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「どうして僕なんですか?」から始まった音楽制作――『シン・仮面ライダー』音楽プロデューサーインタビュー


1971年に放送された『仮面ライダー』をベースに、庵野秀明が脚本と監督を務めるかたちで制作された映画『シン・仮面ライダー』が、3月18日に公開となりました。当初より庵野監督による新作として注目が集まっていましたが、映画公開後も、特撮ファンだけでなく本作から入った新たなファンを巻き込み、映画についての話題は絶えません。
今回、そんな『シン・仮面ライダー』の音楽について、本作の音楽プロデューサーである島居理恵さんにインタビューの機会をいただきました。


『シン・仮面ライダー』楽曲収録風景。ホールを貸し切って収録された


――今回、楽曲制作をご担当された岩崎琢さんは、庵野監督からのご指名だったとのことですが。
島居理恵(以下、島居):はい。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が終わった年に庵野監督から相談をいただきました。「今回、岩崎琢さんに音楽をお願いしたいと思っている。それについてどう思うか?」というお話でした。私もTVアニメ『R.O.D』や『天元突破グレンラガン』などが非常に記憶に残っており、是非ともという気持ちで賛成しました。

――なぜ庵野監督は、岩崎さんをご指名されたのでしょうか。
島居:庵野さんからは、もともと岩崎さんはずっと気になっていた作家さんで、特に『ヨルムンガンド』の楽曲をとても気に入っていると聞きました。また今石洋之監督(元ガイナックス・現トリガー)と『天元突破グレンラガン』の制作開始当時、岩崎さんについてお話をした時もあったそうで、庵野さんは今回の『シン・仮面ライダー』が、岩崎さんとお仕事をご一緒するチャンスだ、と思われたのではないかと。その後、音響監督の山田陽さんとも話し、岩崎さんへご相談することを決めました。

――ご依頼の際、岩崎さんのご反応はいかがでしたか。
島居:開口一番は「どうして僕なんですか?」というご回答でした。ごもっともな反応でしたので、上述のような経緯をお伝えし、「まずは顔合わせを」と切り出したのを覚えています。
実はこの時点では、庵野監督作品であることのみお伝えし、作品名など詳細は伏せて話をはじめました。ただ、岩崎さんからは「ところでそれは巨大化しますか」という問いがあり、「巨大化はしません」と伝えたところ「なるほど、わかりました」とお返事がありました。
その当時、世の中では、『シン・ウルトラマン』と『シン・仮面ライダー』が両方発表されていたので、そこを踏まえてのご質問だったかと思います。

――その後、実際に岩崎さんに作曲をご依頼となったわけですが、庵野監督からのオーダーはどのようなものだったのでしょうか。
島居:庵野作品の特徴として、これまでの作品制作の流れのように、確固たるオーダーシートというものは存在しませんでした。抽象的な表現ですが、粘土をこねて、ひとつの彫刻や器のように形を作り上げるような作業だったと思います。
最初はただの素材としての土があるだけですが、土をこね続けると、こことここには必ずこういう性質の音楽が必要だ、という認識が庵野さんの中に立ち上がり、その段階で相談が来ます。ただし、その相談がそのまますべて前に進むかというとそんなことはなく、また立ち消えることもあったり、変化したり、その役割が何かと入れ替わったりします。けれど最終的には何かの姿かたちになっていく。庵野さんが「こうしたい」という要望より、作品そのものが必要とするものがどこかにあり、それを作品と対話した庵野さんが感じ取って、探っていくようなイメージだったと思います。

――そうした作業を経て、出来上がった岩崎さんの楽曲を聞いた島居さんのご印象はどのようなものだったのですか。
島居:最初に出来上がった第1曲目は、岩崎さんに制作を依頼した当時、参考になる情報が台本以外ほとんどない状況でした。ですので、台本と作品のイメージをもとに、岩崎さんに自由発想から作っていただいたデモとなります。
提案された楽曲は、なんらかのバトルに寄り添うような、ちょっとダークなものでした。意外性があり、シンプルながら、ストイックな印象をうけて、非常に男っぽく、聞いてすぐに「これは仮面ライダーという存在に合うのではないか」と感じました。
同時に非常に「邦画的」と感じ、剥き出しの荒っぽさがあったと思います。その後、その楽曲は予告映像に使われることになり、その楽曲が本編用に進捗したものがCDにも収録されています。

こうして出来上がった楽曲の数々。ぜひ劇場の音響設備で聞いてみてください。
また、現在「シン・仮面ライダー」公式サイトでは、アニメ特撮研究家・氷川竜介さんによる『シン・仮面ライダー音楽集』解説が公開中。こちらもあわせてお読みください。


『シン・仮面ライダー』より
(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会


■「シン・仮面ライダー音楽集」
発売日:発売中
アーティスト:岩崎 琢
品番:KICA-2621~2
仕様:CD2枚組 ※初回製造分:外箱付き
(商品詳細:https://www.shin-kamen-rider.jp/music.html
定価:3520円(税込)
☆キンクリ堂(https://kinkurido.jp/shop/artist/artist.aspx?artist=46383)ほか各CD販売店にて購入可能

【メーカー特典】
・ジャケット絵柄使用ステッカー
 対象店舗はこちら(https://www.shin-kamen-rider.jp/news/955/
※特典物は予告なく変更になる場合がございますので、予めご了承下さい。
※特典は無くなり次第終了となります。
※詳細は店舗へお問い合わせ下さい。

☆一部楽曲先行配信中!
現在、映画本編より一部楽曲が配信中。映画序盤から【M5】【M6】【M7】の3曲が楽しめる先行配信となっている。

リンク:『シン・仮面ライダー』公式サイト
    キンクリ堂
    シン・仮面ライダー音楽集 先行配信サイト

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