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2025年3月15日、2024年度に最も活躍した声優を讃える「第十九回 声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、新人声優賞を受賞した結川あさきさんのオフィシャルインタビューをお届けします。
――新人声優賞受賞の第一報を聞いたときのお気持を教えてください。
結川 最初は信じられない気持ちでした。そこから時間が経つうちに、これまで演じてきたキャラクターたちのことが頭に浮かんできて。デビューから今までの軌跡を振り返ることで、やっと受賞したことを実感できました。
――審査対象期間中の1年間には、映画「トラペジウム」の東ゆう、「となりの妖怪さん」の杉本睦実、「逃げ上手の若君」の北条時行と主役を演じられましたね。
結川 作品のファンの方から、「作品を代表して声優賞を受賞してほしい」と声をかけていただくこともありました。今回、実際に受賞できたのは、そんなファンの方たちの声や、役を私に任せてくれたスタッフさんたちなど周りの方がいてくれたからこそです。自分の力だけで受賞できるわけではない賞をいただけたことを、うれしく思います。
――北条時行を演じた「逃げ上手の若君」は、初めてスタジオでのオーディションを受けた作品だそうですね。
結川 はい。オーディションの場ではありますが、仕事としてマイクの前でほかの演者さんと掛け合いをすること自体が初めてでした。とてもドキドキしたことを覚えています。最初は、「今後のために何かを得て帰ろう」という気持ちだったのですが、何度もセリフにトライさせてもらううちにすごく楽しなっていた自分がいました。時行を演じたいという気持ちから、帰りには「時行を演じるのは私だ」と不思議な自信をもつようになっていて(笑)。だからこそ、時行役に決まったときはとてもうれしかったです。
――アフレコ期間中は、楽しみながら時行を演じられたようですね。
結川 もちろん、すべてが順調というわけにはいきません。いちばん悩んだのは、時行とうキャラクターを作品全体にフィットさせることでした。その理由は、時行への思いが強すぎたことにあったと思います。彼の心情や行動の理由ばかりを重視してしまい、作品全体の見せ方やストーリーラインの動きに配慮できていなかったんです。そんな私にほかのキャストさんやスタッフの皆さんがたくさんの時間をかけて、リテイクにも付き合ってくれました。そういう意味でも、私を育ててくれた作品です。
――「トラペジウム」と「となりの妖怪さん」のアフレコはいかがでしたか。
結川 オーディションを受けたのは「逃げ上手の若君」が先ですが、アフレコは「トラペジウム」と「となりの妖怪さん」が先行していました。スタジオでのマイクワークからアフレコの順番まで、右も左もわからない状態での収録だったんです。ただオーディションで選んでもらったことだけを根拠に、自分が考える彼女たちをまっすぐぶつけるようにお芝居をしたことを覚えています。特に「トラペジウム」では、ゆうを演じているときの記憶がまったくないんです。考える行為をせずに、ゆうに全力で向き合っていたのが理由だと思います。いわゆるゾーンに入るのは声優の楽しさのひとつではあるのですが、それだけでは作品を成立させることはできません。そこから考えると、先ほど話題にあげた「逃げ上手の若君」の時行で作品全体のことを考えられるようになったのは、ひとつの成長なのかなと思います。
――時行、ゆう、睦実は異なるタイプのキャラクターですが、それぞれの個性がしっかりと伝わる演技でした。声優として、どのように役にアプローチしているのでしょうか。
結川 デビューから数年経って、方法は少しずつ変わってきたと思います。最初の頃は、自分の考える役の気持ちをそのまま表現することしかできませんでした。でも今は、キャラクターが発する大事なセリフを、いちばん素敵に響かせるにはどうすればいいのか演技の構成も考えるようにしていて。どうすれば演じているキャラクターの人生を輝かせることができるのか、論理と感情を常に組み合わせて取り組んでいます。
――そんな結川さんが声優になったきっかけを教えてください。
結川 子供の頃から好奇心が旺盛で、やりたいことはたくさんありました。そこから成長して将来の目標を決めなければならなくなったときに、自分が幸せだと思えることだけをできる仕事をしたいと考えたんです。そこで思いついたのが、アニメを通じてキャラクターや音楽にどっぷりとはまって幸せだった過去でした。それが声優を志した理由でした。
――念願叶って演じる仕事に就き、新人声優賞を受賞しました。今後、どんな声優になりたいですか。
結川 今はそのときに演じているキャラクターのことを全力で考えてしまうので、先のことはあまりイメージできていないのが正直なところです。演じてきたキャラクターは、作品が完結しても私のなかで大切な存在として輝いていて、役を積み重ねるとともにそれが増えていきます。演じる私だけでなく、作品のファンの方々にとっても、アニメのキャラクターってそういう存在だと思うんです。これからも、大切なキャラクターたちをみんなの心に増やしていけるように、声優としても人間としても成長していきたいです。
【撮影:田上富実子/取材・文:星政明】
■第十九回 声優アワード 受賞者及び受賞作品
主演声優賞=岡咲美保、関俊彦
助演声優賞=木内秀信、瀬戸麻沙美、東地宏樹、日笠陽子
新人声優賞=石橋陽彩、鵜澤正太郎、七海ひろき、はやしりか、結川あさき
歌唱賞=ブレイバーン(CV:鈴村健一)
パーソナリティ賞=該当者なし
外国映画・ドラマ賞=内田真礼、ファイルーズあい
ゲーム賞=「龍が如く8」
シナジー賞=「機動戦士ガンダムSEED」シリーズ
富山敬・高橋和枝賞=保志総一朗、山崎和佳奈
キッズファミリー賞=羽多野渉
インフルエンサー賞=木村昴
MVS=中村悠一
功労賞=岡本茉利、野田圭一
特別功労賞=今回は、特別功労賞に代えて、本年度ご逝去された声優を顕彰しました
特別賞=「ルックバック」
リンク:「声優アワード」公式サイト
「声優アワード」公式X(Twitter)・@seiyuawards