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北米のファンに作画工程を解説——Anime Expo 2023 Aniplex of America×A-1 Picturesパネルレポート


7月1日から4日にかけてアメリカ・ロサンゼルスで開催されたANIME EXPO 2023。その3日目に開催されたアニプレックスの現地法人・Aniplex of Americaと制作スタジオ・A-1 Picturesのパネルの模様を、現地よりお届けします。

まず、MCの呼び込みによって上映されたのは、アニプレックス作品を纏めたPV。歓声が挙がらない作品がないというところに、アニプレックス作品の強さが伺えます。中でも「週刊少年ジャンプ」連載作品や「かぐや様は告らせたい」シリーズの人気は凄まじいもので、キャラクターが一瞬映るだけでも大歓声が巻き起こりました。
PVの上映後には、これから配信・公開される作品についての詳細が発表。「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」はこのパネルの後に北米プレミアが行われるということもあって、今作のメインヒロインとなる梓川花楓の姿が映ると、「プレミアを観に行くぞ!」という掛け声が会場から出るほど。

「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」のPVでは、会場から剣心コールが発生。明治初期が舞台の時代劇である本作はかなりの単語が日本語そのままであるものの、海外ファンにはちゃんと内容が伝わっている様子でした。

初日に開催されたTRIGGERパネルで解禁となった「劇場版 天元突破グレンラガン」15周年プロジェクトでは、今石洋之監督と脚本を務めた中島かずきさんによる特別映像が上映。公開から15年が経ってもなお北米で人気が高いことに感謝を示しつつ、「ハイな気分になって楽しんでほしいですね」と中島さんは呼びかけました。今石監督は酔いやすい体質のようで、4D上映は酔いながらも身体を張って調整に立ち会ったことをアピール。「頑張ったので観てほしいです!」とメッセージを送りました。
「刀鍛冶の里編」が放送直後の「鬼滅の刃」からは、続編となる「柱稽古編」について改めてアナウンスがされました。また、日本で開催された朗読舞台劇「鬼滅の宴」の英語字幕上映が発表されると、会場からは拍手が!

「山田くんとLv999の恋をする」のPV上映が始まると、会場にいた女性ファンから一斉に声が挙がりました。主人公の木之下茜が山田秋斗のことを「山田~!」と連呼するシーンでは、作品を知らないファンからも笑いが漏れるほど。

放送途中で中断していた「NieR:Automata Ver1.1a」では、北米版音声でPVが上映。会場は一気に静まり返り、2Bと9Sが登場する映像を食い入るように見つめました。

筋肉×魔法ものである「マッシュル-MASHLE-」は、PV上映中笑いが絶えず、思わずMCも笑いながら作品紹介を行うほど。

初日にワールドプレミアが開催された「Fate/strange Fake -Whispers of Dawn-」は、聖杯戦争という単語が出ただけでもファンがどよめき始めました。ワールドプレミアを観た人も大勢訪れ、Fateシリーズへの関心の高さが伺えます。

そのまま続いて、A-1 Picturesの作品紹介PVが上映。「おおきく振りかぶって」に始まり、「リコリス・リコイル」や「86-エイティシックス-」といった近年の話題作までが紹介されたのち、「86」でキャラクターデザインを務めた川上哲也さんと「かぐや様は告らせたい」シリーズでアニメーションプロデューサーを務めた菊池雄一郎さん、制作進行を担当した牛尾健太さんが登壇しました。川上さんは会場の熱気に、「初めてロサンゼルスに来たのでびっくりしています」と驚きを隠せない様子でした。

A-1 Picturesパネルは、新作発表ではなくアニメ制作現場の裏側を解説する趣向。この場で初めて公開する資料もあると言い、観客の興味を引き付けました。

まず、「86」第23話のラスト――レーナがシンと向かい合いつつ涙を流すシーンの原画を投影しつつ、原画(Keyframe)について紹介がスタート。川上さんは、絵コンテではレーナが涙を流しつつ、苦しさの泣き出しそうになるのを堪えたのちに笑みを浮かべると指示があったと言い、「担当するアニメーターがキャラクターの心境を理解することが最も大事なんです」と語ります。原画から作画監督による修正を経たものの差異も公開され、より詳細になったレーナの感情変化に会場からは驚きの声が漏れました。

続いて紹介されたのは動画(In-between)。動画マンにはキャラクターのタイミングを作るが原画を含め、すべての絵をきれいに清書することも求められているといい、菊池さんは「原画の線をなぞることは、地味に大変な仕事なんです」とその過酷さを説きます。先のレーナのシーンは動画マンから上がったのちに川上さんが直接データに手を付けてさらに修正したそうで、「眉や口の形を変えて、嬉しさからくる笑みをより分かりやすく表現しました」と一カットにも手間暇が掛かっていることを力説しました。

また、北米のファンに向けて、昨今の日本アニメでは海外出身・在住のアニメーターが参加していることが少なくないこともアナウンス。菊池さんが「僕がやり取りしているなかでも凄腕の方を紹介したい」と前置きして、「かぐや様は告らせたい -ウルトラロマンティック-」第5話のエンディングアニメーションを手掛けたVercreekさんを紹介しました。
Vercreekさんから北米ファン向けにメッセージ動画が上映されると、菊池さんは「今は作業工程のデジタル化が進んでいるので、日本に来なくとも仕事ができるようになったのは大きな変化だと思っています。また、北米では志望者で独自のコミュニティが形成されていて、そこからプロになっていく人が少なくないらしいんですよね。もしかしたらこの会場からも作り手が生まれるかもしれない」と期待を露にします。

パネルの終盤には、改めて3人から挨拶が。その中で菊池さんから「実はこの三人で新作を企画しています」と明かされ、「海外アニメーターも参加しているので、発表までもうしばらくお待ちください!」とファンを煽りました。牛尾さんも「シリーズを楽しみに待っていてください!」と英語で話し、パネルは無事に終幕しました。

【取材・文/太田祥暉(TARKUS)】

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