めてで、またアクションシーンもとても多く、ずっと課題だった〝自分の枠〟を超えるような芝居ができたことに感謝しています。
――「烏は主を選ばない」浜木綿、「薬屋のひとりごと」女華といった魅力的な女性役でも注目を集めました。
七海 浜木綿はとても賢い女性で、感情は抑えているもののうちには秘めた思いがあり、それをどう伝えるかというところですごく悩みました。オーディションのときから本当にやりたかった役で、自分の中で「浜木綿とはこういう人だ!」という気持ちが強かったばかりに最初は硬い芝居をしていたところがありましたが、「戦国妖狐」とアフレコが並行していて、お互いの現場のいい部分を取り入れるように演じられた結果として柔らかく表現していけたことは幸いでした。改めて声優は、〝余白〟を大事にすることが対応力にも繋がるのだと学びました。あと、実は「薬屋のひとりごと」もだいたい同じ時期に収録していたんです。自分の中で「浜木綿が懐の深い女性だとしたら、女華はよりクールさを出して……」と考えられたことは大きかったですね。女華は、たくさんしゃべらないからこそ「いい声だな」と思ってもらいたいという欲がありました(笑)。
――また一方で、俳優としても「サイボーグ009」島村ジョー役、「七色いんこ」七色いんこ役と不朽の名作の舞台化において大役を果たされた年でした。
七海 プレッシャーはありましたが、原作ファンが抱く「私のジョー」「私のいんこ」の核となる部分を大切にしたうえで、自分流に作っていくことが許された舞台でした。私が人の心を動かせるのは、〝本気〟の瞬間だけだということは身を持ってわかっています。決まり切ったイメージや段取りにがんじがらめになっているとうまくいきません。そして、最近は声優として演じるときも同じだと思います。以前は、声優活動、舞台活動、アーティスト活動を別々に考えていたのですが、すべてが繋がっているという感覚に……もしかしたら気づくのが遅いのかもしれませんが(笑)、それもこの5年かけてたどり着いたんです。舞台なら劇場のキャパシティに応じて大きく表現する、声優なら距離感や言葉の濃さを大切にする、アーティストなら演じるように歌う方が自分には向いている。「違う」と思っていたものが根底で繋がっていて、今は、そこからどういうキャラクターにしていくかということを考えるようになりました。
――これから、どのような声優を目指していきたいですか?
七海 宝塚歌劇団を卒業し、もうひとつの夢であった声優の仕事に挑戦すると決めたとき、険しい茨の道であることは覚悟していました。でも、現実は想像以上に厳しかったです。ずっとこの道を極めてこられた方たちにも失礼なのではないかと「声優・七海ひろき」と名乗るのもおこがましく感じていました。正直、向いていないと思ったし、皆さんにもそう思われていると思って声を出すのが怖かった時期もあります。でも、諦めず自分なりにいろいろなやり方を試したからこそ、お仕事がいただけるようなったんだと思うんです。今回、新人賞をいただき「この道を歩いて行っていいよ」と背中を押してもらえた喜びがあります。これから、予想を超える芝居、おもしろい芝居、皆さんがアニメを見ていて最後にクレジットを確認したくなるような印象に残る芝居が届けられる声優になりたいです。もっといろんなアニメに出たいし、いろんな役をやりたいし、欲張りですが……ゲームにたくさん出ている声優さんにもあこがれがあります(笑)。この世界で生きていきたい、本気で声優をやっていくんだという私の思いを知っていただけたらうれしいです!
【撮影:田上富実子/取材・文:キツカワトモ】
■第十九回 声優アワード 受賞者及び受賞作品
主演声優賞=岡咲美保、関俊彦
助演声優賞=木内秀信、瀬戸麻沙美、東地宏樹、日笠陽子
新人声優賞=石橋陽彩、鵜澤正太郎、七海ひろき、はやしりか、結川あさき
歌唱賞=ブレイバーン(CV:鈴村健一)
パーソナリティ賞=該当者なし
外国映画・ドラマ賞=内田真礼、ファイルーズあい
ゲーム賞=「龍が如く8」
シナジー賞=「機動戦士ガンダムSEED」シリーズ
富山敬・高橋和枝賞=保志総一朗、山崎和佳奈
キッズファミリー賞=羽多野渉
インフルエンサー賞=木村昴
MVS=中村悠一
功労賞=岡本茉利、野田圭一
特別功労賞=今回は、特別功労賞に代えて、本年度ご逝去された声優を顕彰しました
特別賞=「ルックバック」
リンク:「声優アワード」公式サイト
「声優アワード」公式X(Twitter)・@seiyuawards